COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

社会に不可欠なインフラとして、さらなる強靭化が求められている物流機能。その実現を阻む最大の要因とされているのが、「人手不足」です。輸送を担うドライバーや倉庫スタッフなど、さまざまな領域で露呈している人手不足ですが、現場ではその解決策を模索しているのが実情です。ここでは、筆者が物流倉庫の現場を取材する中で見聞きしてきた事例や生の声をもとに、物流倉庫に焦点を当てて、構造的な問題である人手不足の根本的な要因を探るとともに、その具体的な解決の道筋を考えてみましょう。
近畿地方のある物流倉庫。電子商取引(EC)の対象商品である食品や雑貨を取り扱うこの現場では、ここ5年間で取り扱う商品点数が2倍以上に膨れ上がりました。その要因は、新型コロナウイルス禍にありました。
外出自粛の動きが社会全体に広がり、これまで少しずつ普及しつつあったECによる購入スタイルが、一気に定着しました。店舗から宅配へ、いわゆる購買シフトが加速した結果、商品の生産拠点と消費者を中継する物流倉庫の業務量が急増したというわけです。
荷物の物量もさることながら、その「荷姿」も多様化したことで、倉庫現場は作業の「量」だけでなく「質」の変化にも対応することになりました。これまではECでの購入を前提としていなかった商品領域にも、宅配のニーズが高まり、定着したためです。
スタッフの人員はといえば、倍増どころか同じ水準を確保するのに四苦八苦しているのが実情です。少子化や職業観の多様化で、若い世代の採用が難しくなりつつあったところに、コロナ禍による現場環境の急激な変化が起きたのですから、その混乱ぶりは容易に想像できます。
新たな人材の確保が難しいとなれば、必然的に従来のスタッフで業務を回していくことになります。スタッフ1人当たりの作業量は、取扱量の増加に比例して膨れ上がります。ベテランの熟練スタッフが長年の経験で培った「勘」もフル活用しながら、何とか荷さばきをこなしているものの、それが常態化すれば、持続可能な働き方とは言えません。
熟練スタッフに依存したスタイルは、目の前の難題を乗り切るには有効であっても、持続的な業務改善にはマイナスの影響をもたらすことがあるからです。むしろ、業務を見える形で標準化し、常に他のスタッフでも対応できる「仕組み」作りが、持続的な倉庫機能の構築には不可欠なのです。
倉庫を運営する事業者の間では、こうした就業環境の変化に対応して、より働きやすい職場づくりに注力する機運が高まっています。休憩スペースの充実や託児所の設置といったハード面での対応に加えて、柔軟なシフト勤務の整備などソフト面での対応も進んでいます。いわゆる「スキマバイト」の従業員も活躍するなど、人材確保策に懸命です。近年では、賃金の水準を高めることで、人材の定着や増強を促す取り組みも広がっています。

こうした倉庫現場の実情を踏まえて、ここからは現場の業務最適化への道筋を考えていきます。ここで検証するべきテーマは、人手不足という現象をもたらす「真因」の探索です。
検証の第一歩として、人手不足が起きている原因を探るところから始めます。少子化や職業観の多様化で、倉庫現場における新規採用が困難を極めている実態については、前項で述べたとおりです。
しかし、ここで一度立ち止まって考えてみる必要があります。
「人手不足の解決」という命題は、果たして倉庫という現場における究極の解決すべき課題なのでしょうか。
ここで、思考の方向を変えてみます。物流倉庫が人手不足によって起きる問題とは何でしょうか。その答えは、「商品を取り扱う業務を円滑に進められなくなる」、つまり荷物を消費者に届ける作業が滞る事態になることです。
したがって、人手不足を巡る諸問題の解決は、この「荷扱いの作業の遅滞をなくすこと」というゴール(命題)に向けた手段なのです。
では、さらに思考を進めます。作業の遅滞を招く人手不足は、なぜ生じるのでしょうか。ここで重要なのは、荷主を含めた倉庫事業者に起因する要素に目を向けることです。この原因を紐解くことが、「作業の遅滞をなくすこと」という命題を実現するためのプロセスを導くヒントになります。こうした課題の「再定義」が、人手不足を巡る問題解決の出発点になると考えています。
