COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2024/11/13 DXメーカー・製造業物流業務の効率化運輸業・倉庫業(3PL事業者)

【2024年最新】物流市場規模と展望|課題と解決策を解説

物流市場規模と展望

様々な社会活動に不可欠なインフラである物流。ここでは、その市場規模と展望に関する情報をご紹介します。物流市場の現状と課題、その解決策を通して、将来の物流ビジネスの「あるべき姿」を考えます。

2024年の物流市場規模:現状と動向

「物流」という市場に含めるべき業種とは

いわゆる「市場規模」について考える際に、最初に抑えておきたいポイントなのは、その対象となる業種を明確にすることです。ここでは、「物流」という市場に含めるべき業種を整理してみます。

物流は一般的に、「輸配送」「保管」「包装」「荷役」「流通加工」「情報処理」の6つの機能で構成され、これらが相互に連携することにより、サプライチェーンの一翼を担っています。民間調査会社の矢野経済研究所(東京都中野区)は、こうした機能を担う17の業種を以下に定義しています。

物流17業種

「海運事業」「3PL事業」「宅配便事業(国内)」「特別積合せ貨物運送事業」「普通倉庫事業」「フォワーディング事業」「一般港湾運送事業」「冷蔵倉庫事業」「引越事業」「航空貨物輸送事業」「鉄道利用貨物運送事業」「軽貨物輸送事業」「国際宅配便事業」「鉄道貨物輸送事業」「バイク便輸送事業」「納品代行事業」「その他事業」

矢野経済研究所が2023年7月に公開したプレスリリース「物流17業種市場に関する調査を実施(2023年)」によると、2022年度の物流17業種の総市場規模について、前年度比6.1%増の24.6兆円の見込みであるとしています。さらに、2023年度は24.0兆円、2024年度は24.5兆円と予測しています。

物流17業種市場に関する調査を実施(2023年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3310


物流市場動向の現状分析

物流市場を考える指標となる「3つのキーワード」

2020年代の物流市場動向について考える際に、念頭に置くべきキーワードと言えば、新型コロナウイルス禍やウクライナ情勢、米中間の経済摩擦などの複合的な要因による「世界レベルでの半導体不足」と「物流コスト上昇」、さらに「消費者の購買活動の多様化」が挙げられるでしょう。

半導体不足で大きな打撃を受けたのが、自動車や通信機器の業界です。貿易摩擦に伴う米国の中国企業への制裁として規制を強化した結果、中国から米国への半導体の輸出量は大幅に減少。世界的なサプライチェーンの大混乱を招きました。その影響は現在までに収束してきていますが、一部で未だに予断を許さない状況も続いているようです。

こうした需給のアンバランスは、海上輸送を中心とした物流費の高騰を招きました。国内の海運業界が記録的な高収益に沸いたニュースについて、聞き覚えのある皆様も少なくないでしょう。

物流コスト上昇がもたらす「DXの機運」

物流コストの上昇は、こうしたグローバルの視点にとどまりません。個人レベルでの消費動向に目を転じれば、コロナ禍による行動制限は、消費スタイルを一変させました。スマートフォンの普及による店舗からEC(電子商取引)による宅配への購買シフトは、コロナ禍をきっかけとして急速に進みました。

政府が2023年5月に新型コロナの感染法上の分類を季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げ、いわゆる「アフターコロナ」に移行してからも、こうした動きは定着がみられるなど、消費スタイルの変化は物流機能にも不可逆的な変革を迫ることになりました。

全国各地の高速道路のインターチェンジ周辺や港湾エリアでは、主にEC需要を当て込んだ大型物流施設の整備が急速に進む一方で、ドライバーや倉庫従事者の慢性的な担い手不足が顕在化し、社会問題になっているのが実情です。

限られた人員で急増する商品を取り扱うには、より効率的な業務体制が不可欠であることから、現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の機運が急速に高まっています。


物流市場の将来と課題

市場拡大基調の根拠となる「物流費の高止まり」

こうした文脈で考えると、物流に求められる機能強化は将来、飛躍的に高まっていくことは明らかでしょう。購買スタイルのEC化は、個人消費にとどまらず法人需要も急速に高まっていくでしょう。

さらに、地政学リスクに脅かされる状況が今後も続く懸念もある中で、グローバルでのサプライチェーンの強靭化が、世界経済における潮流となっていくのは間違いありません。こうした背景を考慮しながら、今後の物流市場規模の推移も分析していく必要があります。

