COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2023/04/26 再配達在庫管理物流業務の効率化運輸業・倉庫業(3PL事業者)

物流と運送はどう違う?それぞれの現状と課題を理解しよう

出荷・入荷検品を行う物流倉庫のスタッフ

物流の業界において使用されている専門用語は、似たようなものも多く含まれており混同されがちです。「物流」と「運送」についても、その違いを明確にしておかなければなりません。物流と運送の関係としては、物流の中で重要な役割を持っているのが運送であるといえるのです。ここでは、物流と運送の違いやその問題点、今後の見通しなどについて紹介していきます。

どう違う?「物流」と「運送」

物流とは、物的流通を略した言葉です。具体的には、物を生産した際に、生産者から消費者に生産物を引き渡すまでの一連の流れを表しています。主なものとして、輸送や配送のほかにも、保管や荷役、包装や流通加工、物流情報処理が含まれています。そのうち、保管・荷役・包装・流通加工・運送の5つについては「物流5大機能」と呼ばれているものです。会社名に「輸送」や「運送」ではなく「物流」とつけられている場合には、梱包の施設や倉庫を保有している場合が多くあります。

物流は、生産者や工場から消費者のもとへ迅速に引き渡すことが求められるもので、そのための機能として「輸送」「配送」「運送」があります。輸送とは、一次輸送とも呼ばれ、工場から物流センターまで運ぶ場合や、工場から別の工場へ物を運ぶ場合に用いられる用語です。基本的に長距離の移動を伴い、その量も多くなります。そして、配送とは二次輸送とも呼ばれ、基本的には近距離で小口の輸送を担うことになります。

配送と輸送の違いの1つとして、輸送は1カ所から1カ所などの単純な移動が多いのに比べて、配送は1つの地点から複数の場所への移動が行われることが挙げられます。配送は、物流センターに届けられた生産物を、卸問屋や小売店などのほか、個別のユーザーに直接送り届けることを指します。普段の街中でも「配送」と名のついた軽トラックは多く見られます。生産物が最終目的地に送り届けられることから、一般社会の実生活においても馴染みの深い用語といえるでしょう。

運送とは、トラックを使用して物品の輸送や配送を行うことを指します。したがって、航空機や船舶によって物品を運ぶことは運送とは呼ばれません。物品ではなく人を運ぶ際にも同じことが言えます。航空機や船舶によって物品を運んだり、物品ではなく人を運んだりする場合には、どちらも輸送と呼ばれるのです。したがって、物流のうち、トラックを使用して物品を運ぶことを指して運送と呼ぶことができます。旅客や貨物を運ぶだけでなく、産業や仕事一般を総称した言葉としては、運輸という用語も用いられます。

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物流担当者が知っておきたい物流用語30選
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運送で重要なのは「出荷作業」と「進捗管理」

輸送・配送・運送において、出荷作業とその管理は重要な役割を占めています。受注があった場合、その情報を管理することによって商品を納期通りに正しく出荷する必要があるからです。

倉庫業と運輸業を行う事業者での出荷作業では、まず出荷指示書や必要書類の作成から取りかかります。納期が近づいてきたときに、受注内容を基にして売上伝票の入力を行い、出荷指示書を作成していきます。出荷指示書は倉庫担当者に渡り、納品書や受領書とともに確認をしていきながら、倉庫担当者は出荷に向けた準備に取りかかっていくのです。

次に、倉庫担当者は、渡された出荷指示書を基にして出荷作業を行います。その際に、棚から商品を取り出す「ピッキング」業務の後、商品に不具合がないかどうかの検品を行うことも重要な仕事です。そして、納品書を添えて商品を梱包して、トラックへ商品を積み込んでいきます。この時、商品の形状や配送方法に合わせて適切な梱包材料や荷姿を選ぶことも大切な仕事の1つです。

ドライバーは商品の配送の後、出荷納品を行います。商品の納入において、引き渡しの際に納品書と納品書控え・受領書を渡して確認してもらったうえで、受領書には確認印やサインをもらいます。印鑑やサインをもらった受領書と納品書控えを持ち帰れば、納品は完了です。

