COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2025/11/12 システムセミナー

いまこそ脱・レガシー!基幹システム×倉庫管理システム リプレイス成功セミナーレポート 【後編】 ~システムリプレイスのトレンド、事例を徹底解説!~

いまこそ脱・レガシー!基幹システム×倉庫管理システム リプレイス成功セミナーレポート 【後編】

2025年10月、ロジザード主催の「基幹システム×倉庫管理システム リプレイス成功セミナー」が開催されました。基幹システム(ERP)にWMSの機能を統合したタイプのレガシーシステムを利用されている企業の多くが、時流の変化や物流のトレンドに対応できないという課題を抱えています。本セミナーでは、クラウド型基幹システムと倉庫管理業務に特化したサービスを柔軟に連携させ、企業の要件に応じて「いいとこ取り」を実現する今のトレンドと、リプレイス成功のポイントを解説しました。後編では、システムリプレイスを成功させるためのポイントをテーマに繰り広げられた、4社によるトークセッションの様子をお伝えします。

前編はこちら

開催概要

タイトル いまこそ脱・レガシー!
基幹システム×倉庫管理システム リプレイス成功セミナー
~システムリプレイスのトレンド、事例を徹底解説!~
開催日時 2025年10月16日(木) 14:00~16:00
会場 浅草橋ヒューリックカンファレンス / YouTube LIVE配信
主催 ロジザード株式会社
登壇者(順不同) ピー・シー・エー株式会社 アライアンス推進部クラウドインテグレーショングループ 課長代理 橋本隆広氏
株式会社アイル ビジネスパートナー推進統括本部 係長 岡本祐太氏
株式会社オービックビジネスコンサルタント SI・コンサルティング推進室 パートナーサクセスチーム 課長代理 品田玲志氏
ロジザード株式会社 取締役 営業部長 亀田尚克 
プログラム

4社による白熱のトークセッション
~システムリプレイスを失敗しないために~

第1部では、基幹システムのリプレイス成功のポイントならびにシステム連携事例を各社に講演いただきました。第2部は、ロジザード・柿野のファシリテートによるトークセッションです。現場課題をよく知る4社が、「リプレイスを失敗しないためのポイント」「システム連携のメリットとデメリット」「他社システムとの提案事例」をテーマに、熱く語り合いました。

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テーマ① リプレイスを失敗しないためのポイント

柿野:
ファシリテーターを務める、ロジザードの柿野です。第1部では各社それぞれの基幹システムリプレイスに対するアプローチや、事例をご紹介いただきましたが、ここからはもう一歩踏み込んだお話をうかがってまいります。最初のテーマは、「失敗しないためのポイント」です。皆さまの会社でもリプレイスにあたって仕様を決める際、トラブルも含めて様々な経験をお持ちだと思います。システムリプレイスを成功させるための注意点、「失敗しないためのポイント」を押さえておきたいのですが、リプレイスがうまくいかないケースではどのような原因が考えられますか? PCAの橋本さん、いかがでしょうか?

PCA橋本氏:
レガシーシステムからのリプレイスでは、独自機能の再現を求める声が多いものですが、過去に作り込まれた機能にこだわりすぎると、コスト増や納期遅延、将来的にはシステムの複雑化を引き起こして、大変なことになります。ポイントは、「業務をシステムに合わせるか、システムを業務に合わせるか」という方向性を早期に、そして全社で決定することです。この認識が合わないと、プロジェクトはうまくいきません。

アイル岡本氏:
当社はカスタマイズできるがゆえに、旧来のシステムと同じものを作りたい、独自機能を再現したいというリクエストをよくいただきます。でも、本当に今のシステムを踏襲していいんですか、業務を見直す必要はありませんか?と問えば、検討すべき点はたくさん出てきます。ほしい機能は後からでも追加できますが、「これはいらなかった」は取り返しがつきません。長い目で見れば、安易なカスタマイズは避け、パッケージの標準機能をうまく使う方が、結果的に良いシステムになります。今の業務や機能に固執しすぎないことが大切です。

