COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2022/01/19 セミナー物流ロボット運輸業・倉庫業(3PL事業者)

第4回 ロジザード物流セミナー2019冬 レポート【前編】~3PLの物流ロボット活用の方向性~

最終更新日:2022年1月19日

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東京・大阪で開催された「第4回 ロジザード物流セミナー2019冬」。
「人手不足解消と物流ロボット」をテーマに、物流ロボット、フルフィルメント、在庫管理システム、それぞれに関わる企業の代表が、各々の立ち位置や視点で、物流業界における課題や物流ロボットの可能性、将来性に迫りました。本コラムでは、セミナーでの講演およびパネルディスカッションの模様を、2回にわたってレポートします。前編は、ロジザード株式会社 代表取締役社長の金澤が語る、「3PLの物流ロボット活用の方向性」です。物流の自動化やロボットに今注目が集まる背景と現状について語りました。

※このコラムは当セミナーで話した内容です。
※このコラムでは、棚搬送 (GTP) 型ロボットを「AGV」、自律協働型ロボットを「AMR」と表記しています。

物流ロボット、自動化に今注目が集まる理由

「人手不足」いう大問題に対し、物流業界全体が真剣に取り組むべき時に来ています。人手不足をどう解消するかをテーマにした本セミナーに、これだけ多くの方々がお集まりくださいました。課題の大きさと切実さに加え、現場の自動化、省力化を実現する「物流ロボット」に対する注目の高さに驚いています。今回はご縁あって、日本で初めてギークプラス(Geek+)社の「EVE」という物流ロボットを導入され、実践しているアッカ・インターナショナルの加藤社長に、ロボット運用に関する具体的なお話を聞く機会をいただきました。その前段として、物流ロボットに期待が集まる背景などの情報をお伝えします。

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人手不足とその副作用

ある研究所の調査によると、物流作業従事者は、2030年までに数十万人単位で不足する見込みです。すでに今、人材不足の影響は人的コストの上昇として表出しています。物流作業の賃金は、この3年間で10%以上の上昇率で、時給1,100円程度、地域によっては+100~200円が相場のようです。それでも人が「足りない」状況には変わらず、現場はのっぴきならない状況にあるといってよいでしょう。

人手不足の副作用は、人的コストばかりでなく、配送コストの上昇としても現れています。ドライバーが圧倒的に足りない現状に、配送会社が軒並み運賃を上げています。物流業者は、倉庫のコストに加えて、物流コストの上昇をも吸収しなければいけない状況で、この先も楽観できそうにありません。

これらの課題を解消するために、国は次の①~③の強化策を奨励しています。

働く女性を増やす
働くシニアを増やす
働く外国人を増やす

しかし、この施策だけでは予測される人手不足をカバーするにはまったく追いつきません。①~③で賄えない労働力を、生産性を上げることで補う必要があります。ここの対策を抜きにして、人材不足への抜本的な解決は難しいと思っています。

特に物流現場はフィジカルな作業が欠かせないため、生産性を高めるためには、作業負荷の軽減策は必須です。生産性向上のための対策として、負荷の高い単純作業を機械化すること、つまりロボットの活用に注目が集まっているのだと思います。怖いのは、今のやり方のままでは事業継続の危機が目前に迫っていること。生産性向上対策を何も講じなければ、人手不足で事業そのものが危うくなることを意識する必要があるのです。

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倉庫内作業は機械化に向いている

B to Bの物流が主流だったかつて、自動倉庫を主役としたマテハン機器がもてはやされた時代がありました。しかし、物流のトレンドは、一括大量物流から高頻度小口物流へと形態がシフトしてきたことから、人間の手作業の方が、効率がよくなるケースが増えてきました。そんな物流が長く続いて来たのですが、ここまで、人手不足が深刻になり、改めて自動化の推進を考えた時、やはり倉庫内の作業は機械化に向いているといえます。

理由は、接客などのエモーショナルな機能がいらないこと、作業はフィジカル(単純)業務の複合体であること。しかし、機械化しやすいにもかかわらず進んでいないのは、これまでの自動倉庫を中心とした機械や設備は、導入の制約がある上に大掛かりで投資リスクが大きいという壁があったからです。しかし、近年では自動化の方法にもバリエーションが増え、人間と自動倉庫の中間に位置する「ロボティクス技術」が登場したことで、ハードルはぐんと低くなっています。

