COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2023/05/23 EC・通販事業者セミナー運輸業・倉庫業(3PL事業者)

ロジザード物流セミナー2023レポート:楽しく仕事をしよう!

EC・通販事業者/運輸業・倉庫業 3PL事業者向けセミナーレポート前編

ロジザードでは、これから物流業界で働こうと業界研究中の方や物流のことを基礎から学びたいという方を対象に、基礎からトレンドがサクッとわかるセミナーを開催しました。今、物流業界で話題のYouTubeチャンネル「ロジカイギ」を主宰されている、株式会社LiNKTH(リンクス)代表取締役の小橋重信様、トランスフィード株式会社代表取締役の長井隆典様、株式会社トークロア代表取締役伊藤良様のお三方を講師に迎え、いわばロジカイギのリアル版を開催。軽妙な3人のやり取りから物流業界の基礎を学べる、楽しいセミナーとなりました。その中から本稿では、第1章「始まりは現場社員。"ロジスティクス新時代"の学び方と輝き方」について、レポートします。

開催概要

タイトル ロジザード物流セミナー2023
~ 物流をもっと知りたくなる!物流パーソンに必要な基礎からトレンド ~
開催日時 2023年4月19日(水)14:00~16:00
オフライン会場 浅草橋ヒューリックカンファレンス
オンライン YouTube
主催 ロジザード株式会社
参加費 無料
登壇者(順不同) 株式会社LiNKTH(リンクス)代表取締役 小橋重信様(第1・3章)
トランスフィード株式会社代表取締役 長井隆典様(第1・2章)
株式会社トークロア代表取締役 伊藤良様(第1章)
プログラム
  • 第1章:始まりは現場社員。物流コンサルタントが語る、"ロジスティクス新時代"の学び方と輝き方
  • 第2章:WMSのデータ分析から見えてくる運用改善の実例<
  • 第3章:「物流進化論」物流を制するものが未来を創る!

各章に、章末問題があります

第1章「始まりは、現場社員。物流コンサルタントが語る、"ロジスティクス新時代"の学び方と輝き方」

リアルロジカイギの実現

小橋:リアルロジカイギですね。いつもとは違い、これだけの人たちを前に久しぶりの対面セミナーですから、少し緊張しています。

長井:2021年の夏にふとした思い付きからYOUTUBEでスタートして、こうやってリアルセミナーを開催できるとは、感無量です。最初の頃は再生回数も本当に少なくて(笑)。でも、続けてみるもんですね。

伊藤:ロジカイギは、「物流を もっと楽しく わかりやすく」をテーマに、あれこれ発信するメディアを持ちましょうという企画でした。そういうメディアがなかったから、自分たちでやり始めちゃった。

ロジカイギ

EC業界における物流部門において、数えきれないほどの問題と改善を施してきたメンバーが、ほかでは話されないコアな情報を配信するプロジェクト。
https://logikaigi.com/
https://www.youtube.com/@logikaigi

小橋:WMSとかTMSとか横文字略称系、倉庫のレイアウトに関するコンテンツには、人気がありますね。当初は、それぞれの知り合い経由で業界の人、40~50代のクロウトさんが多かった印象です。最近は、物流業界に入ってきたばかりの人、若い人の視聴も増えて嬉しいですね。

長井:「人気のないコンテンツ」って・・・。ラジオ体操とか、なんでこんなことやったんだろう(苦笑)。

伊藤:メリハリのあるテーマで(笑)、これまでに約150本以上のコンテンツを発信してきました。「継続は力なり」とは本当によくいったもので、おかげさまで物流業界というニッチな世界で、チャンネル登録者が1,150名を超えました。今日はそんな我々から、物流業界に入ったばかりの方、検討中の方に役に立ちそうな話をせよというロジザードさんからのありがたいオファーをいただきました。私たち自身も物流人生のスタート、原点は、現場社員です。第1章では、"ロジスティクス新時代"の学び方と輝き方と題し、それぞれが歩んできたキャリアを背景に、3つのテーマで語り合おうと思います。

①現場で仕事にあたる際に心がけていたことは何か?

伊藤:最初のお題は、「現場で仕事にあたる際に心がけていたことは何か?」。私が現場社員の時は、お客様の商流を理解するために、できるだけお客様の仕事の流れに直接触れるよう、心がけていました。小橋さん、いかがですか?

