COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

ABC分析とは?

売上高やコスト、在庫といった評価軸を1つ設定して、多い順に「A」「B」「C」の3つにグループ分けをして優先度を決める「ABC分析」。物流や、EC(電子商取引)をはじめとした小売業を中心に、ビジネスの方向性を考える際の有効な経営分析指標として注目されています。ここでは、ABC分析を進める上で必要な手順や、効果的な活用法について解説します。

ABC分析の概要

基本となる「パレートの法則」

ABC分析について考える際に、押さえておく必要があるのが「パレートの法則」です。「売り上げの8割は、全体の2割の商品がもたらしている法則」と言えば、聞き覚えがあるかもしれません。

この法則を発見したイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートは、1880年代の欧州の経済統計から「個人の所得額」と「その所得額以上の所得がある人の数」との間にある法則が存在すると提唱、「全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」とする学説をまとめました。

構成要素2割が結果の8割を生み出している

物流・小売業におけるABC分析の重要性

パレートの法則をビジネスに応用した一例が、ABC分析と言えるでしょう。特に在庫商品の金額や売り上げなどの指標の中から重視する評価軸を決め、商品を累積構成比の多い順に分類して管理する効果的な手法として、認識されるようになりました。

ここでは、物流・小売業における在庫管理の観点を中心に、ABC分析の全体像を探ります。ABC分析は、物流や小売業における効率的なビジネスの実現に欠かせない手法とされています。その理由は、在庫管理の最適化に有効であることが実証されているからです。


ABC分析のメリット~物流における効率化とDX

在庫管理とコスト削減

サプライチェーンの円滑化について考える時に、重要な機能の筆頭に挙げられるのが、在庫管理の最適化です。とはいえ、それに要するコスト負担をできるだけ軽減しながら、適切な在庫を管理するのは、決して容易な取り組みではありません。

ここで威力を発揮するのが、ABC分析です。複数の商品に対して、重要度や優先度を決めることで効果的に管理する発想は、在庫の最適化を推進する取り組みとの親和性が非常に高いわけです。

最適な在庫管理は、商品ロスを削減します。つまり、コスト削減にも効果を発揮することになります。商品を消費者に無駄なく届けることができる、まさにサプライチェーンの最適化に欠かせないのがABC分析という手法なのです。

ABC分析を活用した在庫管理のイメージ

ここで、在庫管理におけるABC分析を活用した商品群の分類イメージをご紹介します。まずは、売上高の大部分を占める最重要品目を集めた「Aグループ」。パレートの法則になぞらえるならば、「売り上げの8割をもたらす、全体の2割の商品群」に相当するグループです。いわば最も売れている商材であり、欠品を起こすことのない管理が求められる部分であり、在庫が切れないように意識して発注する必要があります。

次に、基本的に現状維持の発注で十分と考えられる「Bグループ」。売り上げ全体のベースともなる部分ですから、在庫が切れたとき、またはその直前に発注することで、在庫の適正化を図ることができるでしょう。

最後に、売り上げ自体はあるものの全体に占める割合が少ない「Cグループ」。在庫管理における重要度は高くありません。場合によっては、より利益が見込める商品への入れ替えも検討すべき商品群です。ここは、在庫が切れた段階で発注すれば十分なカテゴリーであると言ってよいでしょう。

ビジネスパフォーマンスの最適化とDX

商品の発注優先度の観点から、在庫管理の重要度を3つに分類するABC分析は、いかに効率的な手法であることが分かります。在庫の最適化を進める最大の目的、それはビジネスにおける収益の最大化を実現することです。

こうして考えれば、ABC分析によるビジネス面での利点は、まさに「パフォーマンスの最適化」であるわけです。さらには、DX(デジタルトランスフォーメーション)による在庫管理の改善を支援する手段としても、ABC分析は有効であると言えるでしょう。

社会に不可欠なインフラ機能を担う物流業界は、消費トレンドの多様化と少子高齢化による人材不足が重なり、様々な課題が顕在化しています。その解決策として注目されるのが、DXによる業務改善です。

とはいえ、こうした業務の最適化を推進するために欠かせないのが、その現場における課題抽出です。在庫管理においては、売上高実績や市場のトレンドなど、商品の特性に即した対応が求められるでしょう。こうした取り組みをスムーズに進める手段として、ABC分析が重要になるわけです。


