COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2023/05/01 EC・通販事業者在庫管理小売業(リアル店舗)

物流データ活用のプロが解説! 物流倉庫レポート作成のポイントとツールのご紹介

物流データ分析コラム Vol.3

2024年問題が差し迫り、物流業界ではDXへの取り組みに本腰を入れる中小企業が増えてきました。DXの第一歩は、「業務の見える化」です。業務を見える化するには、「数字」を現場の共通言語にし、数字をよりどころに生産性を高める施策にチャレンジしていくこと、継続的に数字を追うために物流データのレポート化が有効であることを、前回のコラムでご紹介しました。今回も物流改善に定評のあるコンサルタントとして多くの企業を支援しているトランスフィード株式会社の長井隆典様に、物流倉庫レポートを作成するためのステップや着眼点をお聞きすると共に、レポート作成を容易にするツールをご紹介いただきます。

作業の指針となる数値を追える「物流倉庫レポート」

現場の生産性を高めるには、現場の業務を例えば「この作業は何個なら●人で▲時間」と共通言語となる数字で表し、継続して同じ指標の数値を追いながら、定期的に検証することが大切です。そこであると便利なのが、物流倉庫のKPIを継続的に追いかけていけるレポートの存在です。

物流倉庫レポートには、経営者向けに提出する「報告用」と、現場のために作成する「作業の指針用」の2種類があり、それぞれ目的や役割がまったく異なります。
「報告用」レポートは、主に経営判断等に使われる数字を扱います。在庫実績など、倉庫側で出さないと分からない数値を荷主様や経営層宛に提出する際に作成するもので、3PL事業者の方ならイメージできるでしょう。もう一方の「作業の指針用」レポートは、業務を組織的に運用するために、その指標を現場に示すレポートです。今回は、現場の指標となる数値にフォーカスする「作業の指針用」レポートについて解説します。


物流倉庫レポート作成の4つのステップ

前回のコラムで、物流データの活用にはレポートが重要なカギを握ると指摘しました。しかし、レポートの重要性が分かっていても、どのようにレポートを作ったらいいのか分からない、あるいはレポート作成をしていたけれど誰も見ないのでやめてしまった、という声をよく聞きます。

レポートを作る工程は基本的に、
①データ抽出、②伝えたい内容を決める、③表現に必要な加工を施す、④アウトプットする、
の4ステップです。

①の「データ抽出」については、やってみた経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。WMSやOMSからデータをCSVファイルでダウンロードし、Excelで開いてみるところまではイメージできますし、実際にやったことがある人も多いと思います。

しかしそのデータは、②の「伝えたい内容を決める」ことを前提に見ていたでしょうか? データは「伝えたい内容を決める」ことで、「作業の指針となる数値」になります。「何のデータを」「何のために」提示しているのか、目的が分からなければ意味のない数字ばかりになり、見る人に響きません。響かない数字の羅列ではレポートは見られなくなり、レポート作成は無駄な作業ととらえられて続かなくなります。また、「何のデータを」「何のために」提示するのかが決まらなければ、③の「表現に必要な加工」も迷走してしまうでしょう。


物流倉庫で見るべき3つの数字

「表現に必要な加工」とは、物流データから読み解くべき指標を分かりやすくアウトプットすること、すなわち物流倉庫KPIの設定が前提になります。物流倉庫で見るべき数字はシンプルで、「在庫」「生産性」「入出荷単位の動き」の3つです。数字はシンプルですが、それぞれをどのような切り口で見るか、現場の作業と実状に合わせて見ていく必要があります。

在庫

「どの商品が今何個あるか?」は、実はあまり意味はありません。作業の指針として必要になるのは、実作業に紐づくデータです。例えば「今月の出荷実績の平均数に対して、出荷可能在庫は何個あるか? 発注が必要なタイミングはいつ?」とか、「すぐに出荷できる状態か、ストックケースから1点ずつバラす作業が必要か」といった、作業視点で数字を見ていきます。

生産性

生産性は、物流倉庫の人件費管理に直接かかわってくる数字です。まずは倉庫内の業務を区分化してみましょう。最初は入荷/出荷/棚卸など大きなくくりでかまいません。その中でどの作業に何人・何時間かかっているか、作業実績と人数と時間をできる範囲で出してみてください。生産性を割り出そうとすると、普通は入出荷の実績数を作業者数で割るだけになりがちですが、業務の区分が細かく分けられているほど各業務の生産性は正確になり、効果的な人の配置が可能になります。

入出荷単位の動き

例えば入荷の場合、仕入れ先ごとにデータをくくることで、入荷頻度や作業量がその倉庫にとって適正か、可視化できるようになります。従来は「来たらやる」文化で、多少の波動は人力でがんばればなんとかなっていましたが、これからの時代はそれが効かなくなります。もちろん倉庫側の事情ではコントロールできないケースも多いでしょう。しかし、異常値を把握できれば非常時が見えてきます。作業を平準化するには、把握する必要がある数値です。


物流倉庫KPIとは?