チームを信じる

小橋:自分は現場スタッフの視点と、マネジメント視点の両方があります。現場スタッフの時は、お客様が自分たちに何を期待しているのかを理解しようと心がけていました。そのためには、お客様の業務を知ることがとても大切で、伊藤さんと同じく、お客様のことをしっかりと理解したうえで、自分たちに期待されている役割は何かを考えて行動していました。
一方、マネジメント視点ですが、これは自分の失敗談です。物流現場の経験がそれほどないうちに、自らセンター長に志願しました。知識は仕込んでいましたので、センター長になって自分の考えで現場を改革しようとしたんです。頭でっかちで、着任早々に現場の効率化、合理化を進めようとしたんですね。そうしたら、現場スタッフからリコール運動が起きてしまいました。現場にはたくさんの人がいて、それぞれに個性や考えを持って行動しています。そこに考えが及ばず、自分の価値観で業務改革を推し進めたので、リコールの声が上がってしまった。スタッフから、「センター長は、私たちを信じていないですね」と言われて反省しました。部下を信じる、チームを信じるという視点が欠けていて、成果にこだわる自分に気付いた出来事でした。

伊藤:自分のことしか考えないというのは、中堅の年齢にあるある現象ですね。自分の成長にのみ関心があって、成績を上げよう、そのためにはどうすればいい?という非常に狭い観点から暴走しがちです。よくわかります。
長井さんが現場で心がけていたことは何ですか?

違和感を大事にする

長井:質問することですね。どんなことも若いうちなら聞きやすい。わからないことを何でも聞けるのは、若い人の特権です。逆にいえば、マネジメント側は若手が尋ねやすい環境、雰囲気づくりを意識することが大切だと思います。それから、「違和感」を大事にする、違和感をそのままにせず、根っこにある疑問や謎を放置しないで、必ず相談や質問をしていました。

伊藤:現場はともすれば同じ仕事がずっと続いているように感じられますが、実はその時々で、瞬時に判断していることが意外と多いものですよね。時々刻々、違う状況に対応していてそれが流れ作業のように止まらない。だから、うっかりするとただ流されて、違和感が疑問に立ち止まれないこともあるかもしれません。

小橋:コンサルに携わって感じることは、優秀なスタッフの人はたいてい荷主にもまれています。難しいタイプの荷主ときちんと対話し、業務を進める中で、多くのことを経験して学んでいます。荷主にもまれることで、実力がつくんですね。同じ物流事業者に対して、善し悪しの評価がまったく異なることがありますが、結局は担当者の評価の差なんです。荷主と接した経験値が多いスタッフほど仕事ができるし、優秀で評価が高い。当たり前といえば当たり前の話ですね。


②ロジスティクス新時代とマネジメントの変化

知識の時代から心の時代へ

伊藤:時代も変わりましたし、物流も変化していく中で、教育や指導も難しくなってきましたね。

長井:ロジスティクスそのものが大きく変わりました。物流業界に入ったばかりの人が、ロジスティクスについてわからないのは当然にしても、実はマネジメント層にしても理解できているかといえば...、同じ状況だと思うんです。現場は「生産ありき」で動いていますから、どうしても流されてしまう。マネジメント側も現場スタッフも、双方が情報共有する時間をしっかりと作ることがより大切です。

伊藤:コンサルも同様です。もっともっとお客様事業に寄り添い、お客様に伴走する姿勢で対応する必要があると感じます。対話型AIが登場して、「知識の時代」は終焉を迎えます。今後は「心」の部分がより重要になっていくのではないでしょうか。

小橋:20年近く物流現場にいますが、この間物流現場はずっと「気合いと根性」で、お客様にNOを言わずに踏ん張ってきました。それも限界です。荷主に対して寄り添うことは必要だけど、おもねる、へつらうだけではダメです。物流のプロの視点から言うべきことは言い切って、荷主さんたちを引っ張っていく存在にならないと。

長井:気合いと根性で物量をこなすには、限度があります。これからは物流品質や、自分たちの得意な分野で勝負する。独自性、特殊性を伸ばしていく方向で、自社の成長を考えた方がいいですね。

「タイパ」を意識した育成法

伊藤:教育するという観点では、「タイパ」を意識することも必要になってきました。従来は、人材育成といえば、大きな目標を掲げて長いスパンで導く指導法でしたが、今はそんなやりかたは受け入れられません。階段を一段一段上るように、小さな目標を積ませてあげる指導法が求められます。より短いスパンで、本人に「成長を実感させていくこと」が大事です。なんといっても、時間軸が我々世代とは全然違います。そこで確認したいのが、次のテーマ「今後の必須スキルとその学び方」です。


③必須スキルとその学び方について

キャリアパスと会社への貢献を両立

小橋:テーマからはずれるかもしれませんが、お客様に寄り添いながら物流会社として利益を出す、って難しくないですか? 新人教育で「お客様の期待に応えることが大切、でも会社の利益を出すことも大切」って話しますけれど、これはある意味二律背反ですよね。これがずっとモヤモヤしていましたが、自分なりに一つの答えを出しました。物流会社にとって大事なことは、お客様に長く喜んでもらい続けること、継続して自分たちのサービスを使い続けていただくことです。お客様を喜ばせ続けるには、自分たちも成長を続けていく必要があります。つまり、会社も一定の利益を得て成長していかなければ、お客様を喜ばせ続けることはできないわけですよね。お客様に喜んでいただきながら会社の成長に寄与する力を、各自がつけていけるように、会社への貢献と自分のキャリアパスが両立できるよう、研修システムを設計していくと良いと思います。

