COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
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最終更新日:2022/10/05 インタビュー・見学メーカー・製造業海外

海外進出先として人気のタイ、拠点管理上の課題とタイ固有のルールとは?

海外進出先として人気のタイ

グローバルビジネスを志向する日系企業にとって、タイは重要な進出国の一つです。中国に次いで、多くの日本企業が拠点を置くのはなぜでしょうか?またタイでのビジネスにどんな課題があるのでしょうか? タイに進出する日本企業の会計管理をシステムでサポートする株式会社マルチブックCPOの福井様に、タイにおける拠点運営についてお話を聞きました。海外進出、特にタイへの進出を目指す企業の方は必見のコラムです。

タイが海外拠点に選ばれる理由

取締役CPO 福井和男氏

(お話をお伺いした株式会社マルチブック 取締役CPO 福井和男氏)

外務省が公表している2021年「海外進出日系企業の拠点数」によれば、日本企業の進出先の地域としては「アジア」が最も多く、全体の約7割を占め、次いで「北米(約13%)」「欧州(11%)」と続きます。アジアの国別拠点数を見ると、中国(31,047拠点)に次いでタイ(5,856拠点)が2番目に多い国と報告されています。2018年までは長い期間インドが第2位のポジションにありましたから、近年、特にタイの人気が高まっていることが分かります。

タイに向けては、日本よりも安価な人件費を求めて、1990年代から主に自動車メーカーなどの製造業を中心に進出が始まりました。タイ人は基本的に穏やかで親切、友好的で勤勉な国民性は日本との親和性が高く、元から日系企業が定着しやすい国でした。そして、製造業の進出に伴い日本人居住者が増えると、日本人をターゲットにしたビジネスが展開されるようになります。最も多いのは飲食サービスですが、近年ではタイ人の所得が上がり、日本人のみならず日本食好きのタイ人にも好まれ、マーケットが広がっています

頻繁に起きる洪水や政情不安などを抱えるタイは、決してカントリーリスクが低いわけではありません。しかし、製造業にとっては、位置的に東南アジアのハブとして拠点を置きやすく、中国に続く第2の進出国として人気があるほか、タイ国内の社会インフラが整い現地でのビジネスがしやすくなったことから、非製造業の中小企業も多数進出するようになったとみられます。グローバルビジネスを志向する日系企業にとって、タイは重要な進出国の一つなのです。


タイで日系企業がシステム導入時に抱える課題

タイで事業を展開する日系企業で、拠点立ち上げの際に必ず課題となるのは、基幹業務システムの問題です。タイ人スタッフと日本人の管理者双方にとって使い勝手のよいシステムは、そう多くありません。会計システムを例にとると、タイ人は現地で最もシェアが高く使い慣れているローカルの会計ソフトを使いたいと望みます。しかし、日本人管理者から見ると、ローカルソフトには以下のような不都合、課題が存在します。

  • 外貨建て残高管理ができない:タイバーツの金額でしか管理できない
  • 多言語対応ができない:多くはタイ語・英語のみの対応
  • 内部統制に不安がある:業務・システム運用はすべてタイ語で行われ、ブラックボックス状態。仕訳転記後の上書き修正も可能
  • Excelダウンロード、レポーティング機能がない:本社への報告は手作業での別途集計・作成が必要
  • 日本本社からタイ拠点の経営状況をリアルタイムに把握できない:スピーディな経営判断ができない

タイ独特の規制や会計ルール

会計システムを例にとったのは、タイの税務・会計制度が他国と比較して複雑だからです。タイ国内の企業はタイの会計基準にしたがって財務諸表を作成し、すべての企業がライセンスを有する監査人による監査を受けなければなりません。税務要件が多岐にわたり、さらに経理担当に要求される資格などタイ特有のルールが数多くあります。

タイのVAT(付加価値税)は取引内容に応じて課税のタイミングが異なるなど、日本と比べてかなり複雑です。また多くの取引がWHT(源泉徴収税)の対象となります。為替レートは毎日タイ中央銀行が公表するレートを使用して換算しなければならず、減価償却は日割償却なので、月の日数によって金額が変わるなど、とにかく細かな要件が多数存在します。しかも税務関係は基本的にすべて「タイ語」での対応です。

こうした事情から、「現地の会計・税務に詳しい人に経理を任せよう。任せるからには、経理担当者にとって使い勝手のよいソフト(システム)を導入するのがベスト」との判断が生じ、タイ特有の要件に対応できるローカルソフトを安易に導入してしまいがちです。しかし、既述の通り、日本側で管理できないデメリットがあり、これが後に大きな問題を引き起こす可能性があるため、導入には注意が必要です。

こうした課題を解決し日系企業のビジネスを支援するためにマルチブックが開発したのが、タイ固有のそれぞれの要件に対応する機能を標準装備するクラウド型会計・ERPサービスの「multibook( https://www.multibook.jp/ )」です。

タイの会計・監査についての基本は、こちら(https://www.multibook.jp/blog/1652/)の記事をご参照ください。


Excel会計からの卒業、決算の早期化と透明性を実現したタイ進出企業の事例:「multibook」

会計ソフトやシステムを使わずに、Excelによる会計処理にチャレンジしている中小企業も少なくありません。 日本、米国、東南アジアで飲食サービスを多店舗展開するある企業では、タイのパートナー企業が費用を抑えるためにExcelで会計処理を行っていました。しかし、手作業は間違いが多く時間がかかるため、タイムリーに損益状況を見られる状況にありませんでした。タイ国内での多店舗展開を目指す時、Excel管理に限界があることは明白で、会計システムの導入を検討したところ、現地スタッフはなじみのあるローカルソフトの導入を望みました。

ローカルソフトはタイ特有の会計処理には便利なものの、日本人が管理する上で必要な機能がなかったというこの企業では、銀行からの紹介で、日本製のクラウド型EPRの「multibook」を検討しました。拠点の状況が日本からリアルタイムに見られること、日本語・英語・タイ語で操作できレポート機能が充実していることが決め手となり導入。会計システムそのものが翻訳機能を果たし、勘違いによるミスもなくなりました。心配していた現地スタッフの抵抗もなく、逆に便利で簡単、見やすく手間がかからないと好評です。自分たちが望んでいた機能が網羅され、会計管理が格段にスムーズになりました。


まとめ

海外への進出国として人気のタイでは、ロジザードも早い時期から日系製造業や物流業をサポートしてきました。その中で、意思の疎通が図りにくい言語同士、特に社内管理上の課題を抱える企業も多く目にしてきました。タイ固有のルールは独特であり、それらに対応する機能を有する管理システムを導入することで、利便性を図るとともに業務の透明度を向上させ、不正やトラブルを抑止することができます。タイへの進出をお考えの方は、クラウドサービスでグローバルビジネスをサポートするマルチブック様、またはロジザードにお気軽にご相談ください。

監修

会社名:株式会社マルチブック
所在地:〒141-0031東京都品川区西五反田1-1-8 NMF五反田駅前ビル5階
設立:2000年9月
事業内容:海外経営への挑戦を身近に簡単にするクラウド会計・ERPサービス等の企画・開発・販売
https://www.multibook.jp/