その後、受領書と納品書控えを基にして、倉庫担当者は売上伝票の作成を行い、完成したら経理担当者へと渡します。この時点で売り上げが確定したといえるのです。経理担当は、倉庫担当者から受け取った売上伝票と受領書を基に、売り上げを仕分けとして記帳します。また、商品の売り上げを後日現金や銀行振り込みなどで受け取る場合には、「売掛金」として扱う必要があります。出荷にあたるまでの一連の流れはミスが許されず、重圧も感じることでしょう。そこで、クラウドシステムを活用すると、入庫管理や在庫管理、出荷管理などもでき、作業をスムーズに行うことができます。

運送の進捗管理は、集荷と入庫を経て、荷卸しや格納とその際に行われる入庫検品、出荷準備・検品、積み込みとそれに合わせて行う検品、配達という流れから配達終了に至ります。日々の入出庫や配送情報を人力で管理することは非現実的なので、物流業界ではクラウドサービスを活用して進捗管理が効率よく行われるようになっているのです。

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物流DXとは?急務となった背景とWMSの物流データ活用
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物流業界は今、運送会社の人手不足が大きな課題!

パソコンやスマートフォン、タブレットなどの普及により、直接店に行かなくてもネットショッピング・ECで商品を購入することが可能になっています。物流業界は、このデジタル化の社会において占める役割が大きくなっているのです新しい技術によって魅力的な商品ができると、通販で手軽に短時間にその商品を購入することができます。サービスや製品がデジタル化されていることによって、商品の管理体制や倉庫のシステムの自動化も進んでいることから、業務管理システムやマテハン機器、物流ロボットを扱うことのできるエンジニアの役割が大きくなっています。

大手通販サービス・ECが台頭したことによって、迅速に運送を行う機会や必要性も増えてきました。そこで、運送業では競合する他社との間でスピードや価格で優位性を出す必要性が増し、その負担による人手不足といった問題が生じています。配送が遅れてしまうと顧客からの信用が一気に崩れてしまうため、労働者が休暇を取ることが困難になることが、負担増の原因の一つです。適正な料金が定められる中で、運送にかかるコストをいかに下げるかが今後の課題となっています。

また、一般家庭への配送を中心に、荷物の再配達が多い点も問題として挙げられます。独り暮らしや共働きの世帯が増え、平日の昼間を中心に不在である比率が高くなっていることも主な原因と言えるでしょう。再配達になると「二度手間」が生じ、その分だけドライバーには余計な負担が増えてしまいます。また、配送に際して積載率が低いことも課題です。積載率が低ければ運送にかかるコストも上がってしまい、少量の荷物を多く運ぶだけ負担も増してしまいます。荷主や物流施設の都合などによって生じる荷待ち時間の多さもまた問題点として挙げられます。ドライバー側ではどうすることもできない荷待ち時間は、ドライバーの長時間労働にもつながるもので負担も大きなものです。

物流業の労働力不足と個人の負担増は、日本国内での総合的な労働人口減少も伴って、深刻さを増しています。さらに、2024年4月、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に上限設定される、いわゆる「2024年問題」の影響もあって、ドライバーの方の労働力確保はますます困難になるといわれています。人手不足が進むと、せっかくの案件を断ることが必要になり、最悪の場合では経営が立ち行かなくなって倒産となってしまう危険性すらあり得ます。また、労働に応じた賃金を支払う必要性も発生するため、ただ人数を確保できれば解決する問題でもありません。物流は、産業の中でなくてはならない重要な分野であり、人手不足を含む物流の問題を解決するために、早急に対策を講じる必要があるのです。

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物流業界が抱える課題とは?解決策と将来性について知っておこう
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物流の問題を解決するためにできること

物流の問題を解決するために、大手の物流会社などでもさまざまな対策が取られています。運送業者は、置き配やコンビニ・駅などで荷物の受け取りができるようにするなど、サービスの改善が進んでいます。コンビニ受け取りや駅の宅配受付ロッカーによる荷物の受け取りができると、荷物の再配達を行う手間が省けるなどの利点もあり、運送業者の負担の軽減にもつながります。顧客の側から見ても、自由な時間にコンビニや駅に出向いて荷物を受け取れることは利点にもなります。

大手通販サービスの台頭は、要望が増えるきっかけにもつながり、「当日お届け」のサービス化など、配送ドライバーにとっては負担の増す事態にもなっています。消費者の要求はどんどん増していき、それに応える形でこれまで物流は成り立っていました。しかし、EC化率が上がって一層スマホを使用して個人間で売買ができるようになるなど、さらに多様性が増していく中ではいずれ限界が訪れる危険性も生じます。そこで、荷物を受け取る側の意識の変化も必要です。