こうした観点で考える際に、少子高齢化や職業観の多様化にその論拠を求めるのは、得策ではありません。これらは倉庫の運営事業者が解決できる事柄ではないからです。むしろ、採用における訴求ポイントの検討や広告宣伝活動の強化をといった、現場で取り組める施策を検討する方が現実的でしょう。
ここでは、「作業の遅滞をなくすために、『人を増やす』以外の観点でどんな対策を講じるべきか」、という視点で考える必要があります。採用を強化することが構造的に難しく、その背景となる社会動向が今後も継続する可能性の高い場合に、それ自体を議論することは、実効的な解決策につながりにくいからです。
そこで、「既存の人的ボリュームを維持しながら、取扱量の増加に対応するために何をすべきか」という視点で考えてみます。スタッフ1人当たりの作業量には限りがありますから、「2倍の勤務時間を確保する」という解決策は現実的ではありません。むしろ、「人への依存を前提としない仕組み」の構築を進めることが、現実的な解となるでしょう。
人手不足の解決による現場業務の効率化を図る手段として、倉庫現場で機運が高まっているのが、先進ITシステムやロボットの導入によるデジタルトランスフォーメーション(DX)です。ITシステムやロボット機器を手掛ける企業だけでなく、幅広い事業者が参入し、それぞれ強みの技術やサービスを前面に出して顧客獲得競争を展開。いわゆる「倉庫DX」領域として成長が期待されています。
しかし、ここで気をつけないといけないのが、倉庫DXはあくまで本質的な解決策ではなく、その実現に向けた手段である、ということです。「先進ITシステムやロボットを導入しても、最終的に現場改善につなげることができなかった」といった事例が相次いでいるのも、この視点が見落とされているためだと言えるでしょう。
なぜ、人手不足に対応するために倉庫DXを進めるのか。ヒューマンリソースの確保が今後も困難と想定される中で、荷扱い作業の遅滞をなくすためにすべきことは何か――。思考を進めてきた結論、それはここまで述べてきた中に答えがあります。「業務を見える形で標準化し、常に他のスタッフでも対応できる仕組みの構築」にほかなりません。つまり、現場が持続的に運用できる仕組みを作ること、それが本質的な解決策なのです。
前項では、2つのアプローチで、人手不足の課題への対応プロセスを整理しました。まずは、人手不足を巡る諸問題の解決に向けた取り組みを「『荷扱いの作業の遅滞をなくすこと』というゴール(命題)に向けた手段」と再定義しました。そして、その具体的な方策を、「業務を見える形で標準化し、常に他のスタッフでも対応できる仕組みを作ること」としました。
ここからは、こうした仕組み作りの具体的な取り組みについて考えます。ECの本格的な普及を踏まえた近年の倉庫現場の特徴は、「作業量の増加」「作業の複線化」の2つです。取り扱う商品の絶対量が増えているのに加えて、荷姿や配送方法の多様化といった、異なる作業を同時にこなしていく必要に迫られているのです。
ECが普及する前の倉庫現場は、極端な言い方をすれば、「決まった荷主の商品を特定の配送先へ遅滞なく流す」スタイルが一般的でした。
季節や年間行事などによる繁閑に対応した作業スケジュールの設定や、突発的な荷扱いへの柔軟な対応を、ベテランスタッフの経験に基づく勘で進めていく職人気質の現場が多かったのです。労働集約型の仕事として、若い世代の流入を期待できたこともあり、業務の担当ごとの細分化にも対応できたのです。
ところが、少子化の時代を迎えて、こうした作業モデルは転換を迫られます。これまでの背景もあり、専門的な「職人の技」から誰でも担える「標準化」へのシフトは、倉庫現場では決して容易ではない取り組みだったのです。
ここで、倉庫作業の標準化を進めるポイントを整理してみます。まず、標準化の定義を明確にしておきましょう。ここでは、「業務を誰でも同じように遂行できるよう、秩序化・単純化すること」とします。大切なのは、「誰が担当しても同じ結果が出せる」という状態を作ること」です。特定の誰かに頼り切ってしまう「属人化」を防ぎ、チーム全体で安定した品質を維持することを目指しましょう。
どんな職場にも、その分野に成熟した従業員がいるもので、業務を進める上で頼りになることが多いです。しかし、特定の個人に依存しすぎると、その担当者が不在の際や退職時に業務が立ち行かなくなる恐れがあります。こうした事態を防ぎ、誰が担当しても業務を滞りなく進められるようにすること。それが、標準化の本来の目的です。