物流の市場規模はグローバルと国内の両面において、拡大基調で推移すると考えるのが、いわば定説であると言えるでしょう。注目すべきは、その主因と言うべき物流費の高騰をどう解釈するか、ではないでしょうか。

物流の将来を論じる上で欠かせない「DXの在り方」

基本的には、需要に対して供給が不足する場合、コストは安定します。今後の物流業界を占うとすれば、「物流の2024年問題」のタイミングが迫る中で、需要と供給のアンバランスは避けられないと考えるべきでしょう。一方で、輸送や倉庫の事業者は、従業員を少しでも確保するために、賃金を上げる動きを加速する可能性もあります。

物流費の高止まりが当面続くとの見方が広がるのは、こうした事業環境が背景にあるためです。市場規模の拡大は、その業界における諸活動の活況を示す指標でもありますが、その要因についても認識しておくことで、業界に根付く課題の的確な抽出と、実効的な対応策の構築につながります。

国内においては、物流業界における構造的な課題の筆頭格と言えるのが、現場業務の効率化でしょう。DXが叫ばれて久しい印象もありますが、一部の先進的な現場を除いて、未だにアナログで労働集約型の作業スタイルから脱却できていない事例も少なくありません。有効な投資を打ち出すリソースが不足し、情報収集もままならない――。そんな声も聞かれます。

とはいえ、購買シフトによる宅配サービス需要の増大も、無限に継続するとは考えられません。少子化の進行が加速する将来、商品を購入する人口自体が減っていくからです。いわば経済全体が縮小していく中で、物流サービスの質的な変革もまた、避けて通れない課題になっていくでしょう。

現場の担い手を求める世代はさらに縮小していくわけですから、DXを極限まで追求する局面は遠からず訪れます。倉庫現場におけるWMS(倉庫管理システム)など効率化策の深化に対する、さらなる期待は、今後ますます高まるのは確実であると言えます。


物流業界の諸課題を解決する秘策とは

物流の将来を左右する「人材確保」と「DX」のバランス

コロナ禍や様々な地政学リスクなど、物流業界を取り巻く環境の変化が猛烈に進む状況において、その現場を担う立場でどんな取り組みを進めるべきなのか。ここで着目すべきは、現場における課題抽出とその解決に導く最適解の策定でしょう。そのアプローチは、大きく2つの視点に帰結すると考えます。それは「圧倒的な差別化による人材獲得」と「DXによる実効的な業務効率の向上」です。

まずは前者について触れます。関西地方のある運送事業者は、トラックドライバーがオンライン動画共有プラットフォームのYouTube(ユーチューブ)を活用して、仕事の魅力を発信。車体のデコレーションなど、トラックに興味のある若い世代を意識した取り組みを意識的に紹介するなど、今後の輸送現場を担う人材発掘に向けたユニークな取り組みを進めています。その成果でしょうか。ドライバー獲得に青色吐息の業界にあって、求人者が後を絶たないそうです。

一方のDXによる解決策について。クラウドWMSを展開するロジザード株式会社は、ECをはじめ法人・個人向けの様々な輸送ニーズに対応した倉庫業務の効率化・最適化を叶えるため、倉庫まで足を運び現場改善に貢献。WMSの存在感を倉庫業界に強く付けるとともに、提供するサービスの充実に注力することにより、クラウドWMSにおける稼働数と関心度で国内トップクラスの地位を獲得しています。

ここで重要なのは、DX全盛とも言える物流支援サービスの業界は、拡大する市場規模だけに依存しない、常に提供できる機能の強化を推進する事業者のみが生き残れる、いわば非常に厳しい競争環境にあるということです。WMSを例にするならは、倉庫内の各機能を連携させた「全体最適」の発想で構成されたシステムであることは、持続的なDXの推進に欠かせない着眼点になるでしょう。


まとめ

ここでは、物流の市場規模を端緒に、業界の現状認識と課題、そして解決策まで幅広く考察しました。コロナ禍を大きな契機とした物流業界の変革の波は今年、物流の2024年問題をはじめとする大きな節目を迎えることになります。社会ですっかり定着した、「社会インフラとしての物流」としての機能をさらに高めるには何をすべきか。改めて志向を巡らせるタイミングであると言えるでしょう。