COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2025/09/01 物流業務の効率化

第1回|見える化から始める生産管理・分析ツール入門

第1回|見える化から始める生産管理・分析ツール入門

物流業界では2024年問題や慢性的な人手不足が深刻化し、"数字で現場を捉える" ことが急務になっています。本コラムは 株式会社KURANDO(以下、KURANDO)社監修 のもと、物流DXを推進するうえで中核となる物流現場の 「生産管理・分析ツール」 を軸に、次の3ステップで現場改善の本質に迫ります。


  • ステップ1 ― 可視化・記録:作業をデジタルで記録し、現場を"見える化"する
  • ステップ2 ― 計画・予実突き合わせ・分析:作成した計画と工数データとWMS出荷実績を組み合わせ、"意味のある数字"に変換する。
  • ステップ3 ― 行動・仕組み化:可視化・分析したデータをもとに自動配置やシミュレーションで現場を動かす。

本コラム第1回では、このステップ1「可視化・記録」にフォーカスし、見える化を始めるための基本と実践例を解説します。

物流現場の主な課題

物流現場では「作業が終わらない」「なぜか残業が減らない」といった声が絶えません。突き詰めると どの工程で時間とコストが消えているか を数字で把握できていないことが多く、改善の出発点となる"見える化"が欠けています。例えば、現場を取り巻く主要課題には次の 3 つがあります。

  1. 2024年問題 ― ドライバーの時間外労働規制強化で輸送リードタイムが短縮され、倉庫には一層スピーディーな処理が求められる。
  2. 人手不足 ― 高い離職率と採用難により人員が慢性的に不足し、計画的なシフト編成が難しい。
  3. 波動対応 ― 特にEC物流はキャンペーンや季節要因で物量が急増し、残業や応援要員コストが膨張しやすい。

物流センターでは想定外や急な変化に対しては効率性やコストを代償に吸収していますのでこれらの課題が重なると、さまざまな点で生産性を落としています。ですが上述の通り、見える化が欠けてしまっているとボトルネックの特定や採算管理、教育効果の測定が難しくなり、想定通りの時間や費用で現場を回すことがすぐにできなくなってしまうのです。

物流現場における生産管理・分析とは

物流の「生産管理」とは、入荷から出荷までの一連の庫内オペレーションを"生産工程"として捉え、作業量・人員・設備を計画‐実績‐改善のサイクルで統制するマネジメント手法を指します。製造業の生産管理がライン稼働率やタクトタイムを重視するのに対し、物流現場では 人時生産性(1人1時間あたり処理件数) などで計測することが一般的です。
一方「分析」は、これら指標を裏付ける作業データを定量的に可視化し、改善アクションを定義するプロセスです。たとえば、それぞれの作業データを関連する工程別に並べボトルネック要因を特定する、曜日別に作業量と生産性を確認し特定曜日に生産性が下がる要因がないか確認するなど、様々な切り口で見方を変えることで課題を発見する行為を指します。

生産管理による可視化データをもとに、①人員再配置を行い当初計画に近い生産性を出す、分析によって判明した改善ポイントにより、②作業やレイアウトの変更③設備投資(自動搬送・仕分け)などの施策を実行する。

そういった現場運営へ確度の高いアプローチを実現させることが生産管理・分析の最大の価値です。


なぜデータによる判断が欠かせないのか

現場の判断が"経験と勘"に頼るままでは、改善は属人的になり再現性がありません。たとえば、

  • 感覚のばらつき:同じ遅延でも「まだ余裕」「もう危険」と担当者によって評価が分かれる。
  • 経験依存の配置:ベテランの"肌感"で応援を呼ぶため、要員過不足が起こりやすい。
  • 効果測定の難しさ:改善施策を打っても、良かったのか悪かったのかを数字で証明できない。

現場の生産性やコストを"数字で見える化"すれば、現場・管理・経営が同じ根拠で優先度を共有でき、ボトルネック工程や低採算荷主など改善ターゲットが明確になります。また、数値根拠によって現場スタッフや荷主への説明責任を果たしやすくなり、施策の合意形成が加速します。
この限界を突破するには、作業データを取り、数値で語れる基準を作ることが不可欠です。生産管理・分析ツールはそのための最短ルートを提供します。


