COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
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最終更新日:2024/01/17 物流ロボット

人手不足解消の救世主となるか:AI物流ロボット『EVE』(2)

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前回のコラムでは、Geek+のAI物流ロボット『EVE』が稼働する倉庫を見学し、「これは深刻化する物流業界の人手不足解消の救世主になるかも!」という実感を得たレポートをお届けしました。今回は、物流関係の皆様にとって気になる、導入コストや課題、導入効果、そして2018年7月に発表された新製品『EVE SLAM型』についてレポートします。

AI物流ロボット『EVE』の導入コスト

「倉庫内で人を歩かせない」をコンセプトに、ロボットが作業場(ワークステーション)に棚を持ってくる、作業を終えたら棚を適切な場所に納める、という斬新な設計思想で開発されたEVE。従来なら、棚の商品情報に精通したスタッフ10数人で行うべき作業が、ステーションでの作業者2~3名でできるようになります。

最小限の人員で作業効率が格段に上がるうえ、簡単なオペレーションで運用できるので、誰でもすぐに作業に入れます。しかも誰がやっても作業効率が同じ! 人によるばらつきがなくヒューマンエラーもほとんど起きません。1時間単位で勤務員を受け入れることも可能で、募集条件の緩和により人材難ともおさらばできそうです。

十分な効果を得るには、30台以上のロボット導入が推奨されています。アッカ・インターナショナルのECファクトリーに導入されたEVE500(最大積載重量500kgタイプ)の場合、システム・工事費・棚等の費用込みで1台あたり500万円×30台=約1.5億円の投資額となります。しかし、代表取締役の加藤大和氏は、「メンテナンスが容易でランニングコストが小さく、2~3年で減価償却が可能です。その後は利益を生むだけですから、コスト競争力が生まれます。人材の募集や採用、研修などに関わる間接費用も削減できますから、投資効果は抜群です」と語ります。


物流業界にはびこる投資のトラウマ

Geek+の「EVE」が日本に上陸して1年。「高い投資効果」で注目を集めているものの、先を競っての導入という状況にはまだ至っていません。特に3PLのように荷主次第で荷物の状況が刻々と変わる業態では、自社で荷物をコントロールできないため、投資に対して消極的になってしまうのかもしれません。

また、かつて流行した自動倉庫やソーターに代表される大型投資で失敗した経験が、トラウマになっているケースもあるでしょう。自動倉庫は、自動化のツールというよりはむしろ「建築物」です。高額投資なうえ、投資回収が長期にわたり、その間に時代はどんどん変化するのに再設計や拡張、変更が難しい。無用の長物になってしまった自動倉庫が大きな負担となったことで、新しい「自動化」の手段への投資に、慎重にならざるを得ないのかもしれません。

同じ自動化の流行でも、AI物流ロボットはかつての自動化とは違う新しい潮流です。いうまでもなく、自動倉庫など仕掛けやシステムへの大がかりな投資とはスタンスが全く異なります。ソフトウエアとツール主体のシステムですから、作業量の増加や倉庫移転など、外部環境の変化にあわせた追加や仕様変更、拡張などが柔軟に行えます。Geek+では効果が実感できる30台以上での稼働を推奨していますが、数台から段階的に増やしていくことはもちろん可能です。利用する規模にあわせてフレキシブルに導入できるうえに、前述のとおり短期で回収できますから、投資リスクが極めて低いのです。

しかも、ロボットは1台ごとにソフトウエアが制御しますので、ロボットの新たな動きや制御が開発されるごとにUpdateします。今購入する製品も、今後購入する製品も、中身は古くなりません。初期型を導入した企業でも、常に最新の制御でオペレーションできるのですから、投資価値は高いといえます。

この新しい"自動化の潮流"は大手企業を中心に浸透し始めており、「もう様子見の時期は終わり!」とばかりに、EVEの導入を具体的に検討し始めています。


『EVE』導入の本当のメリット

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株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤大和氏

しかし、加藤氏は自らの経験を踏まえ、「中小の物流会社や3PLこそ、EVE導入のメリットは大きい」と語ります。物流は「コストの積み上げ」で価格が決まりますが、特にコストの大半を占める人件費に関わる費用の削減は、収益や企業競争力にダイレクトに反映されます。例えば、作業員が倉庫内を歩く時間や考える時間は、物流作業の3割を占めるといえわれますが、EVEの稼働でこうした見えない物流コストを30%も削減できるようになります。