実践的なABC分析~第一歩を踏み出すために

分析に必要なデータの収集

ここまで、ABC分析の概要と目的について考察しました。ここからは、その具体的な運用方法を紹介していきます。

第1段階は「データ収集」です。在庫を管理する際にABC分析を行う場合は、販売を管理するシステムなどで収集したデータがベースになるでしょう。特に売り上げで分類する時には、分析する対象の商品にかかる売上高のデータを、金額の大きい順に並べておくと、効率的に分析できます。

売上構成比の計算による3グループへの分類

続く第2段階は、「売上構成比の計算」です。ABC分析を行う際の基準となるのが、全体に占める各商品の売上構成比であり、比率の大きな順に分類を進めることになります。売上構成比の算出は、一定の期間を設定した上で、各商品の期間内の売上高を全体の売上高で割ることによって、求めることができます。

こうして弾き出した売上構成比に基づき、いよいよABCの3グループに分類していきます。これが第3段階です。各商品について、売上構成比の大きい順に並べ替えることにより、「累積構成比」を求めます。

累計構成比は、データの累計における各項目の構成比の合計です。各項目の構成比を足し合わせたもので、全体に占める割合を示すものです。分類時の基本的な目安は、Aグループ「累積構成比が7割までの人気商品」、Bグループ「累積構成比が7割から9割までの一般的な商品」、Cグループ「累積構成比が9割から10割までの不人気な商品」、となります。

効果的なパレート図の作成

こうしてABC分析を進めるにあたって重要なポイントとなるのが、その内容の「見える化」です。分析結果を、視覚的に傾向をつかみやすい形で示すことで、在庫管理における最適化をより効果的に示せるのです。

ここでは、それを実現する方法として、「パレート図」をご紹介します。数値が降順にプロットされた棒グラフと、その累積構成比を表す折れ線グラフを組み合わせたもので、多様な要因の中から最も重要なものを浮き彫りにする作業を進める際に効果的です。

パレート図の作成にあたっては、準備した元データを表計算ソフトに反映させながら、棒グラフのサイズや折れ線グラフの開始位置を調整していきます。グラフの目盛りの調整などを経て、完成させていきます。


物流・小売業のためのABC分析事例

季節性商品とトレンド商品の効果的な管理と留意点

在庫管理におけるABC分析では、対象とする商品群の特性を明確化する必要があります。ここでは、「季節性商品」と「トレンド商品」について考えます。

季節性商品とは、四季の中で特定の季節に販売される商品を指します。期間全体の売上構成比が小さくても短期間で大きく売り上げる可能性がある、重要度の高い商品群です。商品同士での関連性が大きな意味を持つカテゴリーであるのも特徴で、Cグループの不人気商品と位置付けられる商品であっても、Aグループの商品と関連性があれば重要度は上がることになります。

一方のトレンド商品は、メディアやSNSなどで取り上げられることで、特定の期間に売り上げが急増します。いわば一過性のこうした商品群は、全期間の時間軸で検証した分析では下位ランクに分類されることがあるでしょう。こうした場合も、一時的にAグループに分類して、在庫がなくならないよう発注する必要があります。

ここで注意すべきは、こうしたトレンド商品の存在を考慮せずにABC分析を行うと、適切な分類を見誤るおそれがあることです。ABC分析に際しては、全体の分析結果とトレンド商品の分析結果をそれぞれ計算するとよいでしょう。一過性の商品でも人気が安定すれば、定番商品になり得るからです。

BtoBとBtoCの違いに応じた分析アプローチ

在庫管理の最適化を推進する目的でABC分析を行う場合は、取り扱う商材が事業者向け(BtoB)であるか消費者向け(BtoC)であるかによって、アプローチを変える必要があるでしょう。在庫の「位置づけ」が変われば、その管理を巡る検証のスタンスも異なってくるためです。

特に消費者向け商材であれば、一過性のトレンドに左右される余地が大きく、その変動も顕著になるでしょう。必然的に、より機動力の高い在庫管理が要求されるため、その商材の売り上げにかかる動向を注視しながら、柔軟に対応しなければなりません。

AIやビッグデータを活用した分析技術

ABC分析では、基礎となるデータ収集力の充実さが、的確な判断に直結します。データ収集力が分析精度を左右すると言えるでしょう。そこで、ABC分析におけるデータ収集方法として注目されているのが、AI(人工知能)の活用です。

