COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

倉庫現場の業務効率化を進める手段として、物流業界で機運が高まっている「物流デジタルトランスフォーメーション(DX)」。データやデジタル技術の活用により、業務の変革を実現する取り組みを指すDX。
しかし、倉庫に足を運んでみると、とてもデジタルによる革新的な業務改善が進んでいるようには感じない―。それが現実ではないでしょうか。よく耳にする、「物流DXがなかなか進まない」との声。今回は、筆者が物流倉庫の現場を取材する中で見聞きしてきた事例や生の声をもとに、「現場と経営の『温度差』」について考察します。
近畿地方の大都市郊外にある物流倉庫。大手の物流倉庫企業から独立した経営者が、従業員30人ほどの倉庫を引き継ぐ形で運営してきました。食品系の商品が多く、地域の小型スーパーマーケットなどへの商材を多く取り扱っています。
この倉庫に携わって間もなく30年になる経営者が、ここ10年間の課題として強く認識しているのが、現場業務の旧態依然とした運営方式からの脱却です。今でも在庫管理や検品は、専用の手書きのファイルを活用。表計算ソフトでデータ化してはいるものの、それを機能的にシステム化するところまでは、とても手が回りません。こうした発想のある従業員がいないからです。
この倉庫の現場を仕切っているのは、自身が経営を引き継ぐ前から幅を利かせるベテラン社員です。仕分けや在庫管理といった倉庫内のあらゆる業務は、そのベテラン社員から「無形」で伝承されてきました。まさに「背中で覚えろ」といったイメージでしょうか。そのため、荷物の量やスタイルが変わっても、データではなく「勘」で乗り切るのが、この倉庫の業務ルールになっていたのです。
経営者は7年前、ITシステムによる業務改善を従業員に提案しました。ところが、ベテラン社員を中心に、現場から強硬な反対を受けたのです。「倉庫の仕事は『勘どころ』が大切。取引先との『阿吽(あうん)の呼吸』で、急を要する案件にも対応できる。それができるのは、人間の「頭」だけだ」―。結局、経営者はシステム導入に向けた資金手当ての準備まで進めながら、やむなく断念したのです。
「倉庫業務は現場スタッフで成り立っている」。経営者は、現場の事情をより理解しているスタッフの意見を優先し、倉庫のDXの機会を遅らせたのです。その結果として、新たな課題にも直面することになりました。「新型コロナウイルス禍による、商品流通の傾向の激変です。通信販売商品の取り扱いが急増し、現場が大混乱したのです」
入出荷のタイミングから取り扱う商品の検品スタイルまで、スタッフの誰もが経験したことのない変化の連続。臨時アルバイトの登用などで、何とか乗り切りましたが、その後に残ったのは、大きな教訓でした。「この経験は、業務最適化の手段として、もはや個人の力だけでは難しいという事実を現場に突き付けたのです」(経営者)
1年前。この倉庫で初めて、先進システムの導入に向けた具体的な取り組みがスタートしたのです。7年前の失敗を反省材料に、今回は現場のベテラン社員をトップとするプロジェクトチームを設置し、導入に向けた基本的な概要をまとめていきました。
「今年は、倉庫の設立以来の大変革になりそうです。」経営者は、「ITシステム元年」に向けた準備を進める現場の動きに、物流DXの「本質」を見ているのでしょう。

前項で紹介した物流倉庫では、経営者と現場スタッフとの間に存在する「課題認識の乖離」が、ITシステム導入の可否の判断を決定づけることになりました。
ここで重要なのは、経営は意思決定機関であるのに対して、システムを実務として取り扱うのは現場であるということです。この物流倉庫の事例から、現場と経営の課題認識の違いについて、考えてみましょう。
7年前に経営者がITシステムの導入を発案したのは、アナログ要素の強い現場業務の改善、つまり「旧態依然とした運営方式からの脱却」であり、その手段としてデジタル化に踏み切ろうとしました。課題認識は「現場業務の効率化の遅れ」であり、それを改める必要があると判断したのです。
一方で、現場の反応は「倉庫の仕事は『勘どころ』が大切。取引先との『阿吽の呼吸』で、急を要する案件にも対応できる」というものでした。つまり、ITシステムよりも人間の頭脳の方が「対応力・適応力が高い」と判断したのです。
この時点で、経営者はITシステム導入を必要な施策と判断していましたが、現場は不要としたわけです。その背景には、現場の「旧態」への固執もさることながら、経営者が業務の最前線に立つ現場の「本音」を理解できていなかった可能性もあるでしょう。
経営者のITシステム提案を拒絶した要因として、現場には2つのメッセージがあったと考えられます。まずは「ITシステムよりも従来のアナログタイプの方が、業務を進めやすい(成果も出せる)」ことであり、その点は先述のように検証しました。
ここでは、もう1つのポイントについて考えます。経営者は、現場をより働きやすい環境にする手段として、ITシステムの導入を提示しました。ところが、もしも別の手段を示したとしたら、現場の意見はどうだったでしょうか。例えば、他の倉庫会社から経験者を採用するとしたら、現場のスタッフはどんな反応を見せたでしょうか。
現場が示した2つ目のメッセージ、それは「現場の思いを反映した改善案を示してほしい」という願いだったのではないでしょうか。経営者は途中で経営権を引き継いだ経緯もあり、現場の「本音」が伝わっていないのでは、との懸念が積み重なっていた可能性もあります。
現場と経営の間に生まれる、課題認識とそのアプローチのギャップ。現場のDXを実現するにあたって、こうした認識の「ずれ」を埋めることが、第一歩になるでしょう。ここでは、ギャップをなくしていくための4つのポイントについて、説明します。
まずは、「時間をかけて段階的に進めること」です。正しい取り組みであったとしても、急に現場の作業手順を変えてしまえば、スタッフは右往左往するでしょう。それは、物流DXだけでなく、他の施策でも同様です。なぜなら、こうした変革は現場業務の効率化が目的であり、それを実践するのもスタッフだからです。
経営者は、現場の効率化に向けた施策を発案する上で、素案を作成した段階で、プロジェクトメンバーにその内容を示すことが必要です。経営者が決定した案を示す前に、現場の意見を反映する時間が必要だからです。経営者の素案に、現場の実情や意向を加味することで、具体的な案が出来上がります。

