COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2024/04/24 EC・通販事業者オムニチャネルシステム在庫管理運輸業・倉庫業(3PL事業者)

「通販物流」の呼び方はもう古い?【2024年最新版】通販・物流の効率化の第一歩、今からできるシステム化の準備

「通販物流」はもう古い?WMS視点の通販、自社物流と3PLの変化

EC化率が伸びて出荷件数が増え、倉庫の効率化や在庫の保管、物流が改めて見直されています。国内でEコマースが始まったとされる1996年より約20年、通販業界の成長とともに物流でも様々なトレンドを経てきました。そこでロジザードがWMS(倉庫在庫管理システム)の提供を通じて歩んできた通販や物流の歴史を振り返るとともに、現在の傾向を考察します。

WMS視点の通販、自社物流と3PLの変化

WMSが注目されるまで

1900年代から2000年はそもそもEコマースの形が出来上がっていない、商流(販売や受注)や物流に関して皆が試行錯誤をしてどうにか業務を運営していました。この頃はほとんどのネットショップさんが自社で物流業務をしていましたが、そもそも個人への販売・発送業務は非常に手間暇がかかる業務で、受注件数が増えるほどバックヤード業務の負荷が高くなり事業拡大の足かせになっていました。

ロジザードは2001年の設立当初からクラウドWMS(倉庫在庫管理システム)「ロジザードPlus」を開発・提供しています。当初はアパレル物流向けに開始したサービスでしたが、多くの引き合いを頂いたのは、この時代にインターネットでモノを売り、軌道にも乗っていた通販黎明期の事業者様です。「クラウド」という言葉がまだない時代、サーバを持たずにオンラインで操作する珍しいシステムでしたが、現場が困っていて早急な改善をする必要性も相まって、「すぐに使えるから」という理由でご採用いただきました。

まだ自社物流が圧倒的に多かった中、ノンアセット型3PL(倉庫を借りて物流の軽作業を請け負う)を耳にするようになりました。「3PL」(サードパーティロジスティクス)という、呼び名を一般に聞き始めた頃だと思います。

2005年頃までは多くのネットショップさんの事業開始、拡大の成長期であり、モール型ECサイトで売上上位となるネットショップさんからのお問い合わせが多かったのもこの時期です。

今まではエクセルや販売管理システムで何とか実在庫の管理をしてきたネットショップさんが、「商品をバーコードで管理、無線のHT(ハンディターミナル)を使った商品管理がすごい!」と。自社物流でアナログ管理してきたネットショップさんにも、WMS(倉庫在庫管理システム)が受け入れられ始めました。「もっとWMS(倉庫在庫管理システム)を知っていただきたい」という思いで用意したショールームでの商談が、連日のように続きました。

当社サービスの導入現場数が拡大したのもちょうどこのネットショップさんの事業拡大のタイミングでした。併せて、ネットショップさんの中で、宅配サービスの提供で接点の多い運送会社様をきっかけに、自社の代わりに出荷業務すべてをアウトソーシングする、いわゆる「出荷代行」のニーズが表出し始めたのもこの頃でした。

通販専用3PLの出現とアウトソーシングの浸透

もともとDM(ダイレクトメール)の発送代行や、軽作業請負、コールセンターを事業としていた会社が、Eコマースの出荷代行の需要を感じて3PLを開始するケースが目立ち始めました。通販専用の3PLという会社も出てきました。

ロジザードも引き合いをいただく商談の9割がEコマースという状態。カスタマイズを続けていては限界になると判断し、営業を3カ月間止めて2007年にはBtoB・Eコマース統合型のWMS(倉庫在庫管理システム)をリリースしました。

2008年頃に大手運送会社同士の価格競争もあり、出荷件数が多いネットショップさんをとにかく獲得したい、という現象が起きました。ワンコイン物流が出現したのはこの頃です。商品の入荷・保管・出荷作業、送料も込みで500円、と送料が値上がりし続ける現在では考えられない価格でした。

当時は物流業務を委託できるのは出荷規模が大きい大手通販事業者だけ、「月2000件発送しないとアウトソースには向かない」という認識が持たれていましたが、この認識が薄まってきていることを感じました。

これまで3PLの受託案件の条件では「小さい荷主は仕事にならない」という常識がありました。しかし、複数の荷主をまとめて受託すると、大きい荷主1つを請け負うのと同じ現場ができあがり、さらに大口の特定荷主に依存しない商売となるため、物流事業の運営リスクが分散される、ということに感度の高い3PL企業は気づき始めます。

さらに出荷件数が多い荷主を獲得している3PLは、宅配会社と交渉して安価な送料で提案できるようになり、「自社物流よりコストも抑えられる3PLに出荷代行し、荷主企業はEコマース本業に集中すべきだ」という趣旨の提案が目立ちました。

