COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2025/12/12 DXEC・通販事業者システム在庫管理

伸びているECがWMSでリアルタイム在庫管理を実現する理由

伸びているECがWMSでリアルタイム在庫管理を実現する理由

EC市場は飽和した、と言われることが増えていますが、実態は伸びているECと伸び悩むECの"二極化"が進んでいます。この差は、単なるマーケティングやブランド力ではなく、在庫管理がリアルタイムで行われているかどうかも影響しているのではないでしょうか。

  • 伸びているEC:在庫管理の精度が高く、販売機会損失が非常に少ない
  • 伸び悩むEC:欠品・売り越し・返品トラブルが多く、広告費が損失に直結する

本コラムでは、今まさに成長しているECが実践している「リアルタイム在庫管理」の背景とメリットを、WMSの観点から解説します。

成長している企業は在庫精度を武器にしている

EC市場が成長しているジャンルは、D2C(化粧品・健康食品・美容)、ファンビジネス型ブランド、SNS主導型商材などです。
これらの成長企業の共通点は明確です。

  • SKUが多い:定番商品に加えて、限定品・セット品・カラー・サイズ展開が増える。
  • 規格変更が多い:新商品・改良品・キャンペーン品が頻繁に出る。
  • 需要の波動が大きい:広告配信、インフルエンサー露出で売上が急変動。

つまり在庫管理の難易度が非常に高いビジネスです。

この環境でWMSを導入していない、在庫情報がリアルタイム更新になっていない(半日遅れ・翌日反映)場合、

  • 欠品が連発
  • 売り越しでキャンセル対応
  • 返品増加
  • CS工数増
  • 広告費の浪費
  • 在庫回転率悪化

など、事業全体に悪影響が及びます。
成長しているEC企業は、ここにいち早く気づき「データの遅延=売上の遅延」と捉えて、在庫情報のリアルタイム更新に舵を切っています。


ECがリアルタイム在庫を求める3つの理由

EC事業は、商品企画変更のスピード、広告・SNSによる急激な売上波動、そして返品の増加など、在庫を取り巻く変動要因が年々増えています。その中で「リアルタイムで在庫を把握できるかどうか」が、売上にもコストにも直結するようになりました。
ここでは、EC企業がリアルタイム在庫を求める3つの理由をご説明します。


①SNS・広告による売上変動が速すぎる

ECの売上はSNSや広告施策の影響を強く受けるため、商品が"一気に売れる"状況が起こります。
このとき在庫管理がリアルタイムに行われていないと、

  • 実際は欠品しているのに販売されてしまう
  • 逆に在庫があるのに売り止めにしてしまう
  • 広告のオン/オフ判断が遅れて機会損失が出る

といったトラブルが起こります。
「データの更新速度=売上を守るスピード」と言えるほど、リアルタイム性が重要になっています。


②マルチチャネル化で在庫が分断されやすい

成長するECほど、販売チャネルや物流拠点が増えていきます。

  • 自社EC
  • Amazon・楽天
  • 卸(BtoB)
  • 実店舗
  • 出荷倉庫や返品倉庫などの複数物流拠点(外部委託含む)

チャネルが増えること自体はチャンスですが、課題は在庫が分断されやすいことです。そしてこの"分断"には、現場で見落とされがちな盲点があります。

  • 各チャネルが「予備在庫」を抱えてしまう
    欠品を避けるためにチャネルごとに予備在庫を残し、全体では余っているのに一部チャネルだけ欠品する、一部チャネルで売れていたのに他チャネルの予備在庫が不動在庫化してしまう、ということが起きます。
  • リアルタイム更新でないと、分断そのものに気づけない
    「連携しているつもりでも、反映は翌日」「返品は週次更新」など、在庫が最新でないと、分断の実態が見えません。

WMSは、この"分断リスク"を一元管理で解消できます。基幹システムで各チャネルの理論在庫の管理ができていれば、WMSは倉庫の在庫情報・返品・引当状況を1つのシステムでリアルタイムに統合管理できます。

これにより、

  • 予備在庫を最小化
  • 不動在庫の可視化
  • 販売可能在庫の最大化

といった、成長ECが避けたい課題を効率よく解消できます。


②返品・交換による在庫変動が増えている

アパレル・コスメ・食品などは返品率が高く、返品の扱いが在庫の鮮度に直結します。
リアルタイム化されていない場合、

  • 返品が戻っても在庫復活が遅れる
  • 再販できる在庫が売り場に出てこない
  • 不良品比率や返品理由の分析も遅くなる

などの問題が起こり、機会損失につながります。

一方、WMSによるリアルタイム管理であれば、

  • 返品品到着 → 即検品 → 再販可否 → 販売可能数に反映
  • 返品循環が早くなりキャッシュフローが改善
  • 返品要因がデータで蓄積され改善に使える

といったメリットが得られます。


WMSによるリアルタイム在庫更新の仕組み

WMSは、倉庫内のあらゆる作業と在庫データをリアルタイムに結びつける仕組みを持っています。
これにより、人の判断やタイムラグに依存しない"正しい在庫"が常に動き続ける状態を作ることができます。

