COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2022/12/19 運輸業・倉庫業(3PL事業者)

倉庫業と3PL事業者の違いと、物流のプロの心得五か条

倉庫業と3PL事業者の違いと、物流のプロの心得五か条

EC市場の拡大で個別対応が求められ、複雑化した物流。送料の是正から物流コストが注目され、正確な在庫管理、最適な商品の調達・配送ルート、と物流の重要性が叫ばれています。物流会社は荷主様のパートナーとして物流を支える立場にあるため、責任重大です。

今求められる物流会社とは?物流のプロになるには?

「物流業界の松岡修造」こと、熱い思いで物流業界の未来を切り開く物流コンサルタントの株式会社LiNKTH(リンクス)代表取締役小橋 重信様に、倉庫業と3PL事業者の違いや、荷主様が求める3PL事業者になるためにどのような心得が必要かをお伺いしました。

倉庫業と3PL事業者の違い

主に物流の「保管」機能を持つのが「倉庫業」です。寄託を受けた物品を倉庫で保管する事業で、原料から製品、冷凍・冷蔵品や危険物に至るまで、さまざまな物品を大量かつ安全に保管する役割を担います。国土交通省でも定義づけがされており、「輸送」の機能を持つ「運送業」と並べられることが多いと思います。
3PL事業者とは、委託を受けた物流業務を包括的に管理し、倉庫業・運送業と協力して最も効率的な「物流戦略」の構築と運営管理を行ないます。倉庫業のように「保管」だけではなく、商品の調達から配送までコーディネートする、まさに「物流のプロ」です。

また、3PL事業者の「3PL」は、「サード・パーティー・ロジスティクス」と言い、ロジスティクスの語源は軍事用語―「兵站」を意味します。兵站とは戦時おける後方支援です。戦争で勝利するためには、物資や人など供給ラインが極めて重要で、勝敗は兵站で決まると言われています。「物流戦略」と言われるのはこのためです。

そして送料の是正で物流コストが見直された今、物流戦略が物流会社に求められています。「倉庫業」でとどまっている企業は、全体最適を考えて荷主様の先のエンドユーザー様を考える「3PL事業者」に変革していかなければ、と思います。


3PL事業者と物流DX

単なるデジタル化ではなく、デジタル化や機械化により、オペレーションの改善や働き方改革をすすめることができるのが「物流DX」です。物流DXは、物流戦略を立てる上で欠かせないテーマとなってきました。

「物流DX」と聞くと、大掛かりなシステム投資を連想し、潤沢な資金を持つ大手企業しか取り組めないのでは、と諦めてしまっていませんか。物流DXは中小企業こそ取り組み、デジタル化、自動化・省人化を実現するべきだと考えます。いきなり数百万円、数千万円かけて先進的なシステムやマテハンを導入する必要はありません。物流業務の効率化や生産性の向上に繋がるツールは、たくさん世に出回っています。

3PL事業者にとって、物流業務の効率化、生産性向上は会社の経営に直結します。さらに、自社の物流業務を改善することは、荷主様の物流現場を改善することとも同義です。物流DXを目指すことにより、取引先となる荷主様にもメリットとなり、より双方の関係性は強固となるでしょう。


3PL事業者の心得五か条

3PL事業者の心得五か条

一、物流業務をサプライチェーン全体で考える

先にも述べた通り、3PL事業者の「L」は「ロジスティクス」です。ロジスティクスとは、調達から生産・物流・販売までをボーダレスに最適化することを指します。倉庫の「保管」はロジスティクスのほんの一部、ということです。昨今、送料が是正されて当たり前のように荷主様から値下げ依頼があるのではないでしょうか。荷主様の要望になるべく応えることも大事ですが、コストを安く、人海戦術でなんとか請負、ではだめだと思います。いずれは事業が立ち行かなくなってしまうでしょう。

例えば、倉庫に荷主様の在庫が過剰に保管されている、シーズン中に在庫が消化されずトレンドを過ぎてしまう、賞味期限が過ぎてしまう場合、ロスが出てキャッシュフローが悪くなります。そこに気づいて、その会社に対して何が最適か、調達から販売までのサプライチェーン全体を考え提案するのが物流のプロである3PL事業者です。逆に、荷主様から物流の相談を受けたら、3PL事業者は物流全体の最適化の提案をしないといけないと思います。