国土交通省や公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)などが示す物流KPIの代表的な指標は、どちらかというと配送寄りです。倉庫系のKPIは実は明確ではなく、それぞれの会社や現場の目的や実状に合わせて決めていく必要があります。

コンサルをしていると、EC物流は特に、管理者と現場スタッフの棲み分けができていないと感じます。本来は倉庫の仕組みづくりに注力すべき管理者も、現場で一緒に作業をしてしまうので、課題があっても原因の割り出しや解決策が一向に進みません。「現場第一主義」では、事業が成長して取扱量が増えると人海戦術しかなくなりますが、人手が確保できない今後はその手が使えなくなります。管理者はデータを活用して、数字と行動を紐づけて仕組み化していかなければ先はありません。その際の指標は、コストに響くものばかりでなく、働く人や荷主様が喜ぶ数字、うれしくなる数字をKPIにしてもいいと思います。データに紐づいて倉庫が効率的で働きやすくなる、という実感は、働く人のモチベーションになります。物流品質や働きやすい現場を測る数値も、今後は重要性を増していくでしょう。

国土交通省による物流DXの定義は、「見える化」で非効率な部分を是正し人手不足対策をすること。国がすでにそう定義しています。2024年問題への対応から、TMS(輸配送管理システム)の情報はオープンになりつつあり、情報共有から様々な新しい仕組みが生まれています。しかし、WMS(倉庫管理システム)はクローズで倉庫内はブラックボックス化しています。言い換えれば、「自社のやり方しか知りません」という現場が圧倒的です。しかも、大規模倉庫はともかく、EC物流の倉庫に関しては、その実態を国も把握しきれていないのが現状です。数字が表に出にくい分野ではありますが、時代の要請で今後は倉庫のデータもオープン化が必至です。

物流DXの代表格でもあるロボット化を検討するなら、業務の定量化は避けられません。国の指針に従い、物流DXの定義に準ずる第一歩として、業務を数字で「見える化」していきましょう。数字は、「昨日より今日が良くなっている」ことを示してくれます。逆に数字がなければすべてが「感覚頼み」です。


アクションにつながる物流倉庫レポートツール開発の目的

そうはいっても「数字をとるってどうやって?」「どうすれば倉庫現場に必要なレポートが作れるの?」という、現実的なハードルを前に、なかなかその一歩を踏み出せない方もいるでしょう。物流倉庫レポートを作成しようにも、中小企業向けのツールはありません。比較的規模の大きな企業では、会社として導入しているBIツールにWMSのデータを充てて、データ分析の一環として物流データを見ています。中小企業はなかなかそこまでできませんから、WMSデータをExcelに落としているのがせいぜいではないでしょうか。しかし、例えば、デイリー(1日ごとの実績)の出荷実績から平均値を出して、引当前在庫が何日分あるか、リードタイムも含めて発注のタイミングを出すには?などの複雑な計算を、Excelでやろうとするのは大変です。こうした背景から、「物流データを単体で可視化する仕組みがないなら作ってしまおう」と、物流に特化したレポートツールの開発に取り組み始めました。


物流倉庫レポートツール「Quick Loda(クイックローダ)」の概要

開発の目的は、「最低限数字を見て議論できる文化をつくる」ための一歩を踏み出してもらうこと。物流倉庫KPIに必要なデータを、シンプルかつ簡単に抽出できるシステムを構築し、現在テスト運用を開始しているのが、物流倉庫レポートツール「クイックローダ」です。

「クイックローダ」は、WMSからデータを自動的に取得してダッシュボード化する分析ツールです。レポート作成ステップの①データの取得、②加工する手間を省き、業務の数値化、可視化を容易にします。物流コンサルとして培った知見やノウハウを活かしてダッシュボード化することで、管理者はデータを見るだけで次のアクションや現場への指示ができる仕組みです。

特長は、誰でもすぐに使える低価格かつシンプルで直感的な操作性であること。そして、WMSからデータを自動取得する点にあります。WMSには倉庫のすべてのデータがあります。「クイックローダ」は、データを"素早く読み込んで展開するローディングシステム"がその名の由来です。物流倉庫KPIは、WMSに集約される現場の数字をベースに決めるべきです。そのため、ほぼすべてのデータをエクスポートできるロジザードZEROを最初の連携パートナーに選びました。ロジザードZEROは必要なデータが抽出しやすく、様々な業種で活用されているため、広く浅く現場の数字を取り込むことができるので、いろいろな角度から物流倉庫KPIを導けます。ただし、現場では人間関係が重要なことは変わりません。物流倉庫レポートはシンプルに数字と業務をつなぐ仕組みですが、働く人の公平感と自己肯定感につながる仕組みをつくってこそ価値があります。「クイックローダ」は、そんな現場の文化を醸成するきっかけとなるよう、心が通うダッシュボードを目指して開発、改良を進めていきます。


まとめ

面倒な作業をすることなく、物流分析レポートを簡単に取得できる「クイックローダ」は、中小規模倉庫にとっての救世主となるレポートツールです。数字で語れる現場、数字の変化に気付ける現場にするための、最初の一歩を踏み出せるツールとして開発されました。現場の小さな努力やがんばりが数字として見える、がんばりが見えると行動が変わり、好循環が生まれます。物流倉庫KPIを提唱する長井さんの想いに共鳴し、「クイックローダ」の最初のパートナーに選んでいただいたロジザードも、レポートの力で現場がより良くなるお手伝いをしたいと考えています。物流倉庫レポート、物流倉庫KPIに興味を持たれたなら、ぜひお気軽にロジザードにご相談ください。


本コラムにご協力いただいた物流コンサルタント
トランスフィード株式会社 代表取締役 長井 隆典(ながいたかのり)

EC事業会社におけるfulfillment(Logistics/CS/Studio/System)の統括マネージャーとして新規立ち上げと運用構築を多数経験。特にEC物流においては、部門を跨いだ課題可視化やKPI設計による物流戦略立案を担当し拠点統廃合及びWMS導入責任者を務める。2017年にトランスフィード株式会社を設立。荷主及び物流事業者として培ってきた経験をもとに、物流改善に特化したコンサルタントとして活動。主にフロー分析によるオペレーションの可視化やシステム導入による省人化を行っており、近年は管理者の育成にも力を入れている。
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