COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2021/12/10 EC・通販事業者システム

OMSとWMSの一体型メリット・デメリット

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近年注目が集まるOMS・WMS一体型システム。複数のECサイト・モールの情報を一元管理・一括反映する「受注管理システム」とバックヤードの実在庫を管理する「倉庫管理システム」の機能を併せ持つ点がメリットとして考えられていますが、一体型であることで生まれるデメリットも少なからず存在します。そこでこちらでは、一体型システムの特徴と合わせて、導入を検討する際のポイントについて解説します。

OMS(受注管理システム)とは

まずはOMSの概要について、簡単に説明をしていきます。
「Order Management System」は、日本語にすると「受注管理システム」です。その名が示すとおり、商品の受注を管理・処理することを目的としています。複数のモール型ECサイト(ECモール)や自社サイト(ECサイト)を構築するカートシステムから受注状況等の情報を取り込んで一元で管理し、自動処理が行える点が大きな特徴です。具体的には、以下のような機能が搭載されています。

・受注管理機能
各ECサイト・モールから注文が入った際の出荷管理
入金確認
確認メール等の自動送信 など

・在庫管理機能
受注・入荷に合わせた理論在庫の管理
各ECサイト・モールへの一括反映 など

・商品ページ管理機能
各ECサイト・モールへの一括商品登録・修正 など

・分析機能

・他システムとの手動・自動連携機能

こうした機能を活用することで、受注業務における作業効率化や、人為的ミスの防止に、OMSは貢献します。

WMS(倉庫管理システム)とは

次に、WMSについても簡単に解説を行います。
basic0901.PNG 「Warehouse Management System」は日本語で倉庫管理システムを表します。管理対象となるのは基本的に倉庫内の実在庫である点がOMSとの大きな違いです。OMSにも在庫管理機能はありますが、OMSは理論在庫、WMSは実在庫を管理すると覚えてください。
そのため、WMSにはロケーション管理や品質区分(A品・B品・訳あり品など)といった商品管理機能があり、入出庫に合わせた在庫変動の履歴も管理できます。出荷に際してはピッキングリストや納品書作成、検品管理機能を使うことで、正しい在庫数を把握できます。そして倉庫内業務のマネジメントといった、物流現場に特化した機能が搭載されています。

OMS・WMS一体型システムのメリット・デメリット

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「OMS・WMS一体型システム」は、前述のOMSとWMS、それぞれの機能を併せ持ったシステムです。WMS:実在庫OMS:理論在庫(販売在庫)ECモール・カート:在庫連携までを一括で管理できるという点が、注目を集めている理由と言えるでしょう。以下から、具体的なメリットとデメリットを見ていきます。

メリット〜コストバランスの取れた機能〜

OMSとWMSをそれぞれ導入するには、それなりのコストが必要です。それぞれ初期費用がかかる場合もあり、かつランニングコストも別々です。一方、OMS・WMS一体型システムであれば、"一体型"という特徴を生かし、費用を安く抑えられます。
なお、安価なOMSとWMSを選べば一体型が持つコストメリットは薄まりますが、安価なシステムには連携の面で問題がある可能性も考えられます。他方、中規模以上のシステムであれば連携についての問題は解決できますが、今度はシステムが複雑になる懸念もあるでしょう。
一体型システムなら、シンプルな操作性でOMSとWMSの機能が扱えるため一挙両得というわけです。とくに物量が少ないビジネスであれば、機能が十分で連携もスムーズとなり、メリットが大きくなります。

操作性がシンプルであることは、現場スタッフへの教育コスト低減にもつながります。一人のスタッフが受注業務と倉庫物流業務の両方を見るようなケースでは、より効果が高いでしょう。複数のシステムを使い分けるよりも、ひとつのシステムを熟知するほうが結果として、習練にかかる時間・労力を減らせます。
もちろん、実在庫と理論在庫を一括で管理できるという点も大きな魅力です。たとえば予約販売在庫などを管理したいというニーズがある場合は、一体型システムによって簡単に課題が解決できる可能性があります。