入荷(検品)

入荷した商品を検品し、バーコードをスキャンした瞬間、その数量が即時に販売可能在庫として反映されます。

  • 「いつ入荷したんだろう?」と倉庫に確認する手間が消える
  • マーケ担当がリアル在庫を見て広告のON/OFF判断ができる
  • 在庫反映待ちで販売開始が遅れることがなくなる

入荷情報がリアルで共有されるだけで、販売計画の精度とスピードが大きく変わります。


棚入れ(ロケーション登録)

検品した商品を棚に入れる際、ロケーション(棚番号)をスキャンすると同時に「「どの棚に、何が、いくつあるか」がシステム上で確認できるようになります。
これにより、

  • ピッキングの迷いがなくなる
  • 倉庫内での"探す時間"がゼロに近づく
  • ロケーション間違いによる在庫差異が激減する

など、倉庫効率が大幅に向上します。


出荷(引当 → ピッキング → 出荷検品)

【1】 受注データのインポート

ECの受注データをWMSに取り込むと、"引当"がかかり、在庫が引かれます。
これにより、

  • 売り越し(在庫以上に売れてしまうリスク)を防止
  • モール間の販売可能数の整合性が取れる
  • 「売れてから在庫が減る」ではなく「受注時点で確保」できる

という大きなメリットが得られます。

【2】 ピッキング → 検品

ピッキング作業でもバーコードをスキャンするため、正しい商品・正しい数量かのチェックが入ります。
さらに出荷検品が確定すると在庫数が確定されます。
これにより、

  • 販売可能数が常に正確
  • 他チャネルでの売り越し防止
  • 在庫の"タイムラグ"によるトラブルをゼロ化

が実現します。


返品(静脈物流・リバースロジスティクス)

返品品が倉庫に戻ってきたら、検品を経て販売可能と判断されたものはその場で在庫に反映できます。
これによって、

  • 返品品が"倉庫の隅で眠る"状態を防止
  • 再販可能な商品がすぐ売り場に戻る
  • キャッシュフローが改善
  • 返品理由のデータ蓄積にもつながる

など、EC特有の返品課題を大幅に軽減できます。


WMSのポイントは「誰が・いつ・何を・どれだけ動かしたか」が全自動で記録されることです。作業者のスキャン行動がすべて履歴として残り、在庫の増減・移動・引当のタイミングが"人の記憶ではなくデータ"によって管理されます。
結果として、

  • 入荷遅延も
  • 数量差異も
  • ロケーション間違いも
  • 販売可能数のズレも

すべてデータで可視化され、改善が可能になります。
実際、リアルタイム運用が定着した倉庫では、在庫精度が98〜99%以上まで向上するケースも珍しくありません。
これこそが、伸びているEC企業がWMSを活用して在庫を"武器"にしている理由です。


伸びているEC企業が実践する"在庫を売上に変える"方法

リアルタイム在庫管理は、単に在庫精度を高めるための仕組みではありません。
伸びているEC企業はこの仕組みを "売上最大化のための運営戦略" として活用しています。
ここでは、その代表的な方法を簡潔にまとめます。

① 全チャネルで在庫を共有し、売れるところに売る

伸びるECは、チャネルごとに在庫を分けず 共有在庫(全体最適)を採用します。

  • 自社EC
  • モールEC
  • BtoB卸
  • 実店舗

これらをひとつの在庫として扱うことで、

  • 不動在庫の発生を抑える
  • 販売機会を最大化する
  • 広告・販促に合わせて在庫を柔軟に動かせる

といったメリットが得られます。


② SKU追加・企画変更に"すぐ対応"できる

伸びているECはSKUの入れ替わりが早く、新商品の追加・セット組み・限定品などの変更も頻繁です。
WMSを活用する企業は、

  • SKU登録
  • 在庫登録
  • ロケーション設定

これらの作業をシステムで処理できるため、商品の鮮度を保った状態で販売できます。


③ 返品を"売れる在庫"にいち早く戻す

返品率の高いEC(アパレル・コスメなど)では、返品品の扱いが売上に直結します。
リアルタイム管理なら、返品到着 → 検品 → 再販可 → 在庫復活までをすぐに実行できるため、

  • 再販可能商品のロス削減
  • 販売機会の回復
  • キャッシュフロー改善

が実現します。


④ 広告・販促施策と在庫を連動させる

在庫情報が正確であれば、広告運用者は

  • 在庫増 → 広告強化
  • 在庫減 → 広告調整
  • チャネル別の在庫状況に応じた販促最適化

といった運用判断をスピーディに行えます。
在庫データがリアルであることは、広告効率を最大化する土台になります。


⑤ 在庫回転率を高め、資金効率を改善する

リアルタイム在庫管理により、

  • 予備在庫の削減
  • 不動在庫の発見
  • 回転率の悪いSKUの把握
  • 適正在庫の維持

が可能になり、PL(損益分岐点)改善&キャッシュフロー改善につながります。


WMSを導入する際の注意点

リアルタイム在庫管理は強力ですが、WMSを導入すれば自動的にうまく回るわけではありません。
WMSは業務を支える、効率化させるための一つのツールのため、特徴を理解しつつ現場での活用をイメージする必要があります。
ここでは、特に押さえておきたい注意点をまとめます。