OBC品田氏:
全体最適を達成するために重要なのは、会社としてシステム導入の方向性を明確にし、グランドデザインを描くことです。担当者や一部のマネージャーだけの意見で進めると、導入・運用段階で認識の齟齬が生じます。Fit & Gapで洗い出したギャップをどうしていくかという方針にも、それぞれのこだわりがあるからです。もしFit & Gapを実施するなら、ギャップの捉え方を柔軟にし、他の方法で代替実現が可能かどうかも検討すべきです。

亀田:
Fit to Standard、パッケージに合わせていきましょうという考え方がなかなか受け入れられない理由の一つに、日本企業の長年の文化があると思います。長く勤めることが前提の時代は、業務に特化して細部にこだわり、かつそのやり方を継承できる人がいました。でも、人材の流動化が進む今は、業務をある程度標準化した方がよいと思います。過度に最適化された現行業務にこだわりすぎると、標準化のメリットを享受できません。標準に業務を寄せていくことで、それぞれの業務標準に最適化されたサービスを連携して使えるようになります。


テーマ② システム連携のメリットとデメリット

柿野:
システム連携は、今後間違いなく主流になっていくと思います。しかし、20~30年同じシステムを使い続けてきた企業様からすると、業務にフィットするシステムをつないでいく考え方は、おそらく新しい概念です。「疎結合型」や「ポストモダンERP」といった、サービス連携前提のシステム構成のメリットとデメリットについてはどうとらえていますか?

PCA橋本氏:
選択肢の多さはメリットでもありますが、最適解を見つけにくい、選べないというデメリットでもあります。また、多くのサービスを使い始めると、連携が複雑化して多重処理が増えるという課題も生じます。とはいえ、私は様々なSaaSをうまく組み合わせて利用する方が、全体的にメリットは大きいと思っています。会計システムは、データが集まる終着点です。PCAでは、多くの異なるシステムからデータを受け取れる柔軟性がないと存在価値がなくなると考えて、仕組みを構築しています。

OBC品田氏:
最新のテクノロジーに準じたサービスを利用できる点が、最大のメリットです。特にAIやAIエージェントのような新しいテクノロジーは、レガシーシステムとの組み合わせでは活用が難しい。新しいテクノロジーを将来的に利用できる状態にしておけることが、クラウドの選択の大きな利点です。デメリットとしては、複数のベンダーのシステムを導入する場合、サポート窓口が分断されること、そしてメーカーによってサポート品質に違いがあることが挙げられます。

アイル岡本氏:
そうですね。複数ベンダーで部分最適化を行うと、社内に取りまとめ役が必要になります。統合型なら1社のベンダーに任せられますが、疎結合型は自社である程度コントロールしなければなりません。IT人材の確保が難しい中、ユーザー自身が責任を持って方向性を決定しなければならないという矛盾が生じます。これを解決するために、コンサルティングを含めた外部の支援を検討することも一つの策だと思います。

亀田:
WMSは上位システムと連携しないと機能しないので、連携のデメリットを考えることはあまりないんですが(笑)。かつては連携を嫌う企業も多くありましたが、現在では1社で最適なサービスを提供するのはコストと時間の面で難しいという認識が広まりました。リプレイスを考える際、多少のデメリットがあってもサービス連携を指向せざるを得ない状況になっているのではないでしょうか。お客様側もSaaSの利用に慣れてきましたし、システム連携の可否がサービス選定の前提条件になりつつあります。連携できないサービスは選ばれにくくなっているため、メーカーも連携には積極的です。


テーマ③ 他社システムとの提案事例

柿野:
皆さまは、どのようなシステム連携を提案されたことがありますか。WMSとの連携に限らず、周辺システムとの連携について、具体的にお聞かせください。アイルの岡本さん、いかがでしょうか。

アイル岡本氏:
販売管理システムは、会計システムとの仕訳データ連携が圧倒的に多いです。また、コロナ禍をきっかけに請求書の電子化が急速に進み、「楽楽明細」や「BtoBプラットフォーム請求書」といったWeb請求書サービスとの連携もトレンドです。これらは業種を問わない連携ですが、アパレル業界であればWMSやECサイト、POSサービスとの連携など、業種・業界特有の連携も多数実践しました。

