COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。
モノが運べなくなる!?
2024年4月1日より、働き方改革関連法が物流業界にも適用されます。トラックドライバーの時間外労働時間が、年間960時間に上限設定されることで、物流会社では売上・利益の減少やトラックドライバーの収入減少、これに起因する担い手の減少が問題となりそうです。荷主側でも配送料の高騰など物流コスト全体が上昇し、ビジネスへの悪影響が懸念されています。ロジザードでは、物流をテーマに開催した「ロジザード物流セミナー2023(※)」の視聴者様を対象に、2024年問題に関するアンケート調査を行いました。調査結果をもとに、物流の2024年問題への向き合い方について考察します。
※「物流業界で働くとは?」をテーマに開催したセミナーで、物流に興味関心のある方を対象としたアンケート調査結果です。
調査期間:2023年4月~7月
調査方法:オンラインによるアンケート調査
対象者:「ロジザード物流セミナー2023」を視聴された方
回答者数:84名 (荷主30% 物流41% その他29%)
はじめに、2024年問題に関する影響が周囲で実際に感じられるかどうかを尋ねました。「自社で対策を行った/今後対策する必要がある」と回答したいわば「当事者」は25%で、内訳は運送、3PLを営む物流事業者様が大半でした。実際に運送、3PL事業者様にお話しをきいたところ、2024年問題が大きくメディアに取り上げられる前から策を講じており、アンケートの時点ですでに対策が完了している事業者様が大半のようです。逆に、荷主様や倉庫業など約7割の方が、「間接的に影響があるかもしれないが自社には直接影響がない、どのような影響があるか分からない」との認識のようです。回答者の業務内容にもよりますが、コストの上昇や配送日の集約、制限など、本当に直接的な影響がないのかは気になるところです。一方で、物流の2024年問題を「知らなかった」との回答は4%でした。ニュースなどを通じて認知が進んでいることがみてとれます。
回答(自由記述) |
値上げ等 |
値上げ |
運賃値上げ |
運送(集荷時間、タリフなど) |
コストの見直し |
物流費のコストアップ |
自社ドライバーの残業抑制 |
ドライバー不足、リードタイム |
11時間内運行計画のため、着荷主と交渉中 |
納品の配車プランを改善する必要がある |
リードタイムが1日延びる |
ドライバー不足の兼ね合いで運送会社の立場が強くなった |
まだまだ認知が足りないと実感している。 |
自由記述で具体的な影響について尋ねたところ、「物流コスト」と「配送のリードタイム」に関する影響がすでに現れていることが分かりました。13件中6件がコスト、別の5件がリードタイムを含む労働環境に関わるものに大別されます。労働環境の面では、今後残業時間や配車プランの調整が必要になります。従来通りの運用が難しくなるうえ、配送コストも上昇し、折からの燃料の高騰と相まって、運送料金のさらなる値上げは避けられない状況です。
続いて、「2024年問題について、対策は行いましたか?」と尋ねました。56%の方が何らかの対策を講じているか予定があるのに対し、18%の方は「何をしたらいいのか分からない」と回答しています。回答者が「(自分の担当外なので)分からない」と回答している可能性もありますが、アンケート回答時点ではまだ具体策を講じていない配送事業者もあると思われます。
回答(自由記述) |
顧客に対する送料値上げ要請 |
値上げ受理、集荷時間短縮 |
出荷時間の徹底 |
出荷曜日集約など |
配送コースのローテーション化 |
荷受け予約システムの構築 |
11時間内運行計画のため、着荷主と交渉中 |
荷待ち時間の短縮を狙いとして生産管理部門との連携、営業へリードタイムの延長要請、予約システムの導入 |
在庫と仕入先の見直し。発注ロットの見直し。 |
企業毎に対応は異なる。 |
共創物流をどのようにするか。 |
郵便物の選別 |
システム化 |
情報収集 |
Q3で「何らかの対策を講じている、予定がある」と回答した方に、具体的なアクションを自由記述で尋ねました。顧客に対する値上げ要請や、集荷・出荷、配送コースに関する制限の設定、荷受け予約システムの構築、仕入先や発注ロットの見直しなど、業務やコストの集約を行い、できるところから効率化を進めていこうとする姿勢がみえました。
回答(自由記述) |
国交省やメディアの情報配信がミスリード。ドライバー視点ではほんとに日本経済は大丈夫なのかと感じてしまうほど、お粗末 |
宅配業者の対策や対応が気になる。(納品・配送において「期日指定できない」等の対応になっていくのか) |
提携運送会社との値上げ交渉 |
影響は深刻そうに見える |
荷主様の理解がどこまで得られるのか? 理解していただけるまでどれだけの労力が必要か? 以上が気になっています |
RFIDの利用 |
委託している宅配運賃のさらなる値上サービス低下、サービス廃止 |
弊社は海外へ食品を輸出している商社で物流に関しては委託しているが、委託先との連携が必要だと思っている。任せっきりではなく共創できればと考えセミナーなどに出席している |
2024問題について理解をしていない状態なので理解したいという思いがある |
最後に、2024年問題に関して思うところを自由に記載していただきました。2024年問題を把握されている方は、具体的な弊害がイメージできるなど、この問題をかなり深刻にとらえています。これまであまり意識していなかった方は理解したい、学びたいと考えていることも分かりました。働き方改革関連法の施行後に直接的な影響が出てくると、それぞれの立場で思うところに変化が生じてくるかもしれません。
本調査からは、物流の2024年問題は多くの人が知るところでありながら、目前に迫った今でも、具体的な対策を講じていない関連企業が少なくないことがみえてきました。