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人間による作業のメリット・デメリット、自動倉庫のメリット・デメリットの中間的な存在として、ロボティクスがあります。ロボットは、決められた業務では人の3~4倍働く、拡張・縮小が容易、標準業務であれば転用が効くというメリットがあります。デメリットは、複雑なオペレーションのための人員は必要なので、完全無人化が難しいというくらいです。

コストを考えると、原則的に、量と時間に反比例して単位当たりのコストが下がるのが、機械化の特長です。以下の基準で能力を算出して、コスト分析を行い、導入計画を立ててみると、どの方法が自社にとってベストかが判断できると思います。

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ロボティクステクノロジー

こうした判断の中で、現実的なのがロボティクスによる作業の自動化、人間が行う作業の代替です。私は中国で約30社のロボティクス現場を見てきましたが、大変に合理的に運用されていました。

物流ロボットのカテゴリーは、大きく2つに分類されます。
1つは、搬送系。
搬送ロボットとも呼ばれるタイプで、主に運ぶ作業に従事するもの、人間の足の代替となるものです。このあとご紹介するギークプラス社の製品はじめ、自律協働型ロボットなど実用に耐えうる製品が続々と登場しています。

もう1つは、ハンドリング系。
アームロボとも呼ばれるタイプで、主にピッキング用途、人間の手の代替となるものです。こちらは、近年AI技術などにより認識技術が飛躍的に向上しています。しかし、機械の動作と制御に課題があり、限定された用途で運用されているのが現況です。

さらに、ロボティクステクノロジーの運用にも、2タイプあります。
1つはAGV。
ロボット完結で、機械の性能をフルに発揮できる運用です。基本軌道は、QRコードなどのマーカー方式です。他にも磁気テープといったガイドが必要なため、ロボットが効率的に運用できるよう、発想や仕組みを変える必要があります。

もう1つは、AMR。
人間の作業をアシストする、例えば人の動きと連動して動くワゴンタイプのロボットなどは、基本軌道はなく、SLAM(自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術)などで運用します。モノや人をよけてくれるため、既存のやり方を大きく変えることなく導入できるのは、こちらの運用タイプでしょう。

そして、現場の最終構築イメージは、数ある事例にも共通する「ロボット+コンベア」が主流になると考えています。

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目指すところは、「保管効率を上げつつ新たなスペースの活用と運用改革」。このタイプでは、QRコードなどのマーカーをグリッドで配置し、棚と位置を把握するロボットがまだ多いです。入出荷作業は、作業場所(ワーキングステーション)で行いますが、ロボットが必要とする棚をステーションまで運びます。人は動くことなく、運ばれてきた棚から該当の品をピッキングするイメージです。

左側真ん中の画像は、協働型(追随型)+搬送ロボット。目指すところは、「大きなレイアウト変更なしで効果的なエリアピックを実現し省人化」することです。このタイプは、現場のレイアウトを自ら地図化して記憶し、エリアをマッピング設定して人の作業をサポートします。

画像には記載していませんが、ストレージロボットについても簡単にご紹介します。目指すところは、「棚の概念を刷新し、効率的な入出荷で省人化」すること。棚に動脈と静脈を作成し、格納と取り出しをロボットが制御して棚を管理する方式です。

こうしたロボットが各作業を行い、それぞれの作業工程をコンベアがつなぐのが、ロボティクスを活用した現場の最終構築イメージです。


まとめ

今回のセミナーは、物流現場の生産性向上とロボティクスがテーマです。人材の採用増加を施策しつつも、将来に備える選択肢の検討の必要性がある!と感じ、本編のイントロダクションとして、物流ロボットへの期待と背景、導入方法の一例をご紹介しました。

このあと登壇いただくのは、フルフィルメントサービスの先駆けで、積極的なAGV導入と運用により飛躍的に業績を伸ばされている、株式会社アッカ・インターナショナル 代表取締役社長 加藤大和様、そして中国での物流ロボットの導入・開発で業界をリードするギークプラスの日本法人、株式会社ギークプラス 代表取締役社長 佐藤智裕様です。

  • ロボティクス活用について、実際に取り組んでいる生の情報
  • ロボティクス導入までの重要なステップ・ポイント

を余すところなくお話しいただきます。ロボティクス導入で、3PL企業の未来像を提示し、皆さまにも新しい姿に生まれ変わる自社をイメージしていただけるはずと、期待しています。

開催レポート
325名来場、第4回ロジザード物流セミナー2019冬 開催

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