加藤氏はメンテナンスの容易さについても高く評価します。EVEは原則的に運用者が消耗品を交換するだけの簡単メンテナンス。修理扱いにならないよう、壊れにくい設計になっています。さらに、「ロボット1台ごとに制御できるシステムのため、メンテナンスのために物流システム全体を止める必要がありません。不具合のあるロボット以外は、そのまま稼働を続けるので業務を止めることなく運用できます。物流会社にとって何よりも重要なのは、物流業務を止めないことですから、この安心感は大きいです」(加藤氏)。

また、従来は顧客ごとに決められた棚での運用だったものが、複数の荷主で棚を共有することも可能になります。AIロボットが空いているスペースを把握し、自動的に効率の良い場所に荷物を置くようになるからです。荷主で棚を分ける必要がなくなれば、在庫量や波動の違う複数の荷主を同一エリアで管理できるようになりますから、坪単価による料金設定ではなく、作業量による価格設定が可能です。さらにEVEは拠点移動が可能です。例えば、複数の倉庫間でも波動にあわせて効率的にロボットを配置できますし、拠点間同士での貸し借りもOKです。これは3PLにとって革命的な運用になるでしょう。

EVEの導入メリット

  • 少人数で正確な運営が可能
  • 物流全体のコストを削減
  • メンテナンスが容易で業務を止める心配がない
  • 複数の荷主で棚を共有可能
  • 効率的な配置が可能

コスト競争力と信頼性の向上を実現するこれらの導入効果は、中小の3PL企業こそ実感できるポイントです。人材確保の苦しみから解放されるだけでなく、営業上の優位性、武器を手に入れられる・・・。逆にいえば、導入しない会社は導入済みの会社に価格負けしてしまう日が、やがてやってくるかもしれません。

そして、導入を考えるなら早ければ早い方が、享受できるメリットは大きいようです。「EVEの導入が、弊社のブランディングになっています。他社との差別化がつきにくい物流業界で、ロボットソリューションの経験が当社の大きな強みになりました。新しい顧客の獲得に寄与しています」(加藤氏)。


大手自動車メーカーが導入したEVE SLAM型

アッカ・インターナショナルの倉庫では、最新型ロボットEVE SLAM(セルフマッピングシステム)型の稼働も始まっています。「人にモノを運ばせない」がテーマのEVE SLAM型は、荷物を次の現場に持っていくといった、点から点への移動を担います。EVEは、QRコードを読み取ることで位置情報を把握しますが、EVE SLAM型はレーザーを当てて距離を測り3D MAPを作る「シミュレーター機能」を持ち、ロボット自身が周囲の状況を確認しながら、最適なルートを走行します。 床にQRコードを貼る必要がありませんから、EVEよりもさらに導入が容易です。パレット、台車、ラックなど、最大1,000kgまで多彩な搬送をカバーします。EVEをベースに作られているため、価格が抑えられてかつEVEとしての使い方もできる優れもの。すでに、大手スポーツ用品メーカーや、大手自動車メーカーで導入されています。


まとめ

いかがでしょうか?
2回にわたり、Geek+のEVEが活躍する物流現場から、最新のAI物流ロボットの特長と導入メリットをお伝えしてきました。EVEを中核としたGeek+のシステムは、低額投資で自動倉庫と同様の作業効率を実現します。日本での導入事例が多くなればなるほど、日本向きの仕様が強化され、より使いやすくなっていくとのこと。そのため、アッカ・インターナショナルでは、積極的に倉庫見学の機会を提供しています。

物流現場や中小物流会社を熟知するロジザードの目にも、今後AI物流ロボットを中心としたシステムの有無が、荷主の倉庫選択の決定を左右するだろうと見てとれました。レンタルやリース、シェアリングなどのサービスも生まれて、中小物流会社もロボットを導入しやすい環境になっていくでしょう。Geek+のシステムと相性の良いWMS「ロジザードZERO」を持つ弊社も、EVEを中心とする新たなソリューションに大きな期待を寄せています。

そこでロジザードでは、3PLの新たな武器となりうるロボティクスをより知ってもらうため、セミナーを企画しています。セミナーには、アッカ・インターナショナル代表取締役の加藤大和氏、Geek+代表取締役の佐藤智裕氏にもご登壇いただきます。EVEが縦横無尽に活躍する倉庫見学ツアーもあわせて企画予定です。ぜひご期待ください!

関連情報

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株式会社アッカ・インターナショナル:http://www.acca-int.jp
株式会社ギークプラス:https://www.geekplus.jp