COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2022/07/08 DXEC・通販事業者在庫管理小売業(リアル店舗)

アパレル業界の現状と在庫消化率 ~アパレルDXの基本と次の一手を考える【第1回】~

アパレルDXの基本と次の一手を考える【第1回】アパレル業界の現状と在庫消化率

コロナ禍で大きな打撃を受けたアパレル業界では、事業の立て直しが進む中、業務効率化とともに、多様化する顧客ニーズに応え販売力を高めようと、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増えています。販売量を増やすには、データに基づいたアクションが不可欠ですが、データ活用の重要性はわかっていても、どのようなデータに着目すればよいか、何を指標に分析すべきかで立ち止まり、データ収集にとどまっているケースも多いのではないでしょうか? そこで今回は、2021年6月にクラウドWMS(倉庫管理システム)『ロジザードZERO』と連携した、アパレル向けデータ集計・分析完全自動化ツール『radial』を提供する、株式会社proces代表取締役社長の岡本大河様に、アパレルDXに取り組む企業様に向けて、特に在庫消化による収益力を高めるために着目すべきデータと活用ポイントを伺いました。3回シリーズでお届けします。

アパレル業界の現状と課題

東京商工リサーチによれば、アパレル企業の倒産件数は2015年の時点で年間474件(前年比4.6%増)と、前年を上回るペースにありました(注1)。新型コロナウイルス感染拡大の前段階で、すでに月間約40件の倒産が発生していた計算です。パーソルキャリアの発表でも、2021年におけるアパレル企業の求人数が前年比87.4%(注2)とあり、業界の動向がうかがえます。

注1:参照 https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160127_01.html
注2:参照 https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2021/20210330_01/

厳しい状況下にあるといえるアパレル業界、その主な要因は次のような点にあるでしょう。

  • 供給過多による過当競争:市場の需要量に対して商品の共有量が多すぎるので、売れ残りが必ず発生する市場
    経産省のレポートによると、この30年で市場は3分の2に縮小したにも関わらず、国内流通商品点数は2倍弱に増えています。1990年は約20億点で15兆円の市場、2014年は約40億点で10兆円の市場です。
  • 二次流通の興隆:新品が売れず、さらにアパレル事業者以外からの購入増加
  • モノとしての価値減少:安価な外資商品の流入やECでのお手軽消費。ファッションに対する投資低下
  • 戦略の遅れ:利益よりも売上を重視する経営体制。売り逃しを恐れる過剰在庫体制

さらに現在は、上記の背景に加えて、近年注目すべき課題は以下のようなものもあります。

  • 消費者のニーズ変化が早すぎてトレンドを読めない
    SNSの普及は流行の高速化をもたらしました。一定期間にわたるトレンドはすでになくなり、現在のトレンドは「反射」のように移り変わり、トレンドの軸作りが難しい状況です。ヒットすると考えていた商品が売れ悩み、思いがけない商品が当たるという現象が頻発しています。そして、よりメタに考えれば、最も注意すべきなのが、その現象が長く続くか、短く終わるか、予測ができないことです。
  • セール合戦で企業体力を削り合っている
    業界としてセールが常態化してしまいました。毎年決まった時期に行われるセールに合わせて、消費者は買い控えを行い、アパレル企業はプロパーでの販売が難しくなりました。いつの間にか「セールでシーズンの売上目標の帳尻を合わせる」ことが習慣になり、肝心の利益やブランドイメージを損なう経営が行われています。昨今は、そのセールも「前倒し」や「期間延長」、「特大セール」などが行われ、価格競争に拍車がかかっています。
  • 社会情勢の変化により知らぬ間に「悪」になりうる
    社会情勢の変化は、アパレル業界にも大きな影響を与えます。実際に、ここ最近まで高品質で高級品と認知されていた素材が、生産地の労働力搾取の問題で、社会的に「悪」の素材と認知されてしまいました。アパレル企業は、環境問題・人権問題・労働問題など、様々な面で社会と繋がっており、常に社会的な目線でも「何が指示されて、何が指示されないのか」を考える必要が強まってきました。

やはり大切にしたい「在庫消化率」

このような厳しい状況こそ、アパレルの基本「在庫消化率」を高める、経営の基本を大切にすべきです。
ただし、ここで注意しなければいけないのは、プロパー消化率とトータル消化率を分離すること。在庫消費率には、定価販売での「プロパー消化率」と、割引販売も含めた「トータル消化率」がありますが、重視すべきは「プロパー消化率」です。アパレル業界では、新作の発表時点では定価販売するものの、シーズン終盤の売れ残り商品はセールで在庫をさばくことが多いです。セールは消化率を上げるための劇薬であり、一見トータル消化率は改善するのですが、結果的に粗利率は下がり、利益計画を崩してしまいます。また、同時にプロパー購入者の失望や、ブランド毀損にも繋がるので、将来的なプロパー消化率を下げる可能性もあります。着目すべきはプロパー消化率です。


必要なのは在庫消化。販売量を増やすには?