メディアでは、「送料無料」の見直しなどを提言した政府の物流革新政策パッケージを取り上げ、ECなどBtoCに関わる配送危機をテーマに、2024年問題を報じるケースが多いと感じます。ECの需要拡大により物流量が増えているのは現実ですが、割合でみるとBtoCは5%以下といわれ、ほとんどがBtoB取引に関わる運送です。
2024年問題は、BtoB企業にとって死活問題です。素材、原料、部品、製品、商品といったあらゆる「物流」が滞るかもしれない危機は、全国民に降りかかってくる問題でもあり、誰もが決して無関心ではいられません。解決にあたっては、荷主や消費者の理解や協力なくしては進まない課題が多々あり、荷主側、運送側、消費者それぞれが、「モノが運べなくなる」危機に対して、真剣に向き合う必要があるでしょう。
そもそもこの問題の根源は、トラックドライバー不足にあります。他の業種に比べて低賃金かつ長時間、きつくて危険な仕事であることから、若年層はもちろん中高年層においても職業としての人気が低く、高齢を理由に辞めていくドライバー数に比べて、なり手が圧倒的に不足しています。一方で、運送事業者数は飽和状態にあり、常に価格競争にさらされているため、ドライバーの賃金を上げたり、労働条件を改善したりする余裕がありません。
さらに、トラックドライバー人材の分母を減らした可能性が指摘されているのが、2007(平成19)年の道路交通法改正です。この改正では、交通事故抑止の観点から、普通自動車免許で4トントラックを運転することができなくなりました。代わって新設された中型自動車免許を取得するには、20歳以上で普通自動車免許を取得してから2年以上経過していなければなりません。高校卒業と同時にトラックドライバーとして働く選択肢が消え、物流業界で働く若者を遠ざける要因となったともいわれています。
人口減少が急速に進む日本において、トラックドライバーのなり手を増やすには、力のある若い男性ドライバーを前提にした労働環境を見直すことが急務です。そのために、荷主や倉庫側が打てる手はまだまだたくさんあると、ロジザードは考えます。
たとえば、「荷役はどっちがするのか問題」。BtoB配送は、荷物そのものが重かったりかさばったり量が多かったりと、積み込みや積み下ろしは危険が伴う重労働になりがちな仕事です。きつい現場作業は、女性のドライバーや年配ドライバーの活躍を阻害している要因の一つといえるでしょう。
この積み込みや積み下ろしの荷役業務を、荷主側が一部負担できたらどうでしょうか? ドライバーの負荷を軽減すると同時に、その時間をドライバーの休憩時間にあてれば残業時間の軽減につながるかもしれません。立場的に弱いドライバーが荷役を引き受けるケースが見受けられますが、36.3%の事業者がその荷役料金を請求できないでいます。正当な取引のためにも、荷主側は荷役作業に対しての料金を支払う、あるいは荷役を荷主側(倉庫側)が引き受けるなど、ドライバーを大切にするための理解と協力が必要です。特に、女性や年配ドライバーの活躍を推進するには、体力勝負の仕事との決別は必須です。トラックドライバーの業務が運転だけであれば、活躍できる人材は増えるのではないでしょうか?
また、BtoB運送にありがちな「手待ち時間問題」についても同様です。「手待ち時間」とは、トラックドライバーの積み込み、積み下ろしまでの待機時間をいいます。ドライバーは、納品時間を厳守するためにリスクをできるだけ回避しようと、早めに目的地に到着して待機します。これも、荷主側がリード期間を長めにみること、運送会社と相談しながらバース管理をコントロールすることで、休憩時間に充てるなどの解決できる道があるはずです。
実際に、大手スーパーやコンビニエンスストアでは、店頭への配送回数を減らしたり、発注から納品までの間隔を延長したり、AIの導入で配送ルートを最適化したりするなど、ドライバー不足への対応を始めています。また、複数のメーカー、卸などによる共同配送も始まっています。
2023年6月、「第2回我が国の物流の革新移管する関係閣僚会議」が開催され、「物流革新に向けた政策パッケージ」と、経済産業省・農林水産省・国土交通省の3省が発表した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取り組みに関するガイドライン」においても、荷主事業者に対する物流改善の義務化が明記されました。運輸業の事業者だけががんばるのではなく、荷主にあたるメーカーや通販事業者も、2024年問題を深く理解して、改善に向けた対応に動き出さなければなりません。物流全体を俯瞰して、お互いに知恵を絞り合い、協力しあうことがなによりも重要です。
中小企業は、大手企業並みの設備投資は厳しく、リスクを引き受ける体力にも限界があります。システム構築もままならず、ノウハウも少ない、物流の共創で打開策を見いだしたいけれども、競合会社と足並みをそろえるなど現実的ではありません。やはり荷主側、倉庫側の理解と協力を得て、全体で課題解決の歩みを進めていく努力が必要でしょう。
今回はアンケート調査の結果をもとに、2024年問題について重要なことは何かを考えました。ドライバーが魅力ある仕事になり、人材の増加と地位、待遇の向上が望める職種にするために、荷主(倉庫)側からも2024年問題に対応できることが、たくさんあります。物流業の方は荷主様に、荷主側の事業者様は物流会社様と、2024年問題について話す機会をつくってみてはいかがでしょうか。
ロジザードでは、クラウドWMS(倉庫管理システム)「ロジザードZERO」を通じ、荷主様と倉庫や3PL、配送業などの物流事業者様の双方をつなぎ、支援しています。物流の2024年問題の対策を一歩でも進めたいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ
https://www.logizard-zero.com/contact/
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