デメリット〜専門性と拡張性〜

メリットの多いOMS・WMS一体型システムですが、メーカー(開発ベンダー)次第で、いくつかのデメリットが発生する可能性を持っています。
一体型システムの多くは、OMSかWMSのどちらかを専門にしていたメーカーが、もう一方の機能を既存システムに組み込んで作り上げているケースがほとんどです。とくに、OMSを専門としていたメーカーがWMSの機能を既存システムに乗せたり、OMSを主軸として開発したりする製品が多く見られます。
この場合、中心の機能はOMSとなりますから、本来WMSに必要である細やかな在庫管理機能が組み込まれていない仕様となる可能性が考えられます。なかには、物販の知識を持たないシステム会社が開発を行っていることで、ニーズの把握が疎かになってしまっているケースもあるようです。

たとえば物流管理で大変重要となる「引当機能」。これは、開発側からすると比較的複雑な仕組みであり、システムへの負荷も大きいため、シンプルな設計になっている可能性があります。そのため、実際の業務で必要になる機能に対応していなかったり、システム負荷によりある一定の出荷件数に至ると処理が遅くなったりする事態も起こりえるでしょう。結果として、物販だけでなく、卸などの販売チャネルも併せ持つような事業者様の場合は、専門システムをそれぞれ導入するほうが業務効率化につながるケースも往々にして考えられます。

また、WMS機能が搭載されている場合は、積極的な外部システム連携が設けられていないことも予想されます。一体型システムのみの機能で運用ができれば問題はありませんが、事業の拡大に合わせてより専門的なWMSを導入しようとした際に、問題となる可能性があります。結果として、まるで「一部の機能が不十分な基幹システム」が出来上がる懸念もあるでしょう。また、事業拡大や業務効率化を検討する上で、たとえばマテハンやRFIDなどを導入したいとなった際に拡張できないとなると、事業の成長が妨げられるような事態も想定されます。

そのほか、システムによってはバーコード管理ができなかったり、返品や不良品などのイレギュラー対応をうまくさばけなかったりと、在庫管理の精度が低くなるといった恐れも。これらの懸念は、一体型システムの大きなデメリットとして挙げられています。

個別のOMS・WMSと一体型のシステム導入、どちらがいいの?

OMSとWMSをそれぞれ導入すべきか、それとも一体型システムを導入すべきか。前述のメリット・デメリットを踏まえて考えてみましょう。
そもそも、WMSが得意とする"物の管理"と、OMSが得意とする"注文の管理"は、物量が増えるにつれて分けるほうが効率的になってきます。そのため、すでにある程度の規模の物流を扱っている、もしくは今後扱う予定の事業者様の場合には、個別のOMSとWMSの導入が推奨されます。また、3PL向けの機能も充実していないため、あくまでも一体型は「事業者目線」になることを覚えておきましょう。

一方で、物量が少ない事業者様の場合は、すでにご紹介したとおり、コスト面等でのメリットは十分に享受できます。どのようなビジネスを現在しているのか、将来目指していくかによっては、一体型システムも有益な選択肢となるでしょう。

ちなみに、こうした一体型システムが良いのか、それぞれ専門的なシステムを導入した方が良いのか、という問題は新しそうで昔からあるテーマです。ECが今のように全盛ではなかった時代は、基幹システムとWMSで同様のような比較がなされていました。このときも同じように、事業の規模感等によって、どちらを選ぶべきかが判断されてきたという経緯があります。

物量が多くなったら専門のシステムが必要

今回は例として規模感に焦点を当て説明をしてきましたが、実際には商材や業態も、システム選びには大きく関わる要素です。たとえばアパレル専用であったりサブスクリプション特化型であったりすれば、事業規模だけが求める機能に関連するわけではなくなるでしょう。この場合にも、やはり専門の受注管理システムや倉庫管理システムが必要になります。

当社では、さまざまな業態のビジネスを取り扱う事業者様からのご相談を承っております。ぜひお気軽にご相談ください。