COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2021/05/24 セミナー運輸業・倉庫業(3PL事業者)

3PL事業者がEC案件獲得に向けて注力すべき3つのポイントとは?

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小売りのEC化が加速する今、「ECに強い物流委託先」が望まれています。すでにEC物流に取り組む3PL事業者はもちろん、これから取り組もうとする事業者にとっても、EC物流の運営力や営業力の強化がより重要度を増すでしょう。

ロジザードでは、2020年9・10・11月に「《3PL事業者様向け》ロジザードEC×物流セミナー2020 ~45分でわかる!EC案件獲得のための営業極意~」を開催。株式会社リコウィル 代表取締役 大澤様にご登壇いただきました。当日は、「EC案件向け営業力の強化」をテーマに、EC向け物流の「サービス化」の提案と、料金設定やルール制定などの具体的な営業ノウハウの一例、EC物流営業ならではの注意点についてお話いただきました。セミナーの内容をコラムにまとめましたので、ぜひEC案件獲得の参考にしていただければと思います。

BtoB物流とBtoC(EC)物流の違いと、物流の「サービス化」

EC物流企業の支援を行うにあたりまずお伝えしているのが、BtoBとBtoCでは物流の基本形が異なるという点です。BtoB物流を手掛けてきた企業は、特にその違いを理解する必要があります。BtoB物流は、基本的に商品を荷主から取引先や店舗に届けることで完結します。配送先が店舗や取引先でロットが大きく、ダンボールに詰めた状態で配送が可能で、消費者には店舗でお渡しするスタイルです。消費者は来店して商品を購入し、自分で持ち帰ります。一方、BtoC(EC)物流では、荷主の店舗がインターネット上にあり、消費者はインターネット店舗で購入、荷主から直接消費者に届けることが、物流の役割になります。商品が直接消費者に届きますから、物流品質が荷主の評判に影響するため、物流の現場で緩衝材やラッピングなどの梱包に気を配る必要が出てきます。

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BtoC(EC)の販売事業者は、大多数が小規模事業者です。配送先は不特定多数の個人が中心、梱包点数は少量、梱包は一つずつ丁寧に、しかもスピードと正確性が求められます。BtoB物流からみると、BtoC案件は「規模が小さい」「在庫が細かい」「作業は多い」と、非常に面倒で効率が悪い業務に映り、EC需要が伸びているのは理解していても、なかなか手を出せずにいるのではないでしょうか。

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BtoC物流の特徴

ここは、BtoBとは視点を変えてみましょう。上図はBtoC物流の特徴を示したものですが、上段の網掛けされた3項目に注目してください。ECを、「インターネット上で個人向けに販売される、ほぼ同一の梱包材を使った物流」ととらえれば、同一作業を共通ルールでパッケージにして「サービス化」することが可能です。つまり、物流会社が物流そのものを営業するだけではなく、「サービス」提案企業に変革するチャンスととらえることができるのです。


EC案件獲得の鍵、「サービス化」のポイントと狙いどころ

では、どのような業務を共通化できるのでしょうか? 下図は、ロジザードZEROの営業資料で使われている業務フロー図ですが、BtoCの受注から出荷まではこの図とほぼ同一の流れです。この業務フローを基本に、自社でどこまで業務を共通化し、コストダウンを図れるか考えてみてください。その上で、荷姿やサイズ別の送料、入庫料、保管料などをいくらでお客様に提供できるか、検討してみましょう。

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BtoC物流の基本的なフロー

ただし、ここで目指すのは「完全なサービス化」ではありません。すでに、こうした業務フローを「完全サービス化」して提供する事業者は存在します。完全サービス化すれば、物流事業者にとっては営業も運用も容易ですし、荷主にとっても明確な料金になるのでよいのですが、一方で価格競争になりやすく、後発事業者が先行する事業者の料金設定に勝つには、相当な資金力(設備やシステムへの投資)が必要になります。それよりも、基本的な運用は統一しながらも、完全サービス化の提供事業者が手を出しにくい、小回りの利いた(融通の利く)運用を提案する「半サービス化」を目指すことが賢明です。個別提案よりも低コストで、完全サービス化よりも柔軟な運用ができる倉庫をアピールして、他社との差別化につなげるとよいでしょう。

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「サービス化」で注力すべき3つの重要ポイント

BtoB案件の場合は、「お客様ありき」で要望に応えるスタイルが主流です。しかし、BtoC向けのサービス化のベースとなるメニューは、事業者自らが主体的に決めていくことが大切です。注力すべきポイントは次の3つです。

それぞれのポイントについて、具体的に解説します。

1:宅配送料調達の5つの要点

サービス化にあたり、運賃が高ければ競争力のある価格設定ができません。宅配送料の調達は極めて重要な課題です。調達上押さえたいのは、以下の7項目です。

① 基本は宅配3社(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)
② 実績をベースに相談する
一時は「宅配クライシス」が叫ばれ各社が運賃を値上げしましたが、今は若干状況が変わってきています。目安となる金額を提示し実績ベースで交渉してみましょう。ただし、「月1,000個以上になる予定」など、実体のない夢物語的な数字を提示しないこと。そして、BtoB扱いで大口料金を契約している場合、その中にBtoC案件を混ぜないよう注意してください。BtoB扱い運賃の値上げにつながってしまいます。 また、可能な場合は自社で配送サイズの事前登録・集荷ではなく持ち込みの検討もしてみてください。

