COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。
物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。
国内の企業が抱える老朽化した基幹システムのトラブルが多発するリスクを警告する「2025年の崖」。物流の現場も例外ではなく、こうした古いITシステムが未だに多く活用されており、その障害がもたらす様々な社会活動への影響は計り知れないものになると言われています。
2025年の崖。この言葉が最初に社会に登場したのは、経済産業省が「DXレポート」を発表した2018年9月のことです。ここでは、国内のあらゆる産業が将来、持続的な成長を図る上で欠かせない競争力を高めるためには、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる必要があるものの、その実現の障壁となっているのが、全体の業務を管理する基幹システムの老朽化であると指摘しています。
老朽化した基幹システムが、産業界のDXを阻害する要因とは何でしょうか。企業はこうした古いシステムを現場のニーズやルール変更などに合わせて作り替える「カスタマイズ」を繰り返してきました。もちろん、現場の業務改善に必要な取り組みであったのは事実ですが、その一方でシステムが複雑で独自仕様のブラックボックスと化してしまい、結果として刷新におけるコストや人材が膨大になるリスクが問題とされるようになったのです。
経済産業省は、こうした「レガシーシステム」を放置した場合に、2025年にはリスクが顕在化すると想定しました。IT人材の不足の進行に加えて、長期間にわたって世界トップのシェア(市場占有率)を誇った基幹システム「SAP ERP」の保守サポート終了が重なるためです。つまり、それまでに、レガシーシステムから脱却して基幹システムの刷新を進めるべきだと警告しているのです。
こうした2025年の崖に直面している産業の一つが、社会に不可欠なインフラとして機能する物流です。倉庫をはじめとする物流の現場では、増加し続ける荷物の仕分けや搬送、検品などの業務を効率化する取り組みとして、ITシステムの導入が進みました。
しかし、こうしたシステムは必ずしも統一した仕様やスペックで進められてきたわけではなく、むしろ取り扱う荷物の種類や作業動線の変化などに合わせて独自にカスタマイズが施されてきました。いわゆる「部分最適」の発想が優先したことにより、全体でみると基幹システムとしてブラックボックス化が顕著になっている事例が目立っているのです。
こうした懸念を浮き彫りにしたのが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う現場業務の変貌でしょう。取り扱う荷物の量が増えただけでなく、その種類も急激に多様化。とりわけ倉庫現場では、レガシーシステムと化した基幹システムでは十分な対応が不可能となりつつあり、その対応策としてDXがにわかに注目されるようになりました。いわば、レガシーシステムによる2025年の崖を回避する手段として熱い視線を集めているのが、DXなのです。
ここで、DXという概念と意義について振り返っておきましょう。経済産業省は2018年12月に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0(『デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン』)」で、DXをこう定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立する」。つまり、DXとは「デジタル技術による変革」を意味する概念であり、「デジタル化」はあくまでその実現に向けた手段であることに注意が必要なのです。
ここ数年、DXという言葉が物流業界でも盛んに使われるようになりました。トラックドライバーの時間外労働時間の上限が年間960時間に制限されることで生じる「物流の2024年問題」がクローズアップされたこともあり、現場業務の効率化を推進する観点で語る風潮が強かったのですが、近ごろはさらに別の角度で論じられるようになってきています。それが2025年の崖というわけです。
2025年の崖、つまりレガシーシステムからの脱却には、DXの推進が欠かせないとの認識が、物流業界でも急速に広がっています。IT人材の不足が懸念される中で、最新のIT技術へ対応が難しいレガシーシステムの運用や保守業務にリソースを割かれることは、物流をはじめあらゆる産業における基幹システムの機能の健全さを阻み、結果として社会の持続的な成長に支障を来たすからです。
国内の様々な産業の中でも、とりわけ業務効率化が遅れていると指摘される物流。倉庫業務を例にとれば、かつては多くのスタッフがピッキングや搬送、ラベル貼付などの作業を手掛けていました。少子高齢化の加速と職業選択の多様化で、若手を中心とした人材確保が難しくなると、ITシステムやロボット、先進的なマテリアルハンドリング機器の導入が進んでいきます。
それが物流現場における効率化の第1段階と定義するならば、足元でささやかれているDXはその第2段階に相当すると言えるでしょう。基幹システムの観点でDXを論じるならば、第1段階で導入されたシステムや機器を全体で統合して一元的に運用することで、「全体最適」な現場が実現します。まさに部分最適にとどまっていたレガシーシステムからの脱却であるわけです。