① 倉庫内の"無線環境"は想像以上に重要

オンラインでスキャンデータを飛ばすため、倉庫内の Wi-Fi・LTE の安定性は命綱です。

  • 倉庫端まで電波が弱い
  • ピッキング中に通信が途切れる
  • 棚卸時のスキャンが反映されない

こうした状況だとリアルタイムの意義が半減します。 WMSベンダーの支援の中に「電波チェック」があれば依頼しましょう。伸びているECほど最初にここを整えています。


② 端末(ハンディ/スマホ)とオペレーションの相性

リアルタイム更新は、現場が「スキャン → 作業」で動く前提で成立します。
そのため、

  • 端末が重すぎる
  • 読み取り精度が低い・遅い
  • 画面遷移が複雑
  • (取り扱い商材が冷凍品の場合)冷凍庫で動かない

などがあると、現場に負担が出て運用が回りません。ECの物量と作業頻度に合う端末選択がカギです。


③ ピーク日の作業量をシミュレーションしておく

リアルタイム更新は、物量の多いときこそ真価を発揮します。
しかし、以下を想定していない倉庫やWMSでは出荷業務が失速しがちです。

  • 年間最大ピーク(セール・福袋・イベント)
  • 用途別の集荷締め時間
  • モール別の出荷要件
  • 倉庫業務のボトルネック

事前に「ピーク日の業務フロー」を棚卸ししておくことで、WMSの要件にもなりますし導入後に運用が崩壊するリスクを防げます。


④ EC側システムとの連携方式を決める

リアルタイム在庫の精度は、EC側とのデータ連携方式にも大きく依存します。

  • API(即時連携・正確)
  • CSVバッチ(数分〜数十分の遅延)
  • その他連携方法(仕様が異なる)

どの方式を採用するかで、販売可能数のズレや売り越しリスクに影響が出ます。
「EC側がどう動いて、WMSがどう反映するか」このデータフロー設計が成功の鍵です。


⑤ 倉庫とECチームで"同じ在庫を見る文化"をつくる

リアルタイム管理は、仕組み以上に"運用文化"が大切です。

  • 倉庫だけ別のシートで管理
  • EC担当が在庫速報をチャットで確認
  • 返品情報の共有が遅い
  • どのシステムのどの数値が正なのか不明

こうした環境では、どれだけシステムを導入しても在庫精度は上がりません。大事なのは、「ECも倉庫も、同じ1つの在庫データを見て動く」という状況、文化を作ることです。
これがリアルタイム運用の最大の成功要因と言えるでしょう。


まとめ:伸びているECは"在庫を武器"として扱っている

ECの成長を左右しているのは、商品力や広告運用だけではありません。 実際に伸びているEC企業を見ていくと、共通して在庫そのものを"売上をつくる資産"として扱う姿勢が浸透しています。

チャネルをまたいだ在庫の一元管理、SKU追加への素早い対応、返品品の即時再販、広告や販促とのデータ連動、そして不動在庫の最小化といった体制がつくれています。
こうした日々のオペレーションが高いレベルで回ることで、結果として欠品や売り越しを防ぎ、販売機会を最大限に活かせる体制が築かれています。

その中心にあるのが 在庫情報のリアルタイム管理です。
倉庫で起きた事実が瞬時に在庫データへ反映され、EC側とも正確に同期されることで、初めて「売れるときに売れるところへ在庫を流す」販売戦略が成立します。
逆にこの基盤がなければ、チャネル間の在庫差異や不動在庫、予備在庫の積み増し、返品の滞留など、成長を阻害するロスが積み重なってしまいます。

こうした運用を可能にするには、リアルタイム更新を前提に設計されたクラウドWMSの存在が欠かせません。さらに言えば、EC特有の売れ方・SKU管理・返品処理・チャネル統合など、業界の知見が機能に落とし込まれている "ECに強いWMSベンダー"をパートナーに選ぶことが、成功の近道になります。
システム単体の導入ではなく、「ECで勝つための在庫管理とは何か」を理解しているかどうかが、最終的な成果を大きく左右するからです。

クラウドWMS業界トップシェアで、ECの運用知見が豊富に蓄積されたロジザードは非常に頼れる選択肢です。日々進化するECの現場に合わせて機能改善を続け、実際の運用ノウハウをシステムに反映してきた実績があります。
在庫管理の見直しを検討されている方、リアルタイム化に課題を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
自社の成長ステージに合わせ、最適な在庫管理の形をご提案します。