経営者は、DXプロジェクトメンバーに、現場の責任者を必ず加えることが大切です。現場担当の幹部だけでなく、スタッフの業務でのやり取りや雰囲気、問題点を肌で感じて説明できるメンバーの起用は、必要なプロセスになります。特にテーマが現場の業務改善である場合は、なおさらです。
テーマ設定の幅についても、段階を踏む必要があります。現場のあらゆる領域を一気に進めるのもよいですが、まずは最も対応が必要な部分に限って、試験的に導入するのも一案でしょう。特に初めてITシステムを導入する場合は、特定の領域から進めてその検証をすることにより、全体へのシステム導入の可否を判断しやすくなるほか、より最適な投資につなげることもできます。
こうして、事前段階で時間をかけて現場の意向を確認することで、社内の理解も得やすくなるでしょう。
現場の効率化に向けた議論で、「現場と経営の視座がかみ合っていない」ケースに遭遇することは、決して少なくありません。それは、立場によって、日々の業務の目的が異なるからです。
現場は、顧客や取引先との約束事を踏まえて、納期や数量、品質などを守りながら商品を取り扱います。一方で、経営層は利潤の追求による企業の持続的な成長を果たすための戦略を策定するなど、経済合理性を重視します。日々の作業を止めずにどう効率化するかを重視する現場とは、視座が異なるのです。
むしろ、それは当然のことであり、企業の運営には必要な役割分担であるとも言えます。物流DXの推進の観点から重要なのは、こうした立場の違いを互いに理解した上で、双方が胸襟を開いて議論できる環境があることです。経営サイドと現場が、DXという共通の目標に向かって、相互に考え方を出し合いながら、理解を深めるのが得策ではないでしょうか。
そのギャップを埋めるには、共通の言語と指標を設定することが重要です。プロジェクトチームで「目的」「KPI(目標に対してどれだけ進捗しているのかを示す重要な指標)」「課題」「成果の定義」を明確に共有すれば、こうした共通のテーマに基づいた議論ができるようになり、経営判断と現場改善をつなぐ対話も生まれます。
企業の意思決定や取引先との商談、顧客分析など、物流倉庫の業界でも、さまざまな情報をデータとして可視化する、つまり「見える化」が急速に進んでいます。DXの動きが急速に活発化している目的も、こうしたデータ活用の流れがあります。
ところが、物流倉庫の世界は、多くのデータが蓄積されているものの、それらを十分に活用し、業務改善につなげる仕組みづくりは、まだ発展途上だといわれています。しかし、こうしたデータ化は、現場の業務改善を進める上でも、非常に有効です。むしろ、その取り組みが進まない現場では、意思決定が経験や勘に頼りがちになり、改善サイクルが止まってしまいます。
では、情報をデータとして可視化することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。現場における作業実績や残業時間、配送ルートなど、日々の業務データを可視化することで、数値に基づく判断が可能になります。その結果、自動化や投資の対象領域が明確になり、より効果的な改善施策を検討できるようになります。こうしたデータに沿って、先述のように段階を踏みながら、社内で現場と経営が合意形成を進めていくことで、目的に合ったDXの実現につながるのではないでしょうか。

