COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2024/04/24 運輸業・倉庫業(3PL事業者)

物流費の特徴や種類は?コスト削減の方法をご紹介!【2024年最新版】

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3PL事業者様の中には、「いかに物流費を削減するか」といったことに課題を感じている方もいるのではないでしょうか。企業がコストを効率的に削減するためには、どこに多く経費がかかっているのかを把握する必要があります。また、売上と経費を対比することで、その経費はどの売上項目から捻出するべきかを明確にして考えることができます。

倉庫業の場合、業務は「構内業務(在庫管理、保管など)」と「輸配送業務」の大きく2つに分かれます。そこで今回は、構内業務に焦点を当て、売上と経費を対比し、物流コストを削減する具体的な方法をご紹介します。

構内業務における売上と経費

構内業務において、売上は「荷役料金」「保管料金」「事務管理・システム料金」の大きく3つに分けられます。また、それぞれの売上項目の対比として、かかる経費は下の表の通りです。

構内業務の売上項目と経費項目

売上項目 経費項目
・荷役料金
(入荷、出荷、返品、棚卸などの作業)

・人件費(自社・外注)
・物流機器償却費
・包装材料費

・保管料金 ・地代家賃(借入物件)
・施設償却費(自社物件)
・水道光熱費
・事務管理・システム料金 ・人件費
・システム費

荷役料金

構内業務には、入荷、出荷、返品、棚卸などの業務があります。荷役料金は、多くの場合、各業務内容に対する作業費をもとに算出します。

荷役料金を算出するための作業費の例

  • 入荷    :20/1
  • 出荷(BtoB):40/1
  • 出荷(BtoC):120/1
  • 返品(BtoB):80/1
  • 棚卸    :5/1

物流企業の営業担当者は、各荷主の商材の形態、大きさ、重さ、取り扱う商材の難易度、1SKUあたりの点数などを考慮して作業単価を決めます。作業項目を失念したり作業の手間を軽く見たりすると、赤字になってしまうこともあるため注意が必要です。

荷役料金に対比する経費は、「人件費」「物流機器償却費」「包装材料費」などがありますが、大半は人件費が占めています。人件費には、物流現場で働く人の他にも、本社の人やセンター全体の事務を担当する人も含まれ、それらも荷役料金の売上から捻出します。
※会計上は、物流現場で働く人の人件費は売上原価に、本社の人やセンター全体の事務を担当する人の人件費は販売管理費として計上されます。

保管料金

倉庫のスペースには「保管スペース(在庫品保管)」と「作業スペース(荷役業務作業)」があり、通常は保管スペースの構成比率が大きくなります。倉庫1坪当たりの保管料金は、倉庫の利便性によって決まり、関東地区の場合は1坪4,000円~7,500円が相場となっています。

倉庫の利便性を決める項目の例

  • 拡張性   :業務拡大に伴い、同一ロケーションでのスペース拡大が可能
  • 配送効率  :高速道路に近い
  • 輸送インフラ:大手路線便企業の基幹センターに近い
  • 人手確保  :近くに団地・住宅・大学が多い

※必要なサービスレベルとコストのバランスを考慮して、倉庫のロケーションを決めることがポイントです。

保管料金に対比する経費の大半は「地代家賃(借入物件)」または「施設償却費(自社物件)」です。その他には「水道光熱費」が挙げられ、エアコン設備管理や温度帯管理を行っている施設の場合は水道光熱費の占める割合が高くなります。

事務管理・システム料金

事務管理・システム料金は、料金構成が低い事もあり、荷主から「荷役料金にインクルードしてほしい」と要望があるケースが多くあります。荷役料金にインクルードしない場合は、実費または実費で請求する場合が多いようです。

事務管理・システム料金に対比する経費は、「人件費」「システム費」などがあります。事務管理にかかった人件費や、使用しているWMSなどのシステム利用料が主となります。

物流費を削減するための業務改善策

物流費を削減するためには、日々の物流業務を改善する必要があります。改善方法は「既存の工程・手法を前提とした方法」と「新しいSCMや物流機器を活用した方法」の大きく2つに分けられます。

