COLUMNロジザードオリジナル EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。

2019/06/11 システム

物流におけるIoTを考えるVol.3 ~ロジスティクスIoTの今後と課題~

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物流におけるIoTとは何か? その現状と課題を3回にわたり考えるシリーズをお届けしています。
第1回「輸配送におけるIoT」
第2回「倉庫内におけるIoT」
最終回は「ロジスティクスIoTの今後と課題」と題し、ロジスティクス4.0時代を迎えた今、物流現場に欠かせないIoTとはどうあるべきかを考えます。

IoTによる省人化・ 標準化が進むロジスティクス4.0

1980年代以降、世界中で急速に進んだグローバル化やITの進化により、物流業界にも大きなパラダイムシフトがおきました。経済産業省が2016年に発表した資料(※注1)によれば、現在は「ロジスティクス4.0」が進行中。そして、「ロジスティクス4.0とはIoTの進化による省人化・ 標準化」と、定義しています。下図のような変遷を辿ってきた物流における変革は、その時代の産業構造や世界経済を大きく変えてきました。

columvol03.png  資料:ローランド・ベルガー     

図:ロジスティクスにおけるイノベーションの変遷

※注1・図引用元:「我が国ものづくり産業が直面する課題と展望(経済産業省)」 https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2016/honbun_pdf/pdf/honbun01_02_03.pdf

本シリーズの第1回、第2回でお伝えしたとおり、すでに物流の世界では、自動運搬車やドローン、AGVやピッキングロボットなどの導入により、従来人手に頼っていた作業はロボットが代替し始めており、省人化へと急速にシフトしています。IoTの進化は、「省人化」に加えてもうひとつ大きな変革、すなわち「標準化」へのシフトをもたらすだろうと考えられています。IoTは、あらゆる機能や情報をつなぎます。物流でいえば、調達・生産から小売・配送までのサプライチェーン全体がつながることで、どこに、何が、どのくらいあるのか、モノの位置情報をリアルタイムで把握できるようになります。この情報を管理する方法を標準化する取り組みが、グローバルで始まっています。

先の資料においても、生産や物流に関する情報をサプライチェーン間で共有するシステムを構築した、ボッシュの例を紹介しています。RFID タグを活用し、顧客であるOEM メーカーやサプライヤーと情報を共有して、入出荷管理の自動化や在庫の最小化などを実現している事例が、すでに2016年に紹介されています。

情報の管理方法が標準化され、企業・業界間で物流機能や"モノ"以外の情報が共用されれば、最適な物流手段を総合的に判断できるようになり、物流の世界はもっと効率的に動くようになるはずです。さらに、モノと輸送手段を機械的にマッチングさせるような、新しい価値を創造したサービスの登場も期待できます。物流を適時適切に届ける「サービス」へと進化させ、従来の「コストセンター」的存在から付加価値へと転換することが可能になるのです。


すべてがつながり、すべてがさらされる

すべての情報がインターネット上に集約され、リアルタイムに見えるようになると、次はそれらのデータをどう活かすかがテーマになります。IoT技術、価格、性能、利用レベルのすべてが向上し、あらゆるものにセンサーが組み込まれ、同時進行的にさまざまなデータがクラウド上に上がるようになれば、これらの情報はもはや隠しておけません。つまり嘘がつけない、ごまかしがきかない世界になるということで、無駄なことはできなくなっていきます。明らかに無駄なものは生産不要と判断され、例えば食品ロスなどの問題は解決に向かうはずです。

モノの情報が大量かつリアルに見えるようになった先の世界がどのように変わるのかは、実際にその時になってみなければ分かりません。本来、テクノロジーやツールが開発されるそもそもの目的は、効率化であることが多いもの。効率を上げ、生産性を高めることを目指して開発されるものです。しかし、実際にテクノロジーが進化することで、今まで見えなかったこと、気付かなかったことが見えてくることがあります。見える世界が変われば、課題感は変わり、テクノロジー開発の目的もまた変わります。

アナログだった物流の世界も、もともと在庫をどうにかしたいという目的でITを使い始めた人がITの便利さに気付き、これをもっと活用しようと価値観が転換してきました。早さと正確さにおいて、機械は人間の比ではありません。この特性を活かして効率化を目指す先に、初期の目的よりも進化した課題解決、価値観の転換に発展する可能性はおおいにあります。


