COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2022/07/08 DXEC・通販事業者在庫管理小売業(リアル店舗)

在庫の収益力を最大化するデータ活用とは? ~アパレルDXの基本と次の一手を考える【第2回】~

アパレルDXの基本と次の一手を考える【第1回】アパレル業界の現状と在庫消化率

アパレル企業が目指すべきDX(デジタルトランスフォーメーション)と、在庫の収益力を最大化するためのデータ活用について学ぶコラム(3回シリーズ)の第2回です。今回も、2021年6月に『ロジザードZERO』と連携した、アパレル向けデータ集計・分析完全自動化ツール『radial』を提供する、株式会社proces代表取締役社長の岡本大河様に、特に「アパレルDX」の定義と目指すゴール、構築ステップについて解説していただきます。

アパレルDXとは?

DXは、単にツールやシステムを導入すれば達成できるものではありません。「デジタル」による「トランスフォーメーション」、つまり「デジタル技術でビジネスの変革」を起こすことがゴールです。ビジネス戦略において何らかのポジティブな変化を生み、付加価値を高め、競争上の優位性を確保して、新たなビジネスの創造につなげていくことが目的であり、ツールやシステムの導入は最初の一歩にすぎません。
経済産業省が発表したレポートによれば、DXを考えるときに、デジタイゼーション・デジタライゼーション・デジタルトランスフォーメーションの3つの側面を考える必要があるようです。

  • デジタイゼーション:アナログ・物理データのデジタルデータ化
  • デジタライゼーション:個別の業務・製造プロセスのデジタル化
  • デジタルトランスフォーメーション:組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革

引用:https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf

ここで重要なのが、上記3つの側面を独立に考えるのではなく、以下のような前後関係を意識することです。

  • デジタルトランスフォーメーションには「データ」が必要なので、前提としてデジタイゼーションが行われている必要がある
  • しかしデータ化がゴールのデジタイゼーション自体を目的としてアクションすることは難しく、業務効率化の文脈で行われるデジタライゼーションの副産物としてデジタイゼーションが推進され、データを保持するようになる

そのため、アパレル企業のDXのステップを整理すると、ステップは下記のような構成になります。

STEP1:業務効率化を目的としたシステム導入(デジタライゼーション)と、それによるデジタルデータの獲得(デジタイゼーション)

STEP2:デジタルデータを活用した、素早く、質の高いアクションの実行体制構築(デジタルトランスフォーメーション)


「差別化」こそ、データ活用で目指すべきもの

今、多くの企業で業務システムの導入が進み、デジタライゼーションが進んでいます。前述の通り、その副産物としてデジタイゼーションが進み、導入された業務システムやツールの中に、膨大な売上データ、在庫データなどが生み出され、蓄積され、活用されるのを待っています。これらのデータを活用したアクションの高度化こそ、アパレルDXの本質ですが、そのステップに進む前に「データをどう活かすか?」という問いにブランドとして答えを持つことが重要です。
データ活用が進むことで、非常に鮮明に事業や商品の「リアル」が見えるようになります。その時に「データをどう活かすか?」という問いに、ブランドとして答えを出していないと意思決定に躊躇することになります。データから導かれる「定量的な正解」に追随し続けるのか、データはあくまでデータとして捉え、正しい前提理解に基づいて「独自路線」を見つけに行くのか、大きく2つのチョイスがあります。

ここでは詳細は省きますが、アパレル業界には「同質化」という危うい習慣があります。「同質化」を簡単に解説すると、データに基づいて売行きがいいものを作り続けることで、だんだんと他社と商品が似通ってきて、最終的にブランドの個性を失ってしまい、同時に固定ファンを失い、ブランド事業が先細りしていってしまうことです。「定量的な正解」の追随は同質化に繋がりやすく、ブランドの未来を奪いかねません。
データは状況を把握するための「前提」に過ぎません。「データをどう活かすか?」という問いに対しては、是非ブランドのオリジナリティを発揮する、「差別化のためのデータ活用」を目指していただきたいと思います。ブランドならではの信条やセンス、スタイルを発揮するための土壌として、データに基づく正しい前提理解を習慣化させましょう。

正しい前提理解のステップは、大きく3つあります。

  • 課題商品の特定:収益面で課題がある商品はどれか?
  • 課題の詳細の特定:具体的に売行き・在庫はどのような状況か?
  • 課題の背景の特定:なぜそのような状況になっているのか?

これら 3 つの要素を特定することで、MDやディストリビューター、経営者等、施策決定者の意思決定の前提が正しく整えられ、結果的にアクションの精度を向上させます。

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「今週最も売れた商品の在庫量は十分か?」を10秒で答えるには?

実践編として、「商品の売りのがしを避けるため追加発注すべきかどうかを判断するうえで、適切な在庫量を知る必要がある」というシチュエーションで、「今週最も売れた商品の在庫量は十分か?」という問いを一緒に考えてみましょう。

  1. 課題商品の特定
    全チャネルの売上情報を統合し、売上順に並び替えて、今週最も売れている商品を特定します。同時に在庫数も軽くチェックします。
  2. 課題の詳細の特定
    さらに具体的に課題を深掘ります。直近の売上ペースから、あと何週間で在庫がなくなるかを算出し、残りの販売期間と比較。販売期間より大幅に速いペースで在庫消化されると見込める場合は、「在庫量は足りない」と判断します。
  3. 背景の理解と発注の判断
    ここで重要なのは「在庫が足りなくなりそう」だからといって、商品が売れる背景を理解せずに追加発注の意思決定をしないことです。たとえば、売れている理由が「ウォータープルーフの素材が梅雨シーズンにマッチしていた」など、季節や天候要因だった場合はどうでしょう? 発注した商品が店頭に並ぶ頃には梅雨明けし、売りづらい商品が店頭を占める状況になりかねません。

御社のブランドで「今週最も売れた商品の在庫量」は十分といえますか? 「売れる背景」から考えて、追加発注をすべきですか? 多くの方が「追加発注はしなくてよい」という判断になったかもしれません。しかし、「追加発注しない」という意思決定ができることは、発注のコントロールができるということであり、重要です。そして、この結論を導くためにどのくらいの時間と能力が必要か、実際にデータを抽出して分析をしようと試みた方は、必要なデータが必要な形で見つけられないことにも気付かれたのではないでしょうか。冒頭の問いに10秒で答えようとすれば、店舗や倉庫で管理されているデータが、一元的かつ自動的に管理できるシステムを導入し、整えておく必要があることを理解していただけると思います。

次回は、アパレルDXを阻む壁と解決策、在庫の収益力を高めるために打つべき一手について解説します。


【第1回】アパレル業界の現状と在庫消化率
https://www.logizard-zero.com/columns/basic12-01.html

【第3回】アパレルDXの課題とシステム選定
https://www.logizard-zero.com/columns/basic12-03.html

プロフィール

岡本大河(おかもとたいが)氏
株式会社proces 代表取締役社長
東京大学法学部卒業。新卒でBoston Consulting Groupに入社。その後、2019年6月に株式会社procesを設立し、アパレルMDの「知る・決める・伝える」を支援するWebサービス「radial」を開発、リリース。
https://www.radial-db.jp/

アパレルDXの考え方

アパレルDXのステップをわかりやすく解説した無料の資料を用意していますので、ご活用ください。
「アパレルDXの考え方」
URL:https://www.logizard-zero.com/whitepaper-download/dx01.html

会社概要

会社名:株式会社proces
設立:2019年6月
代表取締役:岡本 大河
所在地:151-0066 東京都渋谷区西原三丁目24番5号206
お問い合わせ:info@proces.co.jp

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