COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2023/02/22 EC・通販事業者在庫管理小売業(リアル店舗)

物流データとは?在庫情報の活用メリットと活用例

物流データとは?在庫情報の活用メリットと活用例

昨今、慢性的な人手不足や高騰する燃料費の影響により、物流コストは上昇の一途を辿っています。特にメーカー・EC事業者は、在庫ありきのビジネス柄これを無視することはできませんよね。どうしたら物流コストを抑えられるかと頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。実は今、「物流データの活用」に注目が集まっているのをご存じでしょうか。これまで後回しにされがちだった物流現場から得られる「物流データ」の重要性や価値に気づき、これを活用することで改善を図ろうとする企業様が増えています。 本コラムは、現場改善に特化した物流コンサルタントとして、さまざまな現場の改善・支援をされてきたトランスフィード株式会社の長井様に監修いただき作成しました。在庫情報の活用メリットや活用例についてご紹介しています。是非ご参考にしてください。

「物流データの活用」に注目が集まっている背景

新型コロナウイルスの影響によりECが拡大し、物流の需要量は急増しています。物流現場では慢性的な人手不足に加え、宅配が増加したことでトラックの積載効率・配送効率が低下しており供給が追い付いていません。物流コストは、需給のバランスが崩れていることや燃料費の高騰により年々上昇しています。メーカー・EC事業者は、これまで以上に物流コストをシビアに考えなければ、いくら売上が上がったとしても薄利化していくといった事態になりかねません。高騰する物流コストを抑えるため、物流現場を可視化して物流データを細かく確認しようとする企業が増えています。一方で、例えばDtoCビジネスを展開している事業者では、物流データを積極的に経営に反映しようとする企業が増えています。現場は顧客との最終タッチポイントになるため、在庫情報や顧客情報といった生のデータが大量に集まります。こうした情報をまとめて分析し、マーケティング施策やCRM施策に活用することで、新たな利益を生み出すことに成功しています。
このように在庫情報や物流データがもつ重要性や価値に気づく企業が増えたことで、「物流データの活用」に注目が集まるようになりました。


物流データとは?活用するためには?

物流データとは、物流現場で取得できるデータ全般のことを指します。物流現場には、「在庫情報」「配送情報」「作業情報」などさまざまなデータがあります。これらを有効活用するためには、まず目的を定めておく事が重要です。例えば「荷役におけるコスト削減」「経営効率向上の為の在庫削減」「顧客満足度向上の為の物流品質の改善」など、数多ある物流データの中からどの情報を取得・活用するかについては、自社のビジネスに照らし合わせて精査することをおすすめします。その目的に対して、対象となるデータが視覚化され、蓄積されている必要があります。また、データはできる限り簡単に取得できる仕組みづくりが重要です。データ取得にテクニックが必要となると、その業務自体が俗人化する恐れがあり望ましくありません。また、データの取得はマストですが、取得自体が目的にならないように注意が必要です。


在庫情報を活用するメリットとは?

メーカー・EC事業者にとって重要な「在庫情報」を例に、物流データを活用するメリットを考えてみたいと思います。在庫は大切な資産ですが、適切な発注量を超えて余剰となった在庫は、時間の経過につれて価値が下がり滞留在庫となります。こうなると原価回収もままならないうえに、保管料や廃棄料がかかり、余計な物流コストがかさむ原因となります。だからこそ、在庫が売上・利益に繋がっているかを分析することが重要です。在庫情報を起点にさまざまな分析をすることで、生産性の向上による物流コストの抑制だけではなく、売上の最大化に繋げることができます。在庫情報の活用例として、以下のような物流KPIが挙げられます。WMS(Warehouse Management System)を導入されている企業様は、蓄積されている在庫データを基にKPIに当てはめて、自社の状況を把握してみてはいかがでしょうか。

― 物流KPI

荷主用ロジスティクスKPIの一例(指標/目的)
売上高物流コスト比率 売上全体に占める物流費を把握する事で赤字を防ぐ
SKU数 倉庫で扱っている商品種類数や荷姿等の分類を管理する事で荷役効率を上げる
在庫日数 何日分の在庫があるか把握する事で売上損失あるいは過剰在庫を防ぐ
滞留在庫比率 今後売れる見込みがない商品を管理する事で保管のムダを無くす
棚卸差異率 理論在庫と実在庫の誤差率を把握する事で受注時欠品を防ぐ

