COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2025/04/25 EC・通販事業者メーカー・製造業在庫管理小売業(リアル店舗)

在庫管理の改善事例集:業務効率化とコスト削減を実現した企業の取り組みとは?

在庫管理の改善事例集:業務効率化とコスト削減を実現した企業の取り組みとは?

経営戦略を考える上で欠かせない要素、それは物流の最適化です。国内の多くの企業で、収益力向上や中長期的な成長を推進するために、物流機能の強化を目指す企業も増えてきています。

経営力強化に不可欠な機能として物流機能の強化が加速する中で、注目を集めるのが、在庫管理の改善における取り組みです。ここでは、その効果的な方法について、業務効率化とコスト削減を実現した企業の事例を踏まえながら、検証します。

在庫管理の課題と改善の重要性

物流における在庫管理の課題を探る意義

生産者から消費者へ、商品を最適な形で届ける――。物流機能の中でも、商品を供給する流れを最適化する役割を果たす「倉庫機能」の最適化は、サプライチェーンの正常化・強靭化にどうしても必要な取り組みと言えるでしょう。

それでは、倉庫機能の最適化を図る上での課題とは何でしょうか。倉庫には、入出荷や仕分け、検品といった様々な業務がありますが、サプライチェーンにおける商品の流れに大きな影響を与えるのが、在庫の管理です。

こうして考えると、サプライチェーンの健全化に、在庫管理の最適化は必要不可欠であることが明らかになるでしょう。裏を返せば、在庫管理の課題を探り、それを解決する取り組みが、求められているのです。

物流における在庫管理の課題

ここでは、在庫管理の現場が抱える課題について、5つのキーワードで解説します。

まずは、「過剰在庫・欠品」です。在庫が適切に管理されていないと、過剰在庫や欠品が相次いで発生する確率が高まります。過剰に在庫があると、売れる見込みがなく経済的損失になり得る「不良在庫」の発生につながります。一方で、商品の供給が必要な時に在庫が不足していると、当然ながら販売の機会を逃して売上高の減少を招いてしまいます。

2つ目は「管理・保管コスト」です。過剰在庫を抱えてしまうと、キャッシュフローの悪化にとどまらず、在庫の管理や保管にかかる維持コストが過大になり、経営面にダメージを与えてしまいます。

3つ目が「作業ミス」です。在庫管理の作業ミスが多くなると、在庫とデータの不一致、または確認・修正作業に時間がかかることによる生産性の低下や、リードタイムの長期化を引き起こすおそれがあります。

4つ目の「業務の属人化」は、在庫管理を特定の従業員へ依存することで起きる問題です。業務上のルールやフローが不明確になるなど、作業がブラックボックス化することで、新人やパート・アルバイトの方による対応が難しくなります。

最後に、「在庫データと実数の乖離」は、数字の入力ミスなどによる、在庫データと実数とのズレを指します。在庫の過不足が発生するだけでなく、在庫数の確認に時間を取られて顧客への連絡が遅れてしまい、ビジネス上の信用を失うことにもなりかねません。

在庫管理の改善事例集:業務効率化とコスト削減を実現した企業の取り組みとは?

在庫管理の改善による効果

在庫管理の現場における、こうした課題が解決すれば、どんな効果を期待できるのでしょうか。こちらも5つの観点で解説していきます。

まずは、「生産性向上」です。在庫管理を正確に行い欠品がなくなれば、商品の販売機会を失わずに済みます。結果として、企業の生産性や収益を高めることができます。商品の安定的な供給体制が整うことで、売上高を増やすことができ、納期の短縮も可能になるため、企業としての信頼をより高めることができるでしょう。

2つ目は「顧客満足度の向上」です。欠品を生じることなく、一方で過剰在庫にもならない必要十分な量の在庫が確保されていれば、顧客は満足度をより高めるでしょう。リピート利用やクチコミでの評価アップにもつながり、安定した収益の維持につなげることができるのです。

3つ目は「コスト削減」です。過剰な在庫は不要なコストの発生につながり、結果として企業経営を圧迫するケースも少なくありません。過剰在庫の廃棄処分にもコストがかかります。在庫管理を徹底させ、常に適正量の在庫を維持し続けることで、期限切れなどの廃棄処分費用や支出を最小限に抑えることができ、企業の利益向上や負担軽減にもつながります。

4つ目は「キャッシュフロー改善」です。過剰在庫があり期限切れなどにより廃棄が生じると、キャッシュフローを圧迫させます。在庫を抱えるほど、自由に使えるキャッシュは減るため、在庫管理の適正化はキャッシュフローを良好な状態に維持することにつながります。

最後は、「品質安定化」です。商品は一般的に、保管期間が長くなるほど、品質も低下していきます。適正に在庫を管理していても、季節の変化による湿気や乾燥などで商品の劣化が進むこともあります。商品保管期間が長くならないようにするためには、適正な量の在庫が常時出入りする循環サイクルを、しっかりと機能させておく必要があります。

在庫管理の改善事例集:業務効率化とコスト削減を実現した企業の取り組みとは?