受注管理システムとWMS(倉庫在庫管理システム)は競合ではなく、連携するもの

さて、いよいよEC業界が盛んになり、複数のECサイトを運営するネットショップさんが増えてきました。ここで競合として良く名前を聞くようになったのが、受注管理システムでした。受注管理システムでもピッキングリストが出力できたりハンディーターミナルもカスタマイズして使えるようにしたり、と商流だけでなく一部の物流管理ができる仕組みが提供されてきました。

もともと受注管理システムは、複数のECサイトの受注情報を一元管理するために作られましたが、楽天・Yahoo・ビッダーズ(現Wowma!)といった複数のモール型ECサイトへの在庫数量の反映ができる「在庫管理機能」を提供するようになりました。今でもネットショップさんは「在庫管理」と聞くと受注管理システムの在庫管理機能を思い浮かべる方が多いと思いますが、当時はまさにこの「サイト更新の在庫管理」と「現物管理の在庫管理」の意味の違いがはっきりせず、WMS(倉庫在庫管理システム)は受注管理システムと競合と思われてしまっていました。

幾度と打ち合わせを繰り返し、受注管理はECサイト専用の販売管理システムであり、現物在庫を管理する仕組みではない、決して受注管理システムとWMS(倉庫在庫管理システム)とは競合しない、お互いが協業できることがわかりました。

このタイミングから「受注管理システムとWMS(倉庫在庫管理システム)は連携するもの」という認識が生まれて当社サービスでも連携可能な受注管理システムが一気に増えました。同時に「クラウド」も一般化、クラウドにデータを蓄積することに抵抗をもつ企業も少なくなってきました。WMS(倉庫在庫管理システム)もクラウド型が複数出現し、価格面でも導入のハードルがぐっと下がりました。

小売業の多様化に伴う3PLの変化

2012年頃より、通販事業者の2極化が目立つようになりました。売上が伸びて商品開発や設備に投資をする積極的な通販事業者と、仕入れ販売が主体で事業が伸び悩んでEC事業から撤退を余儀なくされる状態になってしまうか、です。

この頃は廃業する通販事業者も増えていました。ドロップシッピング(受注後に仕入れる販売形態)などで商品アイテムを増やしていた総合通販がコモディティ化したのだと思います。「出せば売れた」の時代はもう終わっていたんですね。そこで芽を出してきたのが単品通販です。商品の特徴を前面に押し出して、他では買えない、オリジナリティのある特別な商品が目立ちました。

2014年頃には通販専用の3PLが更に周辺業務への受託を強化し、入出荷業務だけでなく、受注処理や顧客対応、コールセンターを持つフルフィルメント型のアウトソーシングが注目されはじめました。

大手メーカーは、Eコマース事業の立ち上げが経営課題となるものの、ノウハウがないために、物流だけでなく販売から物流まで一貫してEコマース事業をまるごと外部企業にアウトソースして、EC化に対応したい、という傾向が強かったと思われます。

この頃はまだまだEコマースという販売チャネルが事業としてはあまりに小規模で、卸事業や店舗事業に影響を与えるまでには至っていなかったのでしょう。(これがのちに内製化されていきます。)

EC化率伸長にともなう販売チャネルの変化

2015年頃からEコマース事業を強化したい大手企業が、ネットショップ企業を買収したり、通販事業部のない企業が通販事業部を設け始めたり、とメーカーが直販に注力し始めていました。

反対にこれまでのネットショップ企業の多くはモール出店だけでは成長ができなくなったため、自社企画商品(PB)を作り販売する、「企画製造業」に事業シフトする試みが目立ち始めました。

このタイミングからリアルとEコマースの垣根がなくなってくる、「オムニチャネル」時代に入ります。一方で、単品通販市場では、大学教授やタレントとのコラボ企画で商品開発をするスタイルで数多くの単品通販小規模企業が成長し、通販専用の次は単品通販専用の3PLが現れてきました。

「宅配クライシス」と人手不足への対策

2017年はまだ記憶に新しい宅配クライシスが起こりました。物流業界の慢性的な人材難に加え、皆さんの記憶に新しいヤマト運輸さんの宅配運賃の値上げにより、運送会社全体が配送料金を見直す機運が強まりました。

連日のニュースで送料の値上げや運送会社、その下請け企業の経営状況や労働環境の問題が報道され、「物流」への注目が日に日に高まります。

また運送だけでなく、倉庫現場でも、オムニチャネルなどの小売りの多様化により、これまでの常識での物流運営にほころびが出始めてきました。人手不足は将来に渡り解消しないということが倉庫業界でも肌感覚で浸透し、人的作業に代わるロボットの需要も上がり、新しい物流ロボットも次々と開発されています。

「通販物流」はもう古い?