また、倉庫内にある商品には、頻繁に出荷されるものもあれば、たまにしか出荷されないものもあると思います。複数ある商品を効果的に管理する手法として、ABC分析をご紹介します。

― ABC分析

ABC分析とは

ABC分析とは、在庫の出荷量や売上を分析し、在庫に優先順位をつける分析手法を指します。ABC分析をする際には、まず全体に占める各商品の売上構成比を算出する必要があります。任意の期間を設定し、その期間内の各商品の売上を全体の売上で割ることで算出します。

売上構成比(%)=(対象商品の売上÷全商品の売上)×100

こちらはエクセルを用いると容易に算出することができます。続いて、売上構成比の大きい順に並び替えし、累積構成比を求めます。累積構成比は各商品の売上構成比を足し合わせることで算出します。累積構成比が上位70%までの商品をAグループ、70%~90%までの商品をBグループ、90%~100%までの商品をCグループに分類することで、ABC分析のグラフを作成することができます。物流現場でいえば出荷実績を基に出荷数の多い順にA・B・Cの3グループに分類されるイメージです。ABC分析を行なったうえで各商品の保管ロケーションや梱包エリアを検討することで、効率的なピッキングや梱包ができ、生産性の向上に繋がります。
ただし、頻繁に出荷される商品の中には、季節性・一過性の高いものや、出荷されていない商品の中には、予約商品等の理由で出荷されないものもあるため、正しく分析を行なうためにも予め保管ロケを分けておくなど現場での工夫が必要となります。


今日からできる物流データの活用例

物流データの活用や分析というと、何か大がかりなシステムを導入しないといけないのでは?と思われる方もいるかもしれません。必ずしもそんなことはありません。極端な話、ホワイトボードで管理するだけでも物流データを活用することは可能です。例えばホワイトボードに「本日の入荷数」「本日の出荷数」「稼働人数」「稼働時間」を書いて、パートさん含め現場作業をしている皆さんに周知するところから始めてみてください。これを毎日繰り返していくことで、「今日は何個入ってきて何個出荷して、それを●人でやったから●時間でできた。入荷予定数がこの倍なら、シフトの●人じゃ●時間オーバーになりそうだな」と数字をもとに現場が判断できるようになっていきます。これが「生産性」の可視化であり、物流データの活用です。重要なのは、システムを導入することではなく仕事を数値化し共通言語として判断できるようになることです。


まとめ

いかがでしたでしょうか。物流データの活用に注目が集まっている背景や在庫情報の活用メリットが伝わりましたでしょうか。物流コストのインフレや物流業界の人手不足は、この先もますます深刻化していくことが予想されます。物流データを活用するためには、データの取得・蓄積をするといった準備が必要になりますので、早いうちから取り組むことをお勧めします。在庫情報の取得・蓄積には、WMSがお勧めです。ハンディターミナルを用いた入出荷検品を行なうだけで物流品質が向上し、データの取得も誰でも簡単にすることができます。また本コラムでご紹介した物流KPIなども参考にしていただき、コストを抑える守りの物流だけではなく、利益向上を目指してみてはいかがでしょうか!

▼『ロジザードZERO』のお問い合わせはこちら
https://www.logizard-zero.com/contact/


本コラムにご協力いただいた物流コンサルタント
トランスフィード株式会社 代表取締役 長井 隆典(ながいたかのり)

EC事業会社におけるfulfillment(Logistics/CS/Studio/System)の統括マネージャーとして新規立ち上げと運用構築を多数経験。特にEC物流においては、部門を跨いだ課題可視化やKPI設計による物流戦略立案を担当し拠点統廃合及びWMS導入責任者を務める。2017年にトランスフィード株式会社を設立。荷主及び物流事業者として培ってきた経験をもとに、物流改善に特化したコンサルタントとして活動。主にフロー分析によるオペレーションの可視化やシステム導入による省人化を行っており、近年は管理者の育成にも力を入れている。