生産管理・分析ツールで出来ること

生産管理・分析ツールは 「取る・見せる・気付く」 をワンパッケージで実現します。主な機能は次の 3 つです。

  • バーコード/QR打刻:スタッフが工程の開始・終了をワンタップで登録。手書き入力と比べて誤記・転記ミスを大幅に減らし、日次入力時間も短縮できた例が多く報告されています。
  • リアルタイムダッシュボード:工程別の進捗を色分け表示し、遅延ラインが赤点灯。現場リーダーは応援配置を即決でき、残業を抑制。
  • 工数・収支レポート:荷主別・工程別の 1 件工数と収益を自動算出し、低採算荷主への料金改定や工程再設計の根拠を提供。

これらの機能が、"勘と経験"に依存していた現場を "数字と客観"で動くマネジメントへシフト させるカギとなります。
さらに、こうしたツールはクラウド型・月額制など手頃なモデルが主流で、小規模拠点でもすぐに導入しやすい点も大きな魅力です。


"数字で見る"ことがもたらす3つのインパクト

作業データを取るだけでは"不動の数字"ですが、ダッシュボードで共有し全員が意識した瞬間に現場は動き出します。数字が会話の共通言語となり、改善のスピードと質が一気に変わる----それが見える化の真価です。

  1. 判断の共通言語化
    進捗・負荷を誰もが同じ指標で把握し、「忙しい/余裕」の曖昧さを排除。
  2. 対応の高速化
    発生した課題が即時に把握できるため1.原因の特定が容易、2.対応までの時間の短縮が実現可能。
  3. 属人性の低減
    ベテランの勘からデータ基準の配置判断にシフトし、再現性を高める。

データを掲げた会話が当たり前になると、"なんとなく残業" や "なんとなく応援" が消え、倉庫全体が数字・データドリブンで自走し始めます。

導入を定着させる3つのステップ

生産管理・分析ツールは "継続してこそ成果が出る" 仕組みです。以下の 3 ステップを順に定着させることで、現場は数字ドリブンの文化へと自然に移行していきます。

  • ステップ1|大括りで記録する
    入荷・ピッキング・梱包・出荷の4工程だけとするなど、簡単なものをセッティングし毎日必ず打刻する。"続けて実施し、慣れること"を最優先。データの取得が行われるようになってから、精度を上げていきます。
  • ステップ2|関係者に結果を共有する
    取得したデータを管理者だけが見るものとせずに、簡単なものでも構わないので、取った結果を作業者のみんなに見せます。自分たちがデータ取得したものが実際に使われていくことを実感することで、データ取得に協力しようという気持ちが高まります。
  • ステップ3|数字に具体性を持たせ、意識する
    取得して出てきたデータを基にした目標値をかかげ、その結果の数字を確認するようにします。具体的な数字に関心を持つようになってもらえればしめたもので、工程を細かくしたり、データの確認頻度をあげるなど、やりたいレベルのデータ活用を進めても数字ドリブンの現場を継続していくことができます。

無理せず、このような 3 ステップを焦らずきちっと回すことにより現場で実施しているデータ取得の意味合いが理解され、全ての現場で継続性のある取り組みにすることができます。


次回に向けたステップアップ

物流現場において 見える化と分析は改善への道しるべです。見える化した数字をどう読み解き、具体的な行動につなげるかが生産性向上のカギを握ります。
さて、ここまでで現場の"見える化"基盤をご紹介しました。次のコラムではこのデータを 作業計画とWMS の出荷実績と突き合わせ、単位生産性や収益性を多面的に可視化するステップの紹介へ進みます。工数と実績を組み合わせることで、荷主別・作業者別の採算やエリア別パフォーマンスが明確になり、配置最適化や料金見直しの根拠が得られます。

監修
株式会社KURANDO 代表取締役 岡澤一弘 様

株式会社KEYENCE、株式会社ダイアログで物流向けソリューション営業を担当し、100ヵ所以上の現場を訪問。そこで「モノは管理できても人の作業が見えにくい」課題を痛感し、2019年に株式会社KURANDOを創業しました。誰でも手軽に使える倉庫内DXツール「ロジメーター」シリーズを開発し、発売1年で100センター超に導入。現在はユーザー同士のノウハウ共有を推進し、現場発の改善で物流業界の課題解決に挑んでいます。