ここまで、現場と経営の認識のギャップをなくすことによるDX実現策について考えてきました。ここからは、DX実現を促す具体策である、倉庫管理システム(WMS)を紹介します。
WMSは、在庫や業務を効率的に管理するためのシステムで、国内では50年以上の歴史があります。入荷から出荷、棚卸、ロケーション管理、帳票発行まで、あらゆる倉庫作業をデジタルで最適化できます。
物流DXが叫ばれる中で、物流倉庫にWMSを導入する企業が増えています。こうした動きを反映して、IT企業をはじめとする数多くの事業者が参入し、それぞれ自社の強みを生かしたWMSを展開するなど、市場は活況を呈しています。
WMSは、これまで説明してきた、倉庫DXの推進にあたり現場と経営とのギャップをなくす取り組みにも貢献できると考えます。ここでは、倉庫業界で高く支持されているWMSを例に、その機能を説明していきます。
新機能の搭載やサービス拡充を続け、WMS市場をリードする代表的な存在なのが、ロジザード株式会社が提供するクラウド型WMS「ロジザードZERO(ゼロ)」です。
「ロジザードZERO」は、EC(電子商取引)物流や流通小売向けBtoB(企業間取引)出荷、レンタル品管理まで多彩な業種・業態に対応できるのが強みです。標準機能をできるだけ活用した最短1カ月での運用開始も可能で、より現場にフィットさせるアドオン開発にも対応できるシステムとして、幅広く支持されています。
こうした強みは、先ほど説明した「現場と経営をつなぐ基盤としてのWMSの機能」を、より高める効果ももたらすでしょう。ここからは、「ロジザードZERO」の特徴的な機能について、物流DX推進における現場と経営のギャップをなくす効果の期待できるポイントに絞って、解説します。
「ロジザードZERO」は、クラウド型のWMSです。クラウド型は、インターネットを介して倉庫管理業務を行うシステム。システムを構築する必要がないため、比較的安価で短期間のうちに導入できるのがメリットです。機器に依存しないため、複数名での管理もしやすく、属人化しないのも強みです。
このクラウドWMSならではの特徴として、小さく始めて、その後の状況に合わせて拡張できる柔軟性があります。倉庫DXに向けたITシステム導入時の注意点として、まずは限られた機能の改善からスタートして段階的に広げていくのが得策である、と説明しました。こうした観点で、クラウド型WMSである「ロジザードZERO」は、有効な選択肢となるでしょう。
こうしたスモールスタートは、標準機能で初期投資を抑えることができるのもメリット。機能の拡充を希望する場合は、アドオン開発だけでなく他社システムと連携させることも可能です。
物流倉庫の現場におけるオペレーションは、「属人化」しがちな領域であるとされています。いわゆる職人気質の多い職場が多く、「勘」をつかみながら独自のスタイルを確立させてきた現場も少なくありません。
こうした職場でデジタル化による業務改善を進めようとする場合に、取り組まなくてはならないのが、現場オペレーションの「標準化」です。共通の基準や手順を確立することにより、製品やサービスの品質を一定に保つとともに、効率的な業務運営を実現するものです。
「ロジザードZERO」は、現場オペレーションを標準化するとともに、情報の流れを無駄なくスムーズにすることにより、データを自動で整流化することが可能です。それにより、作業のミスも減らすことができます。
最後に、リアルタイムでの即時データ化は、先進システムの導入の大きな利点と言えます。「いつ」「何を」「どれだけ」扱ったか、こうした情報は、経営の方向性を判断する上で欠かせない要素であり、それは瞬時に把握できることが望ましいからです。
在庫や倉庫内の各種作業の進行といった状況は、WMSにより数値として可視化され、そのデータは即時確認することができます。特にクラウドWMSである「ロジザードZERO」では、ブラウザ上でログインするだけでデータが確認できるため、現場と経営者が異なる場所にいても同じデータがリアルタイムで共有されます。
こうした「見える化」は、今回のコラムの最大のテーマでもある、「現場と経営をつなぐ基盤づくり」にも大きく貢献するものです。
業務負荷を把握しやすくなる現場に対して、経営は投資判断や事業方針の変更、改善領域の見定めを迅速に進めることができるようになります。

本コラムでは、物流倉庫DXの推進をよりスムーズな形で実現するためのポイントとして、現場と経営の温度差をなくして合意形成を促す大切さ、さらにはこうした動きを支援するシステムとして、「ロジザードZERO」を例にWMSの機能を説明してきました。
現場業務を変革すること、それは現場スタッフや、または経営者だけの力で実現するものではありません。物流倉庫に求められる機能は今後さらに高度化し、それに合わせて、現場の対応力だけでなく経営者による迅速な意思決定も要求されることでしょう。むしろ、こうした物流倉庫DXを、現場と経営の間のより良い関係について再定義する機会と位置付けることで、最適な変革を実現できるのではないでしょうか。
この記事のライター
Shima N.
一般紙をはじめ各種メディアで取材・執筆活動に従事。
企業の広報・IR担当の経験も踏まえて、産業界の多様な領域に人脈を持つ。
運輸・物流領域に強みあり。