それでは、2025年の崖への対応策としてDXがどう有効に機能するのでしょうか。経済産業省のDXレポートは、DXが進展しない場合は2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性に言及するなど、深刻な影響について警告しています。
具体的には、レガシーシステムが残ることにより、セキュリティ機能への懸念をはじめ、ソフトの不具合や性能・容量不足、さらにはハードウェアの故障など様々なトラブルが、基幹システムに関連して発生すると考えられています。
こうしたトラブルは、通常業務の遂行に支障を来たすのはもちろんのこと、IT人材の不足も相まって長期的な事業の停滞を引き起こす可能性が高いのです。とりわけ物流業界でこうした事態が発生した場合は、あらゆる産業の「血液」としての働きに大きなダメージを与えることになり、国内経済への打撃は避けられません。
小売店舗では商品が並ばない、宅配で注文した荷物も届かない、さらにはメーカーへの部品供給や製品搬送も滞る――。想像するだけでも、惨憺たる状況が目に浮かびます。
もちろん、物流業界もこうしたレガシーシステムの抱えるリスクへの対応に向けて動き出しています。既存システムのさらなる効率化に目が行きがちだった物流各社も、2025年の崖を目前にDXの推進によるレガシーシステムからの脱却を経営上の重要テーマと位置付ける動きが加速してきました。
ここで、企業におけるDX推進に向けた戦略プロセスの基本的な考え方について触れておきましょう。まずは、自社におけるシステムの問題認識を明確化すること、つまり問題点の洗い出しです。経済産業省が示している「DX推進指標」の活用は、DXの推進状況を定性的・定量的に把握する上で有効です。
それを踏まえて、いよいよ老朽化したITシステムの刷新に着手するステージに進みます。とはいえ、やみくもに最新システムを導入すればよいというものではありません。抽出した問題点を解決した「あるべき姿」をゴールに設定し、経営者を含めた全社で共有することが不可欠です。さらに、システムに搭載する機能を取捨選択し、過不足のないものとする必要があります。コスト面も意識して、業界で共有できる部分は共通のプラットフォームを構築するのも一案でしょう。
さらに忘れてはならないのが、企業におけるDX人材の育成です。全社的なDXの実現には、経営層によるトップダウンでの推進体制が効果的でしょう。ITの専門家に加えて、現場を含めた事業を全体的に掌握している人材の育成が有効です。DXの推進で現場の業務をどう変えるべきか、正確に判断できるからです。
こうしたDXの概念は、ビジネスの進め方を最適化するだけでなく、デジタルツールのより効果的な活用による業務の劇的な効率化にも貢献します。
先進技術による業務改善の構造的な遅れが指摘されてきた物流業界。しかし、その現場におけるDXの成果は着実に生まれています。
こうして物流業界がDXの機運を高めている背景には、ITシステム開発企業がDXを意識した様々なサービスの提供を加速している実情もあります。ある大手の物流不動産開発事業者は、スペースの貸し出しに際して、こうした先進システムや機器を使えるサービスをセットで提供することにより、入居テナントの獲得につなげています。
こうした取り組みが奏功している要因として、入居企業の物流業務にかかる問題認識や不安感を和らげることで、テナントの囲い込みにつなげるしたたかな戦略があります。賃借した倉庫スペースをいかに効率よく運用するか。今や物流部門の最適化は経営戦略の根幹であるとの認識は、産業界における常識になってきているのです。
その文脈で考えると、入居テナントはDXの継続的な推進が命題となるわけで、それを家主である物流不動産の開発事業者が支援するとなれば、それほど心強いことはありません。2025年の崖への対応も含めて、DXを支援する物流向けサービスは、今後も様々な領域で進展していくことでしょう。なぜなら、そこに大きなビジネスチャンスが存在するからです。
こうしたDXの推進を支援する取り組みに注力するのが、クラウド型在庫管理システムの展開で存在感を高めているロジザードです。独自に開発したクラウドWMS(倉庫管理システム)の「ロジザードZERO(ゼロ)」をはじめとするシステムのハブとなるサービス、倉庫現場の全体的な業務効率を飛躍的に高めるサービスは、2025年の崖に立ち向かう企業にとっても、レガシーシステムに代わるDXの推進施策を構築する上で、頼もしい援軍となるでしょう。
2025年の崖は、物流をはじめとするあらゆる業界に対して、ITシステムを活用した業務最適化の在り方を問いかける契機であると言えるでしょう。物流の2024年問題と同様に、これまで踏み出せなかった構造的な問題に向き合い、それを解決に導いていく。その有効な手段となるのは、ともにDXであるわけです。
ここでは、2025年の崖というテーマで、物流業界を取り巻く問題点とその解決法を模索する動きについて考えました。DXによる解決法を導くにあたって忘れてはならない発想、それは現場の全体最適を前提としたデジタル活用に留意することでしょう。
「木を見て森を見ず」の議論に陥ることなく、全社的さらには企業間での相互連携の発想も取り入れながら、最適化のイメージを構築すること。それがDX推進における成功の最大の秘訣になりそうです。