OBC品田氏:
WMSとの連携や、点検車両管理や輸出入システムなど特化型サービスとの連携ですね。売掛金や買掛金の管理といった「お金回り」をコアに、売上管理は別のシステムで行い、お金の管理を弊社製品で行う連携パターンが多いです。最近では、Kintoneをハブにした連携が増えていて、与信管理や売上伝票の入力などに活用されています。当社も無償でKintone連携アプリを提供しています。kintoneのようなノーコードツールは、標準機能で業務を回す「Fit to Standard」を実現する上で、重要な役割を担っています。

PCA橋本氏:
PCAも、販売管理と会計周辺の仕組みとの連携が非常に多いです。特に、まだ効率化されていない受発注業務の領域で、ECサイトとの連携に関する話が増えています。我々はパッケージメーカーであるため、お客様自身がカスタマイズできるノーコードツールと好相性です。OBC様と同様、kintoneは会計や人事総務など限られた人しか使えないシステムのデータを全社で活用したり、フロント業務を効率化したりするための情報共有基盤として、第一候補に挙がることが多いです。kintone内でAIが使えるようになってきたことも、連携を後押ししています。

亀田:
WMSは物流の要として、販売管理や会計システムとは深く連携しています。さらに、RFIDやロボットなどの自動化技術や生産性分析ツール、人の動きを分析するシステムなど、現場改善に特化した多種多様なサービスとつながることが前提です。ノーコードのデータ連携ツール「ASTERIA Warp」など、異なるシステム間をつなぐためのSaaSも活用しています。何が出てくるかわからない時代なので、ロジザードは「何でもつないでいく」というスタンスです。


まとめ

リプレイスを機に業務を見直し、標準化を進めることがポイント

基幹システムのリプレイスに重要な視点として、全員が口をそろえたのは、「リプレイスを機に複雑化した業務を見直し、業務をシステム標準に合わせ、シンプルで持続可能な運用を目指すこと」でした。基幹システムのリプレイスは、単なる新技術の導入・入れ替えではありません。基幹システムの変更は、業務変更そのものです。リプレイス成功には、業務を標準化に寄せていくという全社的な意識改革と、特化型サービスを柔軟に組み合わせる「疎結合型」のシステム構築が不可欠であることが認識できる内容でした。本セミナーレポートが、基幹システムのリプレイスを検討されている方へのヒントになることを願っています。

ロジザードは、物流・流通に関わる皆さまの事業をシステムで応援します。お悩みごとは、どうぞお気軽にロジザードにご相談ください。
https://www.logizard-zero.com/contact/


登壇者プロフィール
橋本 隆広(はしもと たかひろ)氏
ピー・シー・エー株式会社 アライアンス推進部クラウドインテグレーショングループ 課長代理

2004年PCAに入社、ERP製品の販売推進・導入支援担当として多くのお客様のシステム導入を支援、その後PCA製品のAPIの推進および開発パートナー支援活動に従事。現在はPCAクラウドと他社クラウドサービスを「つなげる」ことをミッションにした活動を推進中。

岡本 祐太(おかもと ゆうた)氏
株式会社アイル ビジネスパートナー推進統括本部 係長

中堅・中小企業に数多くの導入実績を持つ販売、在庫、生産管理システムや、企業間取引に特化したBtoB ECなどのシステムを開発、販売するアイルにて、パートナー企業様との協業推進に従事。

品田 玲志(しなだ れいじ)氏
株式会社オービックビジネスコンサルタント SI・コンサルティング推進室 パートナーサクセスチーム 課長代理

SMB市場を中心とした、ERPシステムの導入に長きにわたり従事。現在は奉行拡販をミッションとして新規パートナー中心に全国でアライアンス支援·商談支援を行う。また、奉行との連携製品の拡充へも力を入れつつ、最適なソリューションをご提案できる体制構築を実施。

亀田 尚克(かめだ なおよし)
ロジザード株式会社 取締役 営業部長

繊維商社、大手システム会社勤務を経た後、在庫管理分野のASPという事業スタイルに魅力を感じ2006年ロジザード株式会社入社。通販物流を中心として物流現場への訪問数はゆうに2,000に達する。徹底した現場主義によりサービス会社としてのロジザードのスタイルを確立する。在庫管理システムをもっと世の中に普及させたいという情熱のもと思索と行動の日々を送る。