IoTを「監視」目的にしてはならない

IoTを利用する意味は、すべての情報がつながりオープン化されることで、無駄や無理をなくすことにあります。物流は、どこかで無理をすると必ず事故につながる危険をはらんでおり、これを解決するためのテクノロジーの使い方でなければなりません。つまり、「すべてが見える」データ管理を、「管理=監視」のように閻魔帳的な監視に使うのではなく、「管理=マネジメント」すなわち支援・サポートの視点で見ることが重要です。IoTはあくまでも現場作業を「支える」ためのツールであること。生産性を上げるためのツールが「監視」目的になれば、確実に生産性は落ちてしまいます。この点は心して取り組まなくてはならないところでしょう。

「ザッポスの奇跡」をご存じでしょうか? 比類なき顧客エクスペリエンスを創造し続け、Amazonが屈服して800億円を投じて買収せざるを得なかったといわれる、独自の企業文化を持つECです。今話題の「Teel組織」を地でいくヒエラルキーのない企業体で、社員の裁量に任せた経営を行うことで急成長し、世界中の注目を集めています。ザッポスの社員は、みな楽しそうに生き生きと仕事をしていました。そこには、監視とは真逆の「社員の自由度」が保障されており、それゆえに意識の高い仕事をする人が多いようです。こうした職場では「IoT=見える化」のレベルをどんどん上げていくことができるので、情報の共有と透明度の高い経営が可能になります。


AIに"愛"はない

IoTはAIと親和性が高く、AI(分析)×IoT(ビッグデータ)の掛け合わせで活用されることが多くなるでしょう。ビッグデータから統計的意味を見出していくのがAIの仕事です。AIとの連動で最適化が図られ、人手に頼らない分野がどんどん増えていくでしょう。ただし、AIはあくまでも膨大な情報を機械的に分析処理して最適解を導き出すもの。人間の脳の仕組みとは異なります。人間にとって情報処理は生きていくための手段(善悪や好悪の判断)ですが、機械にはその必要性はありません。「記憶」も、人間にとっては「Memory」ですが、機械にとっては「Recorder」にすぎません。(※コンピュータの記憶装置を「レコーダー」と呼ばずに「メモリー」と呼ばせたのは、開発者のロマンといってよいでしょう)

つまり、データのすべてをオープンにして、AIが導き出す最適解が人間の生活に本当に「最適」かどうかは、分からないところでもあります。こうしたところも、見える世界が変わることで代わっていく価値観のひとつになるかもしれませんが・・・。


物流におけるIoTの進化は、情報のオープン化が鍵

物流業界におけるIoTは、「次の工程をよりよくするため」に活用すること、次の工程のために事前に何をやっておけばいいかを、誰もが判断できる情報共有体制ができることが理想です。ECを例にとれば、受注段階で倉庫からどのくらいの時間で出荷できるか、情報を配送会社と共有できれば、ドライバーは適切な時間に集荷できます。無駄な出荷待ち時間がなくせるだけでなく、積載スペースに適切な量を積むこともできるようになるでしょう。物流業界にはびこる「ムダ、ムラ、ムリ」を解消するために、IoTの活用は有効です。

しかし、今の日本で情報をオープンにするには、個人情報保護法に代表される法律や規制による大きな壁があります。大本(おおもと)の同じ情報に物流工程の誰もがアクセスできて、共有・活用できれば、もっと早く、正確にモノが動き、生活は便利になります。技術的にはもうできていますが、実現を阻むのも人間。IoTは何もかもをはっきり映し出します。言葉では伝えられないものも、映し出して伝える力があります。IoTで見えてくる世界が変わることで、価値観が変わることは十分考えられます。これに人間が不安を感じるのも、また事実なのです。しかし、洗濯機は主婦仕事の軽減を目的として開発されたが、今は「清潔」を目的に利用されています。かように人間とは超ご都合主義なものです。心配をあおるのがマスコミの仕事であることは変わらないようです。

情報をみんなが早く正確に共有できることで、新たな価値を生みだすことができる・・・。ロジザードは、そう考えます。第1回でお伝えした「宅配天気予報サービス」構想も、それを実現するためのアイディアのひとつです。情報共有から価値が生まれるサービスを小規模からでも提供していくことで、少しでも規制に風穴を開けて、物流クライシスの解消に貢献していきたいと考えています。

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遠藤 八郎(えんどう はちろう)

ロジザード株式会社 会長・物流ITコンサルタント

1979年 創歩人コミュニケーションズ(ロジザードの前身)を設立。自動倉庫システムや無人搬送システムなどの物流情報システムの開発に長年携わり、日本で初めてWMSをASPで提供。常に最先端のIT化手法で、物流情報システムの革新に取り組む。著書に『物流現場のITセンス』(水曜社)、『物流ハンドブック』(共著 日本ロジスティクスシステム協会)、『物流効率化大辞典』(共著 産業調査会)、『すぐできる商品管理・物流管理』(共著 日刊工業B&Tブックス)。物流紙での連載、寄稿、および講演多数。

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