在庫管理の改善事例:業績の向上を実現した企業の取り組み

ここまで、在庫管理の現場における課題と、その解決により期待できる効果について考えてきました。この章では、在庫管理の改善により業績が向上した企業の取り組み事例を紹介します。

事例1:需要予測に基づく在庫適正化でコスト削減を実現

ある電子部品の素材メーカーは、ジャストインタイムの発注方式で在庫を管理していたが、二重発注や過剰在庫を減らすことができず、倉庫の現場は頭を抱えていました。在庫管理の責任者は、在庫管理の方法に問題があると考え、課題を抽出したところ、2つの課題が浮かび上がりました。

まずは、「在庫管理の現場にいるにもかかわらず、商材の入荷を確認できない」ことです。現場での入荷品の管理が不十分で、既に入荷されているかどうかを都度チェックする必要がありました。見つからない場合は購買担当に問い合わせるなどして確認を重ね、入荷済みと分かると、再度現場で該当する商材を探していました。

さらに、「ベテラン担当者による属人的な管理がなされていた」ことも、在庫管理の作業を非効率にしていました。現場には勤続30年を超えるベテラン社員が在籍しており、いわば「勘」を頼りに需要を予測し、在庫管理作業を担っている実態があったのです。電子部品の市場動向は、その時の景気動向に敏感に反応することから、需要を予測することは、在庫管理を適正化する上で重要な作業だったのです。

ここで、在庫管理の責任者は、在庫管理システムを導入することで、最大の課題だった需要予測の適正化を実現しようと動き始めたのです。ベテラン社員の需要予測を"信頼"していた経営層からは、先行投資への懸念の声が聞かれたものの、最終的には、二重発注や過剰在庫の問題を解決する手段として導入を決定しました。

過去実績に加えて、市場の動向など様々な要素をもとに需要予測を行った発注が奏功し、在庫の適正化を進めることができました。短期間での先行投資の回収に十分な、年間で100万円を超えるコスト削減効果が生まれたほか、過剰な在庫の削減率は50%を超えるなど、大きな成果を得ることができました。

事例2:在庫管理システム導入による業務効率化とリードタイム短縮

ある食品卸業を担う企業は、業界ならではの在庫管理の難しさに、2つの課題認識を抱いていました。まずは、「JANコード(商品識別コード)のない商品の在庫管理」です。大手メーカーの商品にはすべてバーコードが貼付されていますが、地方の中小企業が生産・製造する食材には、バーコードがついていないものも少なくありません。特にアレルギー対応の類似商品を間違いなく入・出庫管理できる方法に、頭を悩ませていました。

2つ目の課題は、「計量(分包)商品の在庫管理」です。学校はクラス別での対応、病院は栄養計算したレシピへの対応、というように、希望の分量に分包して納品できることが、この企業の強みです。しかしながら、グラム単位でオーダー別に組み合わせたり包装したりするため、正確な在庫管理ができず苦戦していました。

この企業で在庫管理を担う部門は、こうした課題への対応策として、在庫管理システムの導入を発案します。もちろん、食品業界特有の課題に加えて、この企業の強みでもある複雑な出荷方法を管理するためには、ある程度のコストをかけたシステム改修はやむを得ない、と考えての判断でした。

最初の課題は、JANコードがない商品は、オリジナルバーコードを自動採番機能で発番し、ラベルプリンターと連携して発行したバーコードを商品の入荷時に貼ることで解決を図りました。

2つ目の課題については、商品マスタをすべて見直しました。計量対応商品について、基幹システムからデータを出す際に数値を1,000倍して、キログラムをグラムに変換してからシステムデータを取り込み、基幹システムにデータを戻すときには、逆にグラムをキログラムに戻すことにしました。グラムに変換した数字を「個数」として扱うことで、うまく運用できるようにしたのがポイントでした。