もし、「言われた通りに、とにかく安く」となってしまっている場合は、「ロジスティクス」を意識してみてください。EC市場が拡大して送料が占める割合が上がり、物流コストは注目されています。これと同時に、物流を重要視し、投資を考える企業が増加傾向にあります。実際に、物流に対して安さだけでなく、荷主の事業戦略にとって何が最適な物流なのかについてご相談をいただいており、本当の意味での3PL事業者が求められていると実感しています。

一、業界の「これから」を知る

まず、自社がおかれる物流業界についてもちろん知識が必要です。例えば、共同物流、共同配送、製造における「トヨタ生産方式(TPS)」を物流に応用したジャストインタイムでの物流構築が求められています。ジャストインタイムについては、需要にあわせて調達から保管、配送までを連携することで配送スケジュールの効率化、多頻度小ロットの配送、配送時間の遵守、欠品の防止に繋がります。製造から物流が繋がっており、非常に3PL事業者が重要な立ち位置と言えます。もし、どのような仕組みか理解できていなかった場合、荷主様に迷惑をかけてしまうかもしれません。

さらに、荷主様がどのような事業で、何の商材を取り扱っているのか、オムニチャネル、OMOを進めたいのか、サプライチェーンやDXを目指しているのか、しっかりとヒアリングをしてそれらのテーマを理解しましょう。そして、その荷主様企業の業界を調査し、日本だけでなく世界で起こっていることにも関心を持ち、荷主様に負けないぐらい、業界に関する話ができるようになるのが理想です。

知識があると荷主様も安心して委託することができますし、自然に相談にも繋がるはずです。双方に新たな気づきが生まれるほか、自社の現場担当、物流部門とも共有することで在庫面から気づくアラートのようなものが出せるかもしれません。お互いの情報共有にもなるため、何かしらのトラブルを「知らなかったから防げなかった」を回避することができます。
お互いに今後どうする、どんなニーズがある、ということが共有できる定例会などを設けて、話し合う機会を作ってください。

一、行動し、発信する

社外で情報収集することの多いデジタルマーケティング、営業推進、戦略室と比べて、物流倉庫の現場は日々業務に追われていて情報収集が難しいと思います。倉庫内でトラブルが起きたら大変なので、頻繁に外に出向くことも躊躇するでしょう。時間帯の合う同業者で情報交換する場合は、荷主様企業の守秘義務もあるため話しづらいことが多いですし、そもそも3PL事業者同士の情報交換会はなかなかないのです。こういった環境から、物流担当者は世界がどんどん狭くなっていってしまう恐れがあります。

ぜひ情報収集を意識的に行ってください。さらに、その情報に自社を当てはめて、自社では既にこれはできている、自社にはこれが足りていない、自社ならこうする、といった考えをどんどん発信してみてください。発信先は何でもいいです。社内やパートナー企業、機密情報以外であればSNSなどでも良いと思います。最近はNoteといったブログツールも簡単に始められます。

例えば、物流関連のセミナーや物流の未来を考える際に「ロジスティクスイノベーション」はよく耳にするのではないでしょうか。ロジスティクス1.0輸送の機械化から、荷役の機械化、物流管理の機械化、とロジスティクスは進化してきました。そして現在、人手不足とEC市場の拡大によりさらなる構造変化が求められています。これに対応するのがロジスティクス4.0の「IoTやAIなどによる省人化と標準化」です。ロジスティクス4.0の実現のためには「物流のデジタル化」とロジスティクスによる「全体最適化」が欠かせません。

物流は調達から配達までを垂直、水平に連携し、サプライチェーンないしデマンドチェーンに繋げる、という大事な役割があります。複雑化した物流の中で、いかに在庫を滞留せずに管理するのか、といったところに、自社の考えを持つことが大事です。ぜひご自身の考えを誰かに共有して、発信してみてください。

