COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2025/09/08 物流業務の効率化

第3回|"動かせる現場" を実現する生産管理・分析ツール

第3回|

物流業界では2024年問題や慢性的な人手不足が深刻化し、"数字で現場を捉える" ことが急務になっています。こちらのコラムでは株式会社KURANDO(以下、KURANDO)社監修 のもと、物流DXを推進するうえで中核となる物流現場の「生産管理・分析ツール」を軸に、次の3ステップで現場改善の本質に迫ります。


  • ステップ1 ― 可視化・記録:作業をデジタルで記録し、現場を "見える化" する
  • ステップ2 ― 計画・予実突き合わせ・分析:作成した計画と工数データとWMS出荷実績を組み合わせ、"意味のある数字" に変換する。
  • ステップ3 ― 行動・仕組み化:可視化・分析したデータをもとに自動配置やシミュレーションで現場を動かす。

本コラム第3回では、このステップ3「行動・仕組み化」にフォーカスし、KURANDO社が提供する庫内可視化ツール「ロジメーター」と庫内業務支援ツール「ロジボード」を例に、数値をもとに現場を動かす具体策を紹介します。

開発背景:WMSから切り離した "外付け分析" という選択

物流現場からは「作業者の負荷や工程ごとのコストを数値で把握したい」という声が年々高まっていました。かつて岡澤氏が在籍したWMSベンダー企業にも「作業者の生産性を分析したい」「工数を自動で集計したい」という要望が年々増加していました。
とはいえWMS(倉庫管理システム)は出荷を "絶対に止めてはいけない" システムで、トラブルや現場に負荷をかけるようなことは許されません。そこへ負荷の重い処理を組み込めば、障害リスクが跳ね上がり、アップデートコストも現実的ではなくなります。
岡澤氏はこの課題を踏まえ、「分析は外付けで良い。むしろ独立している方が現場も開発も身軽になる」と判断。ユーザーが月額で気軽に使える価格帯を維持しつつ、WMSとはAPI連携でデータをやり取りする分析ツールを開発しました。分析処理とダッシュボードはクラウド側で完結し、WMSは軽いまま、新機能を迅速に追加できます。
さらに、サービスを"標準パッケージ"として提供することで、一現場ごとに個別開発する負担を抑え、多くの現場へ短期間で展開できる"コスパ重視"のモデルを実現しました。

この分離設計により、

  • 出荷停止リスクをゼロに近づけながら分析を実現
  • 低コスト・短期間で導入でき、中小規模倉庫にも展開可能
  • 属人的な勘や手書き管理を排除し、誰でも同じ指標で現場を回せる環境を提供

こうした背景と思想が、「ロジメーター」「ロジボード」「ロジスコープ」の誕生を後押ししました。


計画・配置・調整が " 仕組みで回る " ことの意味と再現性マネジメントへの移行

ロジメーターとロジスコープによる可視化と分析だけでは、現場を動かす " 最後の一手 " が属人的な判断に戻ってしまう可能性があります。「ロジボード」は、蓄積データをもとに作業完了予測・人員シミュレーション・応援指示まで半自動化し、判断・配置・調整業務をシステムで支援します。

  1. 出荷ボリュームから作業量と必要工数を計画:出荷の予測値と生産性からシステムが現場作業、時間別進捗を表示します。可視化された計画に対しリーダーは"間に合わせる"ための打ち手に集中できます。
  2. シフトに基づく配置を自動提示:時間帯と作業経験を掛け合わせ、配置案を自動生成。経験差も係数を登録することで計算結果へ反映されるため、再現性の高い人員配置が実現します。
  3. リアルタイム応援判断:進捗ガントチャートで遅れている工程に必要応援人数が数値根拠をもとに表示。別の工程の現在人員や進捗状況も相互に共有できるため、最適な応援実施をスムーズに実現します。
  4. 計画と実績の振返り:作られた計画に対して、現場で実行したデータが自動であてこまれ、検証されることで次回計画作成の精度が向上

こうした仕組みにより、ベテランの"肌感"に頼らず、誰が見ても同じ指標で同じ判断ができる"再現性マネジメント"が確立します。結果として、波動期の残業削減や応援配置の的確化が常態化し、PDCAサイクルが日次で回る"動く現場"が生まれます。

ロジメーターで"取る・見せる"基盤を築く

ロジメーターは、倉庫現場での作業をワンタップで打刻し、リアルタイムに工数と作業状況を可視化できるクラウド型の生産性管理ツールです。
このサービスは、「手書き取得している作業工数を簡単にデジタル化できる仕組みを入れたい」という現場の声から生まれました。「誰が・何を・何時間」という情報を最低限の打刻のみで取得できます。

  • ワンタップ打刻で簡単:タブレットのQRコードで開始・終了を登録。手書きに比べ記録と集計工数を90%以上削減した現場もあります。
  • リアルタイムダッシュボード:工程別人員配置状況がリアルタイムで更新され、どこで誰が作業しているかを瞬時に把握。
  • CSV/APIで双方向連携:ロジザードZEROと連携し作業進捗情報を自動更新。細かな単位での作業進捗の更新が手間なく実現します。
  • カスタムKPI&レポート:合わせて提供しているロジスコープを使い、自社専用のレポートを設定し、好きなグラフを追加できます。荷主別・エリア別・計上日別など"見たい切り口"を設定すると週次や月次でレポートが自動作成されます。

