COLUMNロジザード ノウハウ EC・物流コラム

物流やEC(ネットショップ)、在庫管理に関連したロジザードのオリジナルコラムです。
在庫管理の基本的な方法から効率化するポイントをロジザードのノウハウ、ロジザードの視点でご紹介します。

最終更新日:2023/12/11 システムセミナーメーカー・製造業

ロジザードEXPO 2023レポート vol.3:クラウドサービスで描く次世代販売システムの仕組み

ロジザードEXPO 2023レポートVol.3:クラウドサービスで描く次世代販売システムの仕組み

2023年11月10日、浅草橋ヒューリックホールにおいて、「ロジザードEXPO 2023」が開催されました。業界トップシェアのロジザードサービスと標準連携するシステムを中心に、各業界の精鋭35サービスが出展。また、EC・DtoC・オムニチャネル・OMO・物流ロボットなどの様々なトレンドキーワードをテーマに、各界のプロフェッショナルによる「EC・物流ノウハウセミナー」も同時開催されました。ここでは、弊社代表によるセミナー「クラウドサービスで描く次世代販売システムの仕組み」について、レポートします。

開催概要

タイトル ロジザードEXPO 2023
開催日時 2023年11月10日(金)10:00~17:00
会場 浅草橋ヒューリックホール
セミナーのみYouTube にて同時配信
主催 ロジザード株式会社
セミナータイトル クラウドサービスで描く次世代販売システムの仕組み
~未来の流通を見据えたシステム構成のご提案~
登壇者 ロジザード株式会社 代表取締役社長 金澤茂則
内容
  • テーマ① 流通の歴史からの将来見通し
  • テーマ② OMOの概念認知のベース
  • テーマ③ OMOに対応するビジネスの建て付け
  • テーマ④ 望ましいシステム構成

流通の歴史を振り返りつつ、将来の見通しを考える

ロジザードEXPOの主催者として、ご参加いただきました皆さまに厚く御礼申し上げます。セミナーのクロージングセッションでは、私自身が2016年頃から考えてきた流通の将来について、お話したいと思っています。

流通業界のイノベーションの歴史

流通の歴史を振り返ってみると、イノベーションには常に「購入利便」への希求がありました。古くから続く商家(店)対お客という関係性を大きく変えたのは、明治後期に登場したDPS(デパートメントストア)です。様々なカテゴリーの商品が一つの店舗に集積し、陳列され、正札販売により誰もが同じ価格で購入できる日本流「百貨店」の仕組みは、当時革命的な出来事でした。まさに商業のイノベーションであり、特に戦後の高度経済成長と歩調を合わせ、大きく発展しました。

次に登場したのがSM(スーパーマーケット)です。百貨店は価格という側面で、アッパー層が享受できる利便性であったのに対し、無理のない費用で必要な品を揃えられる店として一般消費者が歓迎しました。百貨店が扱わない日用品で、革命を起こしたのです。商品をアソートメントし、セルフサービスを導入。購入利便に「選択」のイノベーションを起こしたのです。

続いての革命が、モータリゼーションに伴うSC/PS(ショッピングセンター等郊外型モール)の隆盛です。出店する場所は駅前でなくてもよいという、サバーブ立地革命が起きました。車で乗り付けてたくさん買い物ができるように、様々な業態を集積させた、バラエティ豊かなモールが誕生する一方で、駅前商店街などに立地する個人商店の客足が、鈍っていきました。

もっと簡単、スピーディに買い物ができたらいいのに...という購入利便に応えたのが、CVS/DS(コンビニエンスストア/ディスカウントストア)です。今や家の冷蔵庫代わりに活用されるほか、モノばかりでなくあらゆるサービスが提供される、まさにコンビニエンスな店。長時間営業、24時間営業で一時代を築きました。

さて、ここまでがおよそ2000年代までの流れで、購入利便を動機とする「立地・商圏」に根差した商業革命でした。ところが2001年以降、インターネットの登場・普及により、場所に制約を受けずどんなものでも買うことができる新たな小売のイノベーション、すなわちECが生まれます。ECは、これまで商圏の概念を、「店舗がある地域に住んでいる人々」から「オンライン上の世界の人々」に再定義してしまいました。しかも、その動機は「購入利便」から「受取利便」へと変化しています。
EC勃興から隆盛の20年を経て、2023年から先はいったいどうなるのか? デジタル社会が当たり前の世界で、革新的なテクノロジーの力を得て、イノベーションの源泉は、これまでの購入利便から購入快適へと変わりつつあります。