業務の標準化を進めるには、その目的や手順、最終的な形を可視化して共有できる仕組みを整備しておく必要があります。それにより、「全体最適」の観点から、倉庫作業を一元的に管理することが可能となるのです。
業務の標準化を実現するにあたって忘れてはならないのが、現場を「全体最適化」する発想です。倉庫のような多様な機能の集合体である現場で、作業の見直しを進める場合に陥りがちなのが、各部門の業務効率を優先した「部分最適化」です。
例えば、商品の仕分けと検品の部門で、それぞれ個別に先進ロボットを導入したとします。これらを連携可能なITシステム上で統合すれば、倉庫内の商品やスタッフの動線を踏まえた効率的な仕組みを構築できます。しかし、連携せずに個別に稼働させた場合には、商品の滞留やスタッフの無駄な動きを生み、結果として現場業務の標準化につながらない可能性も高まるのです。
倉庫全体を俯瞰できる包括的なシステムがあり、その範囲で個別の部門の業務を司る機能が備わってはじめて、倉庫全体の標準化が実現します。
こうした業務の標準化は、スタッフの確保にもプラスの効果をもたらします。特に近年は、先述のとおり、多様な就業スタイルが広がっています。短期間の「スキマバイト」に代表されるように、流動性の高い人材を活用できる環境づくりは、現場業務の繁閑や突発的な業務への対応力を高める手段として、広く認識されるようになってきました。
こうした人材を受け入れるうえで、現場に求められるのが教育体制の整備です。作業のプロセスが属人化されていては、十分な指導が難しくなることは容易に想像できます。作業内容が可視化されていれば、基本的な作業の目的や手順を共有しやすくなり、新たに加入するスタッフも安心して現場に入ることができます。

倉庫現場の標準化を促すためには、全体最適化を前提とした仕組みの構築が不可欠です。こうした仕組み作りを支援する機能を持つ先進的なITシステムとして導入が進んでいるのが、倉庫管理システム(WMS)です。
WMSは、倉庫内の在庫や業務を効率的に管理するためのシステムです。入荷から出荷、棚卸、ロケーション管理、帳票発行まで、倉庫業務全体をデジタルで最適化できる機能性の高さが特徴で、全国の倉庫現場で導入が進んでいます。
WMS導入の利点は、常にアップデートされた最新の情報をもとに作業内容が標準化され、誰でも一定水準の業務遂行が可能になることです。バーコードやハンディターミナルと連携することで、リアルタイムな在庫把握や棚卸の効率化も実現できます。クラウド型WMSも増えており、短期間かつ低コストでの導入も可能となるなど、現場業務の最適化を促す上でも不可欠な基盤システムとして注目されています。
ここでは、倉庫業務の標準化に向けたクラウド型WMSの強みを紹介します。インターネット経由で機能を利用できるため、場所を問わずアクセス可能です。パッケージ化されたソフトウェアを使用するため、導入時の初期投資を大幅に抑えることができます。また、クラウド型WMSはすでに開発が完了したシステムを活用するため、数カ月の短期で導入が可能です。複数拠点での一元管理や、ユーザー数の増加にも柔軟に対応できるのも強みです。
こうしたクラウド型WMSの提供で存在感を高めているのが、ロジザード株式会社です。「ロジザードZERO」は、国内の物流倉庫業界で最も広く普及するクラウド型WMSの一つであり、その使い勝手のよさは定評があります。
WMSとは?物流を支える倉庫管理システムの導入効果と今求められる理由
https://www.logizard-zero.com/columns/wms01.html
人手不足を「人」ではなく仕組みで解決する――。「物流は経営戦略そのものだ」との認識が産業界に広がる中で、物流システムの根幹をなす倉庫機能を持続的に強化していくためにも、業務の標準化は不可欠です。ここでは、倉庫現場が抱える人手不足という課題の根本的な要因を追求することで、その最適解を模索してきました。
人手不足という構造的な課題の解決に取り組むには、まず倉庫内の業務の「棚卸し」を始めてみましょう。そこで浮かんだ問題点の解決に向けた取り組みとして、誰でも担える仕組みを作ってみることで、潜在的な課題にたどり着けます。それが標準化の第一歩になるでしょう。
この記事のライター
Shima N.
一般紙をはじめ各種メディアで取材・執筆活動に従事。
企業の広報・IR担当の経験も踏まえて、産業界の多様な領域に人脈を持つ。
運輸・物流領域に強みあり。