ロジメーターは、細かく取れる代わりに毎日使うのが大変だった従来の計測ツールに対し、シンプル操作と段階的レベルアップで定着を促進。"取る・見せる"文化を無理なく根付かせます。


ロジボードで"動かせる"データ活用機能を実現

ロジボードは、シフト情報とロジメーターとWMSのデータを突き合わせて、「次に打つ一手」を提示する「簡単な」庫内業務管理支援ツールです。システムに不慣れな現場でも直感的な操作で動いてくれるよう設計されています。

  • シフト工数と作業量比較:取り込んだシフト情報を各スタッフごとにチームや所属会社別に集計し、想定される作業量とのバランスが適正かを表示します
  • 作業計画作成とシミュレーション:シフト情報をもとに当日の各作業者の作業計画と進捗計画が自動作成、印刷して各作業者への指示が伝えられます。
  • 進捗ダッシュボード:WMSから取得した実績データを計画と突き合わせてリアルタイム表示。時系列で見る折れ線グラフ表記、主要工程複数をまとめてみるカード型表記、全工程を一覧化するリスト型表記を使い分けて表示できます。
  • 月間ボード:当月の予算目標を設定でき、これまでのコスト投下状況の把握と月末までの予測値が表示されます。

こうした機能により、WMSが保持するアイテム種別数量・ロケ情報とロジメーターの工数ログが結びつき、アイテム種別やエリア別やゾーン別の生産性を用いて現場に役立つ情報として出力。「優しい現場」─ すなわち数字で会話しながら誰でも配置判断できる現場を実現します。

導入事例:残業削減・収益改善を叶えた実績

KURANDO社の「ロジメーター」「ロジボード」は、すでに800以上の現場に導入され、業種や規模を問わず庫内管理業務の効率化を支えています。
たとえば、商材が多様なEC倉庫では、工程打刻を開始してわずか2週間で遅延ラインが可視化され、応援投入タイミングの最適化により月間残業時間を30%削減。同時に作業者あたりの人時生産性も12%向上しました。
一方、複数荷主を抱える3PLセンターでは、荷主別工数と売上を確認して収益を可視化し、低採算業務の工程再設計と料金改定を実施。その結果、センター全体の収益率が改善し、年間換算で数千万円規模の利益増を達成した例もあります。
これらの事例が示すとおり、「ロジメーター」「ロジボード」は【作業を取る→見せる→動かす】サイクルを確立し、残業削減と収益改善を同時に実現する現場を生み出しています。


今後の展望:AI配置シミュレーションと継続的改善への道

KURANDO社では、今後も数値を活用した自動化領域の拡大を目指しています。まずはロジボードのAI配置シミュレーションを強化し、波動や欠員が発生した際にも数分以内に最適な配置を再計算できる仕組みの実装を検討しています。また、ロジメーターやロジボードに集まったデータをAIに監視させ、管理者やマネージャへ問題の有無を自動で報告させる仕組みを作り予定からの差分を早期に捉えて作業計画へ自動反映させる構想も進んでいます。
これらの機能が実装されれば、日次のPDCAサイクルがさらに高速化し、現場が自律的に改善を続ける未来がより現実的になるでしょう。「ロジメーター」「ロジボード」は、データ活用のハードルを下げながら、現場と経営をつなぐ共通言語として今後も進化し続ける見込みです。物流現場の未来は、数字を起点に"誰もが行動できる"世界へと加速していくでしょう。


シリーズ総まとめ:可視化から行動へ ─ 数字で動く物流DXのロードマップ

本シリーズでは、KURANDO社監修のもと、物流現場の「生産管理・分析ツール」を軸に、物流DXを推進するための本質的な現場改善ステップについて解説してきました。
ポイントは「数字→気づき→行動」を高速で回すこと。可視化したデータを分析し、すぐに現場オペレーションへ反映させることで、人手不足や波動対応といった課題に先手を打てます。可視化・分析・行動の三段階を一気通貫で回すことで、数字を起点にした現場改善のサイクルは加速度的に回り始めます。
まずは身近なデータから"取る・見せる"を徹底し、気づきを"行動"に落とし込むことで、現場に着実な成果をもたらす第一歩となるでしょう。

監修
株式会社KURANDO 代表取締役 岡澤一弘 様

株式会社KEYENCE、株式会社ダイアログで物流向けソリューション営業を担当し、100ヵ所以上の現場を訪問。そこで「モノは管理できても人の作業が見えにくい」課題を痛感し、2019年に株式会社KURANDOを創業しました。誰でも手軽に使える倉庫内DXツール「ロジメーター」シリーズを開発し、発売1年で100センター超に導入。現在はユーザー同士のノウハウ共有を推進し、現場発の改善で物流業界の課題解決に挑んでいます。