伊藤:勝つか負けるかという判断は、いまやもう前時代的で、二律背反とされてきた従来の荷主と物流現場の関係性も、変わっていかなければなりませんね。

継続する力を養う

長井:いろいろな働き方があり、荷主の立ち位置も時代とともに変わってきていますから、双方の関係性も良い方向に向かっていくでしょう。あらかじめ、お客様である荷主(お客様)と継続的にともに成長していく、という意思を確認したうえで事業をスタートできれば健全です。前提に継続性が約束されていれば、無意味な消耗を防げます。

伊藤:継続性っていわゆるサステナブル経営ですね、とても大事な観点です。これからの企業には、継続する力が求められ、継続力があるかどうかは企業経営にとってとても重要なポイントです。とはいえ、継続は楽しみがあってこそ続くものだと思いませんか? 仕事って楽しいから続くものですよね! 「タイパ」の話とも絡んできますが、続けるには小さな楽しみを積み重ねるように成長していくことが大切なんじゃないかな。

長井:個人的に、ロジカイギをやって改めて思いましたけれど、継続って一人じゃ無理ですよ。

伊藤:確かに! だから人の力、みんなで続けていくことが必要なんですね。もう一つ私からアドバイスするとしたら、やはり技術力も身に付けたい大切なスキルです。新技術には積極的に触れてみること、おもしろがって触ってみることをおススメします。

楽しく仕事をしよう!

小橋:自分には中学生になる子どもがいますが、最近の子どもたちは、「大きくなったら●●になりたい!」ってなかなか出てこない。「こんな大人にはなりたくない」「こんな社会人になりたくない」という手本を、我々大人が見せてしまっているのかもしれません。だから僕たちから、物流現場から「こんな大人になりたい」って思わせるような、楽しくてカッコいい仕事ぶりを見せていきませんか? 社会経済を支えている物流の世界で、もっと楽しそうに仕事をして、後に続く若い人たちに希望を見せたいですね。物流業界に1,000万円プレイヤーが何人も出てきたって、おかしくないんです。楽しく仕事をすること、その姿、背中を見せていきましょう。それを提唱しているのがロジカイギです

長井:物流は、ロジスティクスとサプライチェーンが複雑に絡み合いながら、日々滞ることなく動いています。少し俯瞰した視座を持ち、自分が関わる世界のことに触れ続けてみてください。ロジカイギのコンテンツは、物流ビギナーの方向けの内容がたくさんあります。楽しめそうなコンテンツがあれば、ぜひ参考に見てください。


章末問題

章末問題の回答は、第3章の最後でご確認いただけます。
引き続き、第2章、第3章のレポートもご一読ください。


登壇者プロフィール
株式会社LiNKTH(リンクス)代表取締役 小橋 重信(こばししげのぶ)

婦人服アパレルメーカーに10年勤務し、マネージャーとしてブランド運営全般を行う。在籍中に上場から倒産までを経験し、ファッション業界からIT業界に転身。SONY(株)の法人向け通信事業部(bit-drive)で提案営業としてネットワーク及び、サーバー構築を行う。 その後、株式会社オーティーエスのEC物流の立ち上げ時に転職し、新規導入から現場改善、さらには、不良在庫販売や越境ECなどの新規事業を立ち上げる。現在は物流コンサルタントとして、物流改善、オムニチャネルの相談、越境ECの支援を行い、業界や学生向けの物流セミナーの講師として登壇している。ファッション×IT×物流の分野で「ファッション業界を物流から元気にしたい!」をテーマに活動中。

トランスフィード株式会社 代表取締役 長井 隆典(ながいたかのり)

EC事業会社におけるfulfillment(Logistics/CS/Studio/System)の統括マネージャーとして新規立ち上げと運用構築を多数経験。特にEC物流においては、部門を跨いだ課題可視化やKPI設計による物流戦略立案を担当し拠点統廃合及びWMS導入責任者を務める。2017年にトランスフィード株式会社を設立。荷主及び物流事業者として培ってきた経験をもとに、物流改善に特化したコンサルタントとして活動。主にフロー分析によるオペレーションの可視化やシステム導入による省人化を行っており、近年は管理者の育成にも力を入れている。

株式会社トークロア 代表取締役 伊藤 良(いとうりょう)

EC黎明期である2000年から大手企業でECに携わる。その後、ベンチャー企業4社の幹部として広範囲の実務と事業の成長に伴う様々な課題を経験する。前職の通販物流企業では営業責任者として年商10倍までの道筋を作る。アドバイザーとして2014年に独立し現在では、事業参謀として新規サービスの開発、マーケティング、業務体制構築など、種々多様な55以上のプロジェクトに携わっており、ハンズオンの支援に定評がある。