「在庫消化率=販売した数量 ÷ 仕入れた数量」
この数式からも、在庫消化率を改善するためにできることは、「仕入量」を減らすか、「販売量」を増やすか、であることは明快です。一見簡単そうに見えるのは仕入量を販売可能数量に近づけること(=多くのケースでは仕入量を減らすこと)ですが、どれだけ高度なAIを導入したとしても、現在の市場を読み切り、仕入れを最適化するのは困難です。さらに、仕入量を下げることは売上のポテンシャルを下げることと同義で、全体的にビジネスの規模を縮小させる一手となります。

一見、当たり前の提言ですが、企業は「販売量」を増やすことにもっと注力すべきです。個々の商品の売れ方をリアルタイムに正確に理解し、売行きに課題のある商品に素早く気付くこと。そして商品が旬のうちに、販売量を増やすためのアクションを実行すること。御社は「この商品はもう売れないからセールだね」と決めてしまう前に、その商品に対してどれだけの施策を打っているでしょうか?例えばシンプルに以下のような施策が販売量を上げます。

  1. 店舗間移動
    商品の売れ行きは販売場所によって異なります。店舗Aには在庫が豊富にあっても、EC用の倉庫には在庫が不十分な場合、店舗Aの在庫を調整し、EC割当在庫を増やすべきでしょう。
  2. 倉庫と店舗の在庫移動
    店舗で在庫切れを起こしそうな商品は、倉庫から在庫を持ってくるべきです。このアクションは、「ある商品が在庫切れを起こしそう」という予測と、倉庫の在庫量の正確な把握が必要であり、思ったよりも難しいです。一方で「できて当たり前」のアクションであることから、データ活用で自動検知を行うなど、ミスなく日常業務に落とし込むことが重要です。適切な商品配置を行いましょう。
  3. 訴求ポイントの変更
    商品が売れる理由は実にさまざま。なぜ売れたのかを把握できているかはとても重要で、店舗で集めた顧客の声がヒントになります。ここで重要なのは、顧客の声が「売れた理由」なのか「売れない理由」なのかを認識したうえで、活用すること。顧客の声は、定性データがゆえに、見ているうちに本筋とは違う結論に迷い込んでしまいがちです。数値データで先に課題商品を特定してから、顧客の声を「原因」として深掘りすると、意思決定のブレが起こりにくくなります。
  4. 商品陳列の最適化
    売り場の陳列は、高倍率や売上に直結するだけでなく、お客様が店舗に入るきっかけにもなります。 売行きのいい商品を前面に出して入店を促したり、在庫が多い商品のコーディネートを提案して在庫消化を進めたりします。

アパレル企業がDXへと舵を切りだした

先ほどのアクションの数々は、データ活用により、簡単に正確に迅速に、行うことができます。このようなデータ活用は多くの企業にとって喫緊の課題です。冒頭に述べたように、変化の激しい事業環境において、アパレル企業は変化を味方につけて、素早く、質の高いアクションを繰り返していくべきです。「データ活用により、素早く、質の高いアクションを行うこと」こそ、アパレル企業がDXで目指すべき姿です。

例えば、すでにロジザードZEROを導入されている企業様は、在庫管理業務を効率化しているだけでなく、日常業務の中で、在庫情報を「データ」として保持することができています。これこそまさにDXの第一歩であり、「データ活用によって、素早く、質の高いアクションを行うこと」の前提になる状態です。次回は、アパレルDXの第二歩目として、データ活用ができる企業にどう生まれ変わるのか?というテーマを解説します。


【第2回】在庫の収益力を最大化するデータ活用とは?
https://www.logizard-zero.com/columns/basic12-02.html

【第3回】アパレルDXの課題とシステム選定
https://www.logizard-zero.com/columns/basic12-03.html

プロフィール

岡本大河(おかもとたいが)氏
株式会社proces 代表取締役社長
東京大学法学部卒業。新卒でBoston Consulting Groupに入社。その後、2019年6月に株式会社procesを設立し、アパレルMDの「知る・決める・伝える」を支援するWebサービス「radial」を開発、リリース。
https://www.radial-db.jp/

アパレルDXの考え方

アパレルDXのステップをわかりやすく解説した無料の資料を用意していますので、ご活用ください。
「アパレルDXの考え方」
URL:https://www.logizard-zero.com/whitepaper-download/dx01.html

会社概要

会社名:株式会社proces
設立:2019年6月
代表取締役:岡本 大河
所在地:151-0066 東京都渋谷区西原三丁目24番5号206
お問い合わせ:info@proces.co.jp

クラウドWMS(倉庫管理システム)『ロジザードZERO』に関するお問い合わせ
https://www.logizard-zero.com/contact/