既存の工程・手法を前提とした改善方法

既存の工程や手法を活かしつつ、ボトルネックを見つけて地道に改善していくことで作業がスムーズになり、人件費の削減に繋がります。

前工程で、後工程が楽になる対応を実施

  • 入荷検品時にタグを表向き・同じ方向に揃えてから什器に収納する。
    ⇒出荷作業がスムーズになる。
  • ハンガー商品の入荷時、Zラックの収納率を80%以内にする。
    ⇒出荷時の商品送りが楽になる。

1人当たりのKPI値(1時間当たりの件数)が高い人の手法を、全員に研修

  • ① 個人別のKPI値を測定する。
  • ② 上位の人を把握する。(現場の責任者は把握しているケースが多い)
  • ③ 上位の人の動きを分析しマニュアルに反映する。
     ※処理手順だけでなく作業効率向上の視点も考慮したマニュアルを作成する。
  • ④ 良い事例・悪い事例(後者は責任者が実演)を撮影し、動画にする。

マルチタスク化(1人がどの荷主業務も対応できる)

  • ハンディーターミナルで該当の荷主を選択するだけで、どの荷主の業務も研修レスで対応が可能になる、といったシステム(WMS)を利用する。

物流業務改善に重要な、4つのステップ

  • ①物流業務効率化に向けて、荷主のニーズを踏まえた上で具体的な改善目標を決める。
  • ②現場のミーティングにて全員で目標を確認し、それぞれの現場で実行する。
  • ③目標達成状況を共有し、確認する。
  • ④達成した成果は、荷主と共有する。

このサイクルを繰り返し実行することが大切です。
※「物流=コスト」視点での対策です。

新しいSCMや物流機器を活用した改善方法

「物流=改革」の視点で、既存の工程・手法から大きく変える方法です。現場だけでなく会社全体の方針にも関わるため、多くの費用と時間を要しますが、長期的な目線で有効な方法と言えるでしょう。

シーズン直前に需要予測を実施

需要予測を1年前に行うと、世の中の情勢などにより予測と実数に乖離が生まれる場合があります。ZARA(スペイン、アパレル)では、従来1年前に実施していた需要予測をシーズン直前に実施することで、予測の精度を上げて生産することを実現し、世界中の店舗に空輸で商品をクイックに届け、消化率を大幅に向上させたという事例があります。

ロボットの活用

物流倉庫内でロボットを活用し、コストだけでなく物流品質(スピード、キャパシティー、精度)を大幅に改善することで、物流を全面的に見直すことも方法の1つです。この場合、経費としては、荷役料金の対比となる「物流機器償却費」が大きくなります。また、施設自体を新しく用意し商品保管方法を大幅に変更することが必要となるため、結果として保管料金の対比である「施設償却費」が大きなウエイトを占めます。ただし、これらの償却費は数年で低減できるため、数年後には圧倒的な信頼とコスト競争力という大きな武器を持った倉庫になるでしょう。ここまでの投資を行うことが難しい場合は、保管施設・保管方法を変えずに活用できる簡易型ロボットを導入することで、スモール改革を実現することも選択肢の1つとして考えられます。

まとめ

物流費を削減するために現場でできることとして、日々の物流業務を改善することが効果的です。現在の業務工程を大きく変えずに改善する場合は、入荷検品時にタグを揃えるなどの細かい作業や、KPI値の高い人の作業を参考にするといった地道な分析が必要です。また、1人がどの荷主業務も対応できるように、荷主ごとに簡単にハンディーターミナルの設定を切り替えられるWMSを利用するといった方法も良いでしょう。物流業務の改善方法やWMSの選定にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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小栗準一(おぐりじゅんいち)

ロジザード株式会社 営業部

大手小売業で販売・MDの経験を積み、大手小売業初の全商品バーコード化を実現。その後グループ会社にて商品情報システム、顧客管理システムの営業及び3PL運営・営業を通し、物流の重要性を強く認識。2012年ロジザード入社。物流と店舗運営の経験を活かした提案で、クラウド在庫管理システムをより多くの物流事業者様、小売事業者様にご利用いただくべく、研さんを重ねる。