最近、通販案件をメインとしていた3PL企業の責任者様のお話を聞く機会がありました。共通していたのは通販のみの案件がほとんどなくなってきた、ということです。大手アパレルメーカーを中心に、ECという販売チャネルを見直すフェーズに入ったと言えます。

オムニチャネルに成功する企業が増え、EC事業とリアル事業の在庫を分けて管理・保管していることが事業全体の効率を下げ、販売機会を逃すリスクが増大してしまう、と。

この動きは規模の大小を問わずに起こっています。特にメーカーでは店舗とEコマースの両方を事業としていることが当たり前、成長している企業ではECファーストの考えが定着しつつあります。

これまで卸事業や店舗事業では正確に顧客データを保持していない、もしくは活用できてない企業がほとんどでした。しかし話題にあがるような成功している小売企業の多くは顧客データを収集、分析しこれをもとに事業運営をしており、この事業スタイルが当たり前のトレンドになったためでもあると考えます。自社ECサイトを持っていない、ということは顧客情報を収集分析できていないので苦戦を強いられています。

また、ポイント経済圏も影響しています。今までは店舗が各々発行していたポイントカードでしたが、そのポイントカードがどこの店舗でも利用でき、オンラインで購入した際も適応される、という顧客目線のサービスが始まりました。オムニチャネルもここから入ったとされています。顧客情報の一元化、分析、そして後から物流が対応してきています。

エンドユーザーの好きな場所(店舗・宅配ロッカー・自宅など)、好きなタイミングに欠品なく商品を受け取るには在庫管理の一元化が必要不可欠、ということがわかりました。そのため、今までは EC用、卸用、店舗用、など同じ商品なのに販売チャネルごとに分けていた倉庫を1つの倉庫に集約する動きが強まり、「通販物流」とくくることがナンセンスになってきました。

多くの販売チャネルの一つの形がEコマースであるということが物流現場でも常識になりつつあります。

物流の効率化、第一歩は商品の識別化

私が過去のセミナー登壇から申し上げているのは「まずは商品のソースマーキング」です。物流の基本は在庫管理ですが、その在庫管理を始めるには商品をマスタ化することは最低限の前提として現物そのものに機械が読み込めるように識別化すること、それが全ての効率化の第一歩となります。具体的には商品1つ1つにバーコードやQRコード、もっと進むならRFIDなどを付け正確な単品管理ができる素地をつくることです。

そしてそのデータを管理し、必要な順番で順々にシステムを導入していくことが大事です。AI、ロボットを検討する企業様でも商品マスタが弱いことがあることに驚かされます。商品にバーコードすらついていない。この状況ですと業務管理システム、WMS(倉庫管理システム)も入れられません。手順やシステム、ロボットの導入の順番を間違えると効率化はできない、働かないのです。これは自社物流、3PLに共通しています。

ただ、その前に優先すべきことは、誰がお客様で何を提供するのか、どのぐらいの規模の商売にするのか事業の方向性を明確にすることです。商売を拡大させるグランドデザインを明確にして商流から物流を設計していく。拡大させる予定がないのに物流を設計することはナンセンスです。

時代の変化とともに、事業の成長とともに業務は変わります。そのため、業務内容、フローに依存するシステムは持つより利用することをおすすめします。なぜなら事業のステージごとに必要になる機能や要件・処理する物量・データ量が異なるからなのです。小規模企業にいきなりロボットを導入しても効果は限定的と言わざるを得ません。

また、物量が増えたときに検討する、では間に合わないので少し早めの対応も必要です。以前はすぐに物流移転ができたのですが、最近では人手が集められない3PLも多く、委託先が見つからない場合がでてくるかもしれません。

倉庫や物流現場、物流ロボットを含めてシェアリングが行われていくでしょうが何をするにも、商品の識別化が第一歩です。そして業務内容・事業規模に合わせて、必要なシステムを必要なタイミング、順番で導入するとその先のオートメーション化にもつながり、物流の効率化が叶います。

ロジザード株式会社 執行役員 営業部長 亀田尚克

亀田尚克(かめだなおよし)

ロジザード株式会社 執行役員 営業部長

繊維商社、大手システム会社勤務を経た後、在庫管理分野のASPという事業スタイルに魅力を感じ2006年ロジザード株式会社入社。通販物流を中心として物流現場への訪問数はゆうに2,000に達する。徹底した現場主義によりサービス会社としてのロジザードのスタイルを確立する。在庫管理システムをもっと世の中に普及させたいという情熱のもと思索と行動の日々を送る。