COLUMNロジザードオリジナル EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。

2019/06/04 システム倉庫再配達

物流におけるIoTを考えるVol.1 ~輸配送におけるIoT~

1_1_1_35236603.jpg 倉庫や配送センターなどで行われる商品や荷物の整理・検品・仕分け・出荷準備から配送に至るまで、過去、物流業界はその業務の多くを人海戦術でこなしていました。勿論、フォークリフト、トラック、船、飛行機など搬送処理の機械化は大きな進化がありましたが、伝票や台帳など情報処理は手書きが中心でした。IT化による業務効率化とは、やや距離を置く傾向にあった物流業界が、今、大きく変わろうとしています。EC進化に代表されるようにモノに要求されるスピードが格段に速くなり、物流量も年々増加しています。この状況に、人の手では対応が追い付かなくなったこと、働き手が減少していること、ITが進化し導入しやすくなったことなど、さまざまな要因から物流現場へのIT導入が急速に進んでいるのです。ロジザードコラムでは、物流の仕組みそのものを変える可能性が高い「物流におけるIoT」について、3回シリーズで考えてみたいと思います。初回のテーマは「輸配送」とIoT、その現状と課題です。

物流におけるIoTとは?

IoT(Internet of Things)とは、物(モノ)のインターネット化のこと。従来のモノのデータ管理は、人手の介在が不可欠でした。また、モノの状態や場所などをリアルタイムに逐一情報収集するには人手が掛かり過ぎるために不可能でした。しかし、半導体やデバイスの進化により、物品(モノ)そのものをインターネット(コンピュータと通信回線の集合)に直接つなげるIoTが登場。人手の介在なしにモノの情報がネット上のサーバに収集され「見える化」されるようになり、さまざまな分野での活用が始まっています。

物流においては、商品の追跡や商品管理でのIoT活用が注目されています。輸配送中の商品(荷物)の位置情報や、倉庫内での商品の動きを確認、管理するための活用法です。すでに配送トラックのドライブレコーダーや荷物に付けられたタグにより、トラック単位、梱包単位での運行管理システムが導入されており、輸配送分野ではIoTによる管理が進んでいます。


動体管理のIoT化は進んでいる

トラックやドライバー単位での位置情報をリアルタイムに確認できることは、単に荷物の追跡を可能にするだけにとどまりません。車両の位置情報、車の状況、渋滞や通行止めなどの道路状況や、ドライバーの動きがリアルタイムで分かりますから、管理センターが後続車に渋滞回避や迂回路を指示するなどのコントロールが可能です。車両位置情報とドライバーの動きから導かれる輸配送管理システムは、東日本大震災時にも、物資の配送ルートの最適化に大いに威力を発揮しました。

こうした機能にAIが加わり、配車システムがより進化すれば、IoTデータを元に最適な配車を自動化することも可能です。システム化により輸送コストや道路状況を見越した最適な配送計画が提示され、トラックやドライバーが効率よく手配できるようになり、無理のない運行での物流効率が格段に向上するでしょう。また、ドライバーの健康状態も把握できるので、必要に応じてアラートを出して事故を未然に防ぐなどの策を講じることもできます。

しかし、車両であれば千レベルの単位も、モノとなれば万単位になりますから、IoTのレベルが変わります。Googleなどが実践しているように、人が持つスマホのGPSを通じて、行動エリアや属性の分布など、さまざまな人間情報が得られるようになりましたが、貨物はまだそういう状況にはありません。ただ、個体別の動きは追えないものの、ケースやパレット単位では追跡できるようになってきています。荷物も、スマホの位置情報のごとくリアルタイムで追いかけていけるようになれば、さらに効率向上のための施策が生まれてくるでしょう。


注文時に配送エリアが確定するAmazon

こうした中で注目したいのが、EC物流における配送情報(出荷サイズ、重量、個数)の即時共有です。例えばAmazonでは受注のタイミングで配送の手配が即時に完了します。Amazonのシステムが、ユーザーからの注文を受け付けると同時に、その荷物はどの配送センターからどちらの方面へ配送するか、配送トラックまでシームレスに受注データをつなげる仕組みができているのです。