意識の変化として、具体的には、まずは時間指定の際は在宅することが必要です。自身で時間を指定しておきながら、不在のために再配達になることも多くあります。指定した時間を忘れないようにカレンダーなどに記入しておくなどの対策をすることによって、再配達にならないよう気配りをしないといけません。また、アプリなどを活用して配送状況を把握することも、受け取る側としてできることの1つに挙げられます。もし時間指定をしていない場合でも、配送状況を確認しておけば再配達を防ぐことも可能になるのです。

物流の問題を解決するためには、業者の努力だけでは難しい面もあるでしょう。そこで、荷物を受け取る消費者の側にもできることがあるのです。過剰なサービスへの要求をするばかりではなく、業者や現場のドライバーの負担を軽減するために個々で対応できることは取り組んでいかなければなりません。産業において重要な役割を担う物流業を守るためにも、消費者として何ができるのかを考え、実行していくことが大切なのです。

再配達については、こちらのコラムでも解説しています。

再配達問題を今一度考えてみる
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今後はどうなる?ドローンや自動運転車も可能?

物流業界は今後どのような姿を見せていくのか、展望について注目されている事柄を挙げていきます。まずは、AIによって物流センターの効率化を図るという試みがなされています。荷主の物量や景況感、天候、工数の過去実績などをAIに学習させて、物流センターの必要人員数を割り出そうというものです。人間の勘によって人数を割り出している従来の方法では、物流のオーバーフローが起きたり不要な人員が生じたりして人件費に無駄が生じることもありました。ここにAIを導入することによって、人件費の削減や最適化が期待されています。

AIの導入は、人件費の削減や最適化だけでなく、正確に物流の予測を行ううえでも効果が期待されています。AIによって物流センターからどれだけの荷物が出入りするかを予測することができれば、物流センター同士をつなぐトラックの積載率や到着予想時刻なども計算することが可能となるのです。それによって、積載率に余裕のあった業者は積載率を上げることができ、小口の荷物を抱えた業者も積載率が低いまま稼働をする必要が無くなります。人件費や燃料費の削減にもつながるため、大きな効果が期待できるのです。さらに、消費者の在宅記録、経路や所要時間などもAIに記憶させておけば、物流業者の負担が軽減されるのと同時に、消費者の満足度を上げることにもつながります。AIの予測に正確性が伴うまで時間がかかるなどの課題はまだ残るものの、実現が待たれるシステムです。

次に、ドローンを使用しての配送です。既に一部の企業を中心にしてトライアルも行われており、ドローンを使っての配送が実現される日も心待ちにされています。ドローン配送が可能になった場合、渋滞に巻き込まれずスピーディーに、そして人件費削減にもつながるため安価に配送を行うことが可能になります。実現が待たれる反面、衝突回避の技術や運行管理システムの整備に加えて、法規制の整備が必要であるなどの課題も数多く存在するのが実態です。しかし、ドローンを使用して荷物の配送を行うためのロードマップが取りまとめられるなど、実現に向けた取り組みも活発に行われています。また、地上を走行するデリバリーロボットを活用する案も検討中です。アメリカの企業が開発に取り組んでおり、ヨーロッパやアメリカなどで配送のトライアルが実施されています。

ドローンやデリバリーロボットは、基本的に短距離での配送を行うものです。それだけではなく、自動運転車によって長距離での運送を目指す取り組みも行われています。ドライバーが先頭のトラックを運転し、無人の後続車が一定の間隔でついていく「隊列走行自動運転」が日本で注目されています。実現されれば、人件費の大幅な削減につながるとともに、後続車両の燃料費削減や渋滞の緩和なども期待できるものです。また、トラック縦列走行は高速道路において行われることが想定されていますが、これに伴って自動運転についても開発が進むことも期待できます。自動運転が可能になれば、自動運転車によって過疎地への配送もスムーズに行うことも可能になってくるのです。

また2024年度、輸送の効率化を目的に、新東名高速道路の一部に自動運転車用のレーンを設置されます。主に夜のトラックで、駿河湾沼津と浜松の両サービスエリア間の100キロメートル超が対象レーンとなる見込みです。今後も技術の発展とともに、新しい物流インフラが整備され、システム・マテハン機器が活用されていくことでしょう。

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