① 宅配事業者との契約はケースバイケースで判断する
最近宅配事業者は、荷主との直接契約を望むケースが増えています。倉庫での契約獲得がベストですが、荷主規模感などを考慮して、ケースバイケースで交渉してください。
② ポスト投函便の調達も忘れない
③ 宅配3社以外の配送方法との組み合わせも検討
配送方法は多様化しています。サイズ的にポスト投函が可能な商品も増えているので、ネコポスなどのポスト投函便も加えます。また、地域限定型配送業者(例:JAD宅配急便)なども組み込み、できるだけトータルの配送コストを抑えましょう。

2:基本ルール(受託条件)制定の要点

共通のルールを作ることで、オペレーションコストを軽減することが目的です。ルールの制定上押さえたいのは、以下の7項目です。

① 共通サービスのルールであることを前提とする
② 通常業務とイレギュラー業務を明確にする
ラッピングなどのイレギュラーな業務については、オプション扱いにするとよいでしょう。

③ 扱い可能品を明確にする
倉庫によって得意・不得意、向き・不向きな商品があるはずです。大型貨物が得意なのか、アパレル向きなのかなど、自社が何を扱えるのか、扱いたいのかをはっきり提示することが大切です。

④ 締め時間のルールは重要
⑤ 土日祝日、365日稼働は必須ではない
ECでは、当日出荷の要望が増えています。「当日14時までの注文は当日発送可能」などの条件決めが、重要です。また、土日や365日稼働についても、「主体的」にルールを決めておくことが必要です。

⑥ 社内での運用ルールを同時に制定する
⑦ 問い合わせ窓口など、連絡手段を明確にする
受託条件と同時に、社内の運用ルールも合わせて決めます。荷主の追加要望が積み重なって、ルールがなし崩しになる可能性があるからです。荷主別のルールは混乱の元となり、効率を下げてしまいます。また、サービス提供者として、サポート体制(問い合わせ窓口など)も忘れずに準備します。

3:標準料金設定の要点

提供するサービスに見合う標準料金を設定するために、注意したいのは次の6項目です。

① BtoB との相違点を明確に理解する
② 工程ごとに作業料を算出する
BtoBとBtoCでは作業内容が異なります。同じ料金体系(グロス)で見積もるのはやめましょう。そのためにも、作業単位で料金単価を設定する必要があります。「こういう作業があるからこの料金」と、作業と費用を紐づけておかないと、後に利益や作業効率などの検証ができなくなります。荷主には詳細まで見せる必要はありませんが、自社の作業メニューはきちんと作っておきましょう。

③ ターゲット規模を設定する
④ ターゲット規模を基準に固定費を設定する
⑤ システム費用などその他の支出も忘れない
BtoCの荷主のほとんどは小規模なお客様なので、受託したい規模感を自分たちで決めておきましょう。1か月に何件受託すれば利益が出るのか、受託すべき最低ラインを線引きします。ターゲットの規模感に基づき固定費を設定しておけば、間違いありません。その際、例えばロジザードなどのシステム費用や資材なの支出費用も忘れずに計上すること。作業料金にざっくりと埋め込むと回収できない可能性が生じますので、要注意です。

⑥ 安値で売らない。適正料金での受託を心がける
サービスとは「価値」。価値を売りましょう。価格を下げるのは簡単ですが、一度下げた価格を元に戻すことは容易ではありません。赤字案件となると最終的には荷主への対応もおろそかになるため、適正料金の維持を心がけてください。


EC案件獲得に大切なのは営業のファーストコンタクト

BtoC事業者の多くは、アプリなどでプラットフォームを手軽に利用し、ECを運用しています。彼らが好むのはファーストフードのような手軽さとスピード感、かつプロフェッショナルな対応で、従来のように一つひとつ要件定義をしながら詰めていくBtoB型の営業とは勝手が異なります。何よりも、「ファーストコンタクト」で自分たちが欲しい答えを得られるかが肝で、軽く問い合わせたらすぐに見積もりが出る、といった手軽さを求めています。EC事業者には、特殊な対応以外は即答できる体制作りが大切です。極端な話、「基本のサービスからまず使ってみてください、細かい点は後から詰めましょう」でいいのです。自分たちが分からないことを相談されたら、「できない」とは言わず、ロジザードが提供するような営業支援サービスを利用して、答えを見つけていけばいいのです。
実際に、Webを活用して営業している倉庫が、ECの荷主の獲得に成功しています。営業というよりは、「便利なサービス」を案内するというポジションで接し、手軽にサービスを利用してもらうことから取り扱い範囲を広げていくとよいでしょう。


まとめ

今回ご紹介した内容はあくまでも一例にすぎず、すべての3PL業者の方々に当てはまるものではありません。しかし、共通化できる作業はできるだけ共通化して、「ファーストフード」のイメージでサービスを提供することが、BtoC物流営業のポイントであることは間違いありません。ご紹介した具体的なサービスプランの作り方を参考に、それぞれが得意とする部分を活かして、新しい営業スタイルを創意工夫してみてください。リコウィルもロジザードも、3PL事業者の皆様の新しい挑戦をサポートいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

ゲスト講師紹介

大澤 浩史 氏(おおざわ ひろし)

株式会社リコウィル 代表取締役
ロジザードZERO認定エージェント:https://www.logizard-zero.com/agent/lz-1601

大手 運送会社への就職を機に物流業界へ。途中留学を経て、物流コンサル会社へ入社。通販物流システム、倉庫管理システム(WMS)の開発や、請負体制の構築、現場作りを経験。その後、物流会社の新規立ち上げ要員として活動、より多様な物流に携わる。2019年に物流会社や物流部門向けの包括支援を行う、株式会社リコウィルを創業。現場目線の包括的、具体的な支援を強みに活躍中。

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