企業の成果は想像を超えるものでした。毎月数十件発生していた誤出荷はゼロに近い水準となり、1人当たりの作業時間と作業人員数も、システム導入前の半分に削減できました。棚卸や賞味期限管理の改善も進み、在庫を含めた倉庫における商品管理を全体として大きく改善できたのです。

導入事例

在庫管理システム「ロジザードZERO」
導入事例はこちら:https://www.logizard-zero.com/cases/zero/


在庫管理の改善を成功に導くポイント

適切なシステムを選定する狙いとは

ここからは、在庫管理をうまく改善する取り組みを紹介していきます。まずは、システムの活用による在庫管理の最適化です。それには、システム選定を適切に行う必要があります。

システムの導入・選定を進めるにあたり、最初に取り組むべきことは、自社の在庫管理の現場における課題の明確化です。先ほどの事例にもあったように、課題認識をしっかりと進めたことで、その対応策が明確化して、解決を図ることができるのです。

自社の課題を抽出して「見える化」することで、自社が在庫管理の業務で潜在的に抱えるニーズ(要望)も明らかになるでしょう。「こうできればいいな」「なぜこうならないのだろう」といったニーズの把握は、課題認識と表裏一体の取り組みだからです。

こうして明らかにした課題を解決する手段として、システムの導入を検討することになります。どのシステムを選ぶかの検討にあたっては、ひょっとしたらシステムの導入自体を再確認する場面もあるかもしれません。自社の課題認識に加えて、経営状況や今後の事業戦略、サプライチェーンで連携する企業の意向なども考慮しながら、システムの選定を進めましょう。

システム選定のポイント

システム選定のポイントは、「自社の業務への適合性」です。 自社の物流全体を見渡して、現在抱える課題の解決に加えて、さらなる効率化に必要なポイントをピックアップします。その対応に効果が見込めることを念頭に選定します。

システム選定の際には、自社にとって使いやすい環境を常に整えられる柔軟性 をチェックしておくとよいでしょう。さらに、自社で運用するシステムの場合は、サーバーやシステム管理者を自社で用意する必要があります(オンプレミス型)。一方、近年注目されている「クラウド型」は、こうした用意がなくても導入が可能です。

システムの利用に必要なITスキルが、自社に見合うかも押さえておきたいところです。また、システム管理担当者だけでなく、現場担当者の状況も考慮することが大切です。担当者のITスキルに対して操作が複雑すぎるようでは、スムーズな運用の妨げになります。

見逃せないのが、他システムとの連携実績の有無です。物流現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の機運が高まる中で、複数のシステムを相互に連携させることで、全体最適の観点から課題解決を図る動きが加速しています。こうしたシステム連携により、在庫管理の効率化やデータの有効活用が可能なケースは少なくありません。在庫管理システムに蓄積された情報は、在庫の適正化や需要の推移予測、発注計画の的確化などに貢献する有用なデータだからです。

最後に、情報漏えいが起きないようなセキュリティ対策や、想定外のトラブルの際におけるサポート体制も、製品を選定する上で非常に重要なポイントです。

在庫管理の改善事例集:業務効率化とコスト削減を実現した企業の取り組みとは?

人材育成の重要性

在庫管理の最適化を図る上で、システムの有効性については、前項までに述べた通りです。とはいえ、自社における在庫管理の「あるべき姿」を描き、それを実行する一連の作業の中で、システム導入・運用はあくまで手段です。

課題認識の重要性について説明したように、あくまで課題をどう認識して、その課題をどのように解決かが、在庫管理の最適化を実現する最大のポイントであることを、忘れてはいけないでしょう。

そのためには、在庫管理に携わる従業員が、その機能の意義と役割を正確に理解することが大切です。社内研修や外部のセミナーなどを活用しながら、こうした風土を構築していくことも、広く言えばサプライチェーンマネジメントの一環なのです。


まとめ:在庫管理改善でさらなる成長を

ここまで、在庫管理の改善が物流業界にもたらすメリットとその重要性について、具体的な事例も踏まえながら解説してきました。昨今、持続的な社会を実現するために欠かせない機能として、物流が認識されるようになってきました。

サプライチェーンの強化を促す意味でも、在庫管理の適正化は社会課題であり、その解決は持続的な社会の構築に貢献する、非常に意義深い取り組みであることを、改めて理解しておく必要があるでしょう。

このコラムとの出会いをきっかけに、自社の在庫管理のあるべき姿について、改めて見直すともに、課題解決に向けて一歩踏み出してみませんか。