一、5年後、10年後の未来のビジネスモデルを語る

1990年代、日本でECが始まってから約20年でAmazonの存在はここまで大きくなりました。携帯電話はスマートフォンとなり、業界No.1の会社はAppleになりました。業界の「主役」が変わり、世の中の流れが大きく変わりました。そして現在進行中で、大きく物事が変わろうとしているのです。例えば、自動車は所有からレンタルに、旅行は接客からオンライン申し込みが当たり前に、ビデオは動画配信サービスに...。身近な業界でもビジネスモデルが変わってきていることがわかります。

時代の流れに置いて行かれないように、既存のビジネスに縛られないようにしてください。今、このまま物流会社をやっていていいのか、「保管」だけのサービスでいいのか、荷主様は満足しているのだろうか。時代の流れ見て、自社サービスのあるべき姿を常に意識して進むことが大事だと思います。

5年、10年でさまざまな業界の「当たり前」が変わる中で、まずは「自分たちは」がちょっとでもイメージできるだけでいいと思います。その時に、ただ守りに入るのではなく、何かに特化してみたり、荷主様が喜ぶような流通加工業務を増やしたり、魅力的な会社を目指してもらいたいです。「今あるもの」だけでなく「こうありたい」と考える姿勢が大事だと思います。

一、数字やシステムに強くなる

物流業界には、「気合と根性」というのがまだまだあると思います。それも大事なときがありますが、3PL事業者は、モノの流れをデータ化、見える化して、予測して、最適なロジスティクスを考える必要があります。

生産性においても、何時までにこれを終わらせて、こうすると生産性が何%上がる、上がらない場合はここの数字からどこに問題がある、と勘や感性ではなくロジックで説明できると説得力が増します。そのためには仮説から実行、理詰めで数字をとらえて、進捗状況はダッシュボードなどで見える化することが理想です。見える化にはシステムの知識も必要になってくると思います。

また、これまでの「無事に商品が出荷されればそれでOK」ではなく、管理者としてスタッフの作業状況を確認、安全管理の意味でも、業務にかかっている時間をリアルタイムに把握したいというニーズが増えています。システムにより業務を数字で見える化をして、最適な業務の稼働時間を算出し、そこの数値から良いか、悪いかの判断をできるようにする動きです。システムのノウハウ、数字から現状を読む力が必要です。

これが仕組み化できると、物の流れがどう効率化できるか、ロジックで語れる、提案できる企業となり、他社との差別化にもつながるでしょう。


まとめ

保管だけでなく、調達から生産・物流・販売まで、物流全体を最適化できるかどうかが、倉庫業と3PL事業者の違い、ということがお分かりいただけたと思います。「物流コストを抑えたい」、「物流に前向きな投資がしたい」と荷主様から相談があったとき、「ロジスティクス」の観点からご提案することを荷主様は望んでいるでしょう。 「倉庫業」で止まってしまっている企業の方は、ぜひこちらのコラムを参考に荷主様が求める「3PL事業者」を目指してください!

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本コラムにご協力いただいた物流コンサルタント
株式会社LiNKTH(リンクス)代表取締役 小橋 重信氏

婦人服アパレルメーカーに10年勤務し、マネージャとしてブランド運営全般を行う。在籍中に上場から倒産までを経験し、ファッション業界からIT業界に転身。SONY(株)の法人向け通信事業部(bit-drive)で提案営業としてネットワーク及び、サーバー構築を行う。 その後、株式会社オーティーエスのEC物流の立ち上げ時に転職し、新規導入から現場改善、さらには、不良在庫販売や越境ECなどの新規事業を立ち上げる。現在は物流コンサルタントとして、物流改善、オムニチャネルの相談、越境ECの支援を行い、業界や学生向けの物流セミナーの講師として登壇している。ファッション×IT×物流の分野で「ファッション業界を物流から元気にしたい!」をテーマに活動中。

会社概要

会社名:株式会社リンクス
代表者:代表取締役 小橋 重信
所在地:〒279-0026 千葉県浦安市弁天1-23-1-916
事業内容:コンサルティング業務
お問い合わせ:https://www.linkth.co.jp/contact/