AIの学習能力に着目し、商品特性に基づく売り上げの動向や様々な特性を分析に反映させる取り組みが、先進的な現場で始まっています。基礎情報となるデータがより実態を反映した精度になれば、ABC分析の内容も必然的に充実度を高めることができるでしょう。同様に、ビッグデータの活用も、分析技術を向上させる取り組みとして期待が高まっています。


ABC分析で注意すべきポイント

在庫管理に有効なABC分析ですが、その運用には留意点もあります。季節性商品とトレンド商品など、商材の特性に合わせた対応が欠かせないことについては、前項で説明しました。大切なのは、商品のABC分類が市場動向などによって変化する可能性を忘れないことです。

こちらも先に触れましたが、Cグループに分類した商品が、何らかのきかっけでAグループに遷移する事例もありうるのです。商品の売り上げ傾向は、あくまで現時点までの累積データであり、将来にわたって同様のトレンドが続くとは限りません。もちろん、逆のパターンもあり得ます。

さらには、Cグループの商品であっても、Aグループの商品と関連付けて市場展開される場合など、相対的な関係性によって分類が変化することも想定されます。市場動向の冷静で継続的な注視が、ABC分析の精度を高めるのです。

ロングテール現象への対応

最後に、ABC分析について考える際に注意しておくとよい事柄として、「ロングテール現象」を紹介します。インターネットを活用して物品を販売する際に、販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えること、または対象となる顧客の総数を大きく設定することで、全体の売り上げが増える現象を指します。

店舗で商品を販売する場合は、棚の容量や物流機能の限界などの制約があるため、売れ筋以外の商品を店頭に並べるのは困難です。しかし、ECによる商品販売では、ITの活用による在庫の一元化や物流コスト圧縮が可能になることから、店舗販売の制約にしばられることなく購買層の限られる商品も提供できることで、店舗では実現できない膨大な販売の機会の創出が可能になります。これがロングテール現象です。

ABC分析では、いわば人気度合いで商品を3つのグループに分類するわけです。とはいえ、Cグループに含まれる商品であっても、それが必ずしも利益をもたらさない存在であるとは言い切れないことも、考慮する必要があるのです。


成功例と失敗例から学ぶABC分析の「あるべき姿」

ABC分析の活用による「明」と「暗」

ABC分析は、うまく活用すれば在庫管理をはじめとする様々な機能の最適化を促します。一方で、うまく活用できないケースも少なくないようです。

在庫コスト低減を目指してABC分析を導入した、ある物流事業者。すぐにAランクの在庫、つまり売り上げが最も高い商品が在庫全体のわずか20%に満たないにもかかわらず、全体の売り上げの実に80%を占めることが判明しました。こうした事実を念頭に、経営層はAランクの商品へ注力することにより、在庫の運用コストを劇的に削減。売り上げの向上と製造コスト低減による経営効率の向上に成功しました。

一方で、ABC分析を適切に活用できなかった事例も存在します。ある小売店は、その概要や目的を正しく理解していない状態でABC分析を活用しようとしました。しかし、在庫回転率の低いCランク商品の在庫を過剰に抱え込んでキャッシュフローが悪化してしまい、その結果、多くの利益を生み出すはずだったAランクの商品の調達にも影響が出てしましました。会社全体として収益を大きく減らしてしまったのです。

ABC分析の原理を正確に理解し、それに基づいて適切な行動をとることが重要であることが分かります。


まとめ

このコラムでは、ABC分析の概要やそのメリットと運用上の留意点などについて、ご紹介しました。

ABC分析を実施するためには、分析の基となる正確な情報を把握することが不可欠です。多くの企業で正確な売上情報は把握できていますが、正確な在庫情報については不安を抱えている企業も多いのではないでしょうか?ABC分析の結果を次の仕入や現場オペレーションに迅速かつ的確に反映させるためには、やはり倉庫管理システムと組み合わせて運用することが重要です。

様々なノウハウをつなぎ合わせることで、相乗効果を発揮できるようになれば、さらに業務改善を加速させることも夢ではありません。サプライチェーンの要である在庫管理の最適化を推進するために、ABC分析をうまく活用していただければと思います。

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