一方、楽天など他のショッピングモールの場合はどうでしょうか? まず個別の店舗で受注データの確認・取り込みがあるまでに、タイムラグがあります。受注データの取り込みからすぐに配送手配が完了できればよいのですが、注文情報が確定するまでには、銀行振込や備考欄の確認などクリーンにならない情報の処理で、またタイムラグが発生します。当社が扱うロジザードZEROなどのWMSに情報が流れてくるのはそれから後。そこからようやく配送へのプロセスが始まり、配送業者が荷物の量を把握するのは、集荷のタイミングです。Amazonに比べて時間のロスは大きいといえるでしょう。結果、非常にタイトな時間の中で、配送業者は車やドライバーを調達、調整しなければならなくなります。受注から配送手配までの間に、「受注の壁」と「倉庫の壁」の2つの壁を乗り越える必要があり、これが非効率を生んでいます。


宅配天気予報サービス構想

情報は早さ、鮮度が命です。特にECは受注段階から配送先などの情報が電子データ化されているのですから、店舗、モール、倉庫、配送業者がその情報を共有できればAmazonのような仕組みはできそうですが、実際に共有するとなると障害や制約が多くなかなかそうはいきません。社会的な利益を考えれば、物流はみんなで協力しようという意識が必要ですが、立場の違うさまざまなプレイヤーが多数存在していることから、全体最適を考えにくい構造になっているのです。

せめて、受注からそれほど時間のロスなく配送エリア情報を配送会社に提供できたらいいのに・・・。そこで今ロジザードが検討しているのが「宅配天気予報サービス」構想です。ロジザードZEROはクローズドな環境で受注、出庫情報を持っています。荷主様の許可を得られるのであれば、ロジザード側で受注データを入手するタイミングで、提携配送会社に限って、配送先情報を「予報」として提供できる仕組みを構築できないかと、考えています。

ECの受注段階からとはいいません。小規模でも上流の情報を即時に配送会社と共有することで、物流にかかわるプレイヤーが情報を共有する有効性を認識できる例をひとつ作ればいい。それが「宅配天気予報サービス」構想です。配送側は、少しでも早いタイミングで配送エリア情報を得られれば、リードタイムの短縮につながります。早めに手配できれば時間的、物理的ロスが減らせますから、配送費の軽減など荷主様へのサービス向上も可能となるはずです。現在、大手配送会社の手が回らなくなっているエリアでは、地域(エリア)別配送協同組合のような団体ができています。こうした新たな配送サービスに情報を提供できれば、ラストワンマイルの課題や荷待ち時間のロスの解消も、夢ではなくなるのではないかと考えているのです。


情報開示は重要、立ちはだかる壁にどう対処するか

物流におけるIoT化とはすなわち、万単位の詳細な位置情報を業務の効率化に活かすこと。これは物流データをどこまでオープンにできるかにかかっています。輸配送ではすでにIoT化が進んでいると述べましたが、現実としてトラックやドライバー不足に泣いています。しかし、俯瞰して見ると、決してトラックの台数やドライバーが足りないわけではありません。荷待ち時間のロスや、積載量10tのトラックに半分の5tしか積んでいないなど、要するに「ムリ・ムラ・ムダ」がいまだに多いのが物流現場の実情です。

積載情報もオープンになれば、空いているトラックに積み込めます。そうすれば、効率的に倉庫から荷物が出ていくことになり、空いたスペースに別の荷物を受け入れられるようになります。物流の起点は倉庫です。モノの出発点である倉庫から荷物情報がオープン化できるだけで、物流効率は格段に向上するはずです。

宅配天気予報といった小さな規模からでも、情報共有による「目に見えるメリット」を世の中に提示し、情報共有の重要性を各プレイヤーたちが肌感覚で分かるようになれば、物流クライシスと呼ばれる危機的な状況が変わるかもしれません。物流におけるIoTは、こうした使い方をしてこそ効果が出ると思うのです。

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遠藤 八郎(えんどう はちろう)

ロジザード株式会社 会長・物流ITコンサルタント

1979年 創歩人コミュニケーションズ(ロジザードの前身)を設立。自動倉庫システムや無人搬送システムなどの物流情報システムの開発に長年携わり、日本で初めてWMSをASPで提供。常に最先端のIT化手法で、物流情報システムの革新に取り組む。著書に『物流現場のITセンス』(水曜社)、『物流ハンドブック』(共著 日本ロジスティクスシステム協会)、『物流効率化大辞典』(共著 産業調査会)、『すぐできる商品管理・物流管理』(共著 日刊工業B&Tブックス)。物流紙での連載、寄稿、および講演多数。