COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。
海外進出を目指す日系企業が、いざ進出する際に課題となるのは、海外拠点における経営・会計管理の難しさではないでしょうか。今回は、海外拠点で「販売管理」「在庫管理」「会計」などの基幹システムを導入する際にやってしまいがちな失敗と注意点、日系のシステムを導入するメリット・デメリットについて、グローバル進出企業の会計・ERP(※注)システムに精通する株式会社マルチブックCEOの渡部様にお話を伺いました。
(※注)ERP:Enterprise Resources Planning/企業資源計画。企業活動で必要な経営資源や情報を一元的に管理し、限られた資源を効率的に活用しようという考え方。一般的には、この考え方を受発注管理や販売管理、生産管理、在庫管理、会計業務システムとして実現し、情報をまとめて管理できるシステムを指します。
(お話をお伺いした株式会社マルチブック 代表取締役CEO 渡部学氏)
少子高齢化、人口減少、そして直近ではコロナにおける日本政府の国内投資が他国に比して不足しているというマクロ構造的な問題により、経済成長の鈍化が続く日本では、グローバルにおける成長戦略なくして企業の成長は期待できません。しかし、日本でのビジネス感覚のまま海外に進出すると、現地で様々な壁にぶつかります。ダイナミックに変化する海外進出においては決断と実行スピードが求められますが、現地での攻めの営業活動が優先され、自社の管理やグループとしての守りの体制づくりなどの整備はおざなりにされがち。そのほころびが、思わぬ大きなトラブルとなって出現することがあります。
たとえば、海外進出企業の会計処理を例にとると、多くの企業が現地の会計事務所に記帳代行を依頼する、あるいは現地の経理スタッフを雇いスタートします。その際にやってしまいがちな失敗は、現地の会計事務所のスタッフや、現地採用の経理スタッフがすぐに業務を始められるよう、彼らが使い慣れたローカルソフトやローカルシステムを安易に導入してしまうこと。これはあとあと大変なことになるので注意が必要です。
なぜなら、ローカルソフトは現地言語に対応し、現地要件を満たしているものの、日本の本社が求める内部統制要件を満たさないうえ、日本における経営・会計資料になり得ず、別途本社報告用に情報を収集、管理しなければならない、本社と現地の勘定コードの相違いから、マッピングを手作業で毎月行う必要があり、その変換されたファイルを相互に2重で保管するなど、非効率な経理環境を生みます。また、ローカルスタッフによる、ローカルソフトでの運用を容認すると、業務がブラックボックス化しやすくなります。承認機能がないばかりか、変更のログ管理やバックアップもされていないソフトや起票後の上書き変更が可能なローカルシステムも多く、データの紛失、改ざん、最悪なケースでは着服等の会計操作など不正の温床になるなど、様々な観点でこうした安易なローカルシステムを用いた管理には問題が生じるケースが多いのです。
日本企業が多く進出するタイにおける会計管理システムを例にとり、ローカルシステムを使う場合のメリット・デメリットを考えてみましょう。タイには、「Express」という最もポピュラーな会計ソフトがあります。タイ語でタイの通貨、タイの税務要件に対応するローカルソフトで、タイで経理を学ぶ人たちのほとんどがこのソフトになじんでいます。そのため、「Express」を採用することで、現地で経理の求人がしやすく雇いやすいというメリットがあります。
一方、日系企業が管理する上では、以下のようなローカルソフトならではのデメリットがあります。
ローカルソフトに限らず、欧米企業が提供する小規模拠点向けのソフトを導入する手もありますが、対応言語がほぼ英語に限られること、ほとんどのソフトがアジアの要件には未対応なことから、日本企業が多く進出するアジア拠点では、十分に機能していない懸念があります。
では、日本本社と同じ基幹システムの導入を検討する場合には、どのような課題があるでしょうか? たとえば、日本本社で大規模なグローバル向けERPを導入している企業の海外拠点が小規模の場合、スケール的に無理が生じる場合があります。タイに見られるように、現地特有の法規制に適合するようカスタマイズが必要だと、多くの時間と多額なコストがかかることも考えなければなりません。
そこで、選択肢として考えたいのが、日本で開発した海外対応しているシステムです。株式会社マルチブック様が提供されている「multibook*」を例に、メリット・デメリットを見てみましょう。
*「multibook」:日系企業にとって海外拠点管理に必要不可欠な機能をコンパクトにまとめた、小・中規模拠点にフィットするERPです。
渡部様より
会計事務所に記帳代行を依頼する際、multibookを会計システムとして指定し、記帳代行を依頼することができます。すると、記帳状況や財務データを、現地法人の日本人管理者はもちろん、本社からの確認も可能となり、そのデータを自由に利用できるようになります。これまでのようにデータの入手に何週間もかかったり、データの提供を現地に都度依頼してExcelで加工したりするような無駄がなくなります。会計資料を急ぐ時に限って、現地が休日でデータが手に入らない!といった経理担当者あるあるの事案も回避できます。
海外進出企業が、内部統制のとれる基幹システムを海外進出状況に合わせて導入するパターンは、以下の3つのタイミングに代表されます。
拠点立ち上げ当初から、基幹システムの重要性を認識してシステムを導入する企業は、実はあまり多くありません。実際は、パターン2の2つのケースに見られるように、とりあえずローカルシステムを導入したものの、その後次第にローカルシステムによる運用が内部統制強化や決算早期化を阻害する一つの要因となっていることに気付き、日本本社を含めてグループ全体の状況のリアルタイムな見える化を目指して軌道修正するパターンが多いのです。これは、非常にロスがあります。海外拠点立ち上げ時のシステム選定こそが、重要です。その選択が、その後の事業展開のスピードや質を左右するといって間違いありません。
海外拠点のシステム構築の際、経営管理に直結する会計・基幹システムは、あとからの軌道修正が難しいものです。まず覚えておいていただきたいのは、安易にローカルソフトを導入しないこと。一般に会計税務の世界でも、予防のコストは発生後の失敗コストよりも各段に安いと考えられています。海外経営において、ガバナンスはもはや単なるコストではありません。日本からリアルタイムに海外拠点の経営状況が把握でき、内部統制が実現できるERPを、最初から検討することをおすすめします。海外拠点の管理業務の目配りがおろそかでは、企業活動の足元がゆらぎます。特に初めて海外進出する企業は、その後の事業展開を不安なく進めるためにも、ガバナンスの利いた体制作りを実現できる基幹システムの導入は非常に重要です。
会社名:株式会社マルチブック
所在地:〒141-0031東京都品川区西五反田1-1-8 NMF五反田駅前ビル5階
設立:2000年9月
事業内容:海外経営への挑戦を身近に簡単にするクラウド会計・ERPサービス等の企画・開発・販売
https://www.multibook.jp/