イノベーションの歴史とOMOへ進化する小売業界

弊社は2001年創業で、ECの隆盛とその歴史をともにしており、その進化をつぶさに見てきました。ECが登場した当初は、EC専業事業者、つまり店舗を持たない事業者たちの業界でした。その後、リアルコマースが参入することで販売のバリエーションが増え、新しい売り方によりマーケットが拡大していきます。そして、O2Oマーケティング時代に入り、スマホ決済など決済手段が多様化したところに、コロナが発生しました。消費者はリアル店舗に行けなくなり、店舗は急速にECシフトを進めたのは、記憶に新しいところです。そしてアフターコロナの今、改めてリアル店舗の存在意義、役割が見直されています。ECと店舗、オンラインとオフライン、これらを別ものと考えずに融合させていく、OMO(Online Merges with Offline)マーケティングの考え方が主流になっていくでしょう。


なぜ、オンラインがオフラインを併合するのか?
OMOを支えるテクノロジーの進化

OMOのアプローチは、「オンラインがオフラインを併合する」ものです。私が今回皆さまと共有したいのは、「なぜオンラインがオフラインを併合するのか?」という理由です。ここが分かると、自分たちの次の景色が見えてくると思うのです。

皆さまは「GIGA端末」という言葉を聞いたことがありますか? コロナ禍で小・中学校が生徒に対して配布したタブレット端末を指しているそうです。こうした背景もあって、今や子どもも一人1台、スマートフォンやタブレットなどの端末を所有しています。24時間インターネットにつながっていることが当然の時代、リアルよりもオンライン上での接触機会の方が、圧倒的に増えています。

また、モバイルペイメントが普及したことで、買い物がすべてIDと紐づけられ、リアルな行動データがIDで蓄積できるようになりました。誰がいつどこでどんな方法で何を購入しているかが、分かります。すなわちこれは「パーソナルマーケティング」が可能なことを示しており、これを実現するマーケティングTECの深化が進んでいます。

OMOを正当化する事象

皆さまには、世界はすでにこうなっている「現実」を認知してほしいのです。現実だから、OMOができるのです。すでにオンラインとオフライン間の境目は溶け、私たちはどちらかを意識して生活をしているわけではありません。必然的にオンライン側も"社会化(注)"し、リアルな生活の方が不便に感じることもある今、時代はもう後戻りはしないでしょう。

そもそもOMOは、元GoogleチャイナのCEOであった李開復(リカイフ)が、2017年頃に提唱した概念です。中国では、アリババ集団を筆頭にTECベンチャーが実践している概念です。実店舗かECかといったチャネルの違いを意識せずに、シームレスなサービスが提供されるという視点で見れば、オムニチャネルと似ていますが、その実態は似て非なるもの。OMOは、オンライン上で1回でも買い物をすれば、オンラインIDに紐づけられて購買履歴が蓄積される仕組みです。オンライン社会の"ID"である自分と、オフラインの自分の購入行動を紐づければ、もっと便利で快適な購入体験ができますよ、という思想であり、オムニチャネルを超越しています。しかも、それを活用する個人においても、「自分の情報はすでにオンライン上ではID化されているのだから、もはやそれでいいじゃないか」という受容、割り切りも進んでいるように思います。

日本では今も、オンライン販売をリアル店舗の補完的な発想でとらえる人が少なくありませんが、まったく逆のアプローチです。オンラインから今のオフラインをどのように組み立てていくか、ということを考えなければ、これからの時代は生き残っていけません。近年はさらに、オンラインにはオフライン(リアル)にはいない新たな住人が出現しました。生成AIです。目覚ましい進化を遂げるAIにより、いずれ購入決定の権限はAIに譲ることになるでしょう。今後は、AI向けのプロモーションを考えないとならない時代が来るかもしれません。

注:社会化(socialization)とは、人間の相互作用、相互影響によって集団や共同体が形成される過程を指す


オンラインとデータ起点で考える事業のリノベーション

では、OMOに対応するビジネスの建て付けについては、どのように考えていけばよいのでしょうか? オフラインからオンラインへ、というレガシービジネスの方々は、どうしても自分がやってきたオフライン(店舗)ビジネスが起点になりがちで、OMOの概念を理解するのが難しいかもしれません。でもこれから先、その考えで止まっていては致命傷になります。そこで私は今日、皆さまの事業をリノベーションするヒントになればと思い、一つユニークな事例をご紹介したいと思います。これは、福島の田舎の小さな薬局の、オンラインがオフラインを併合したサクセスストーリーです。

この薬屋さんは今、店舗を大型化して倉庫機能を持たせ、店舗とオンラインで地元の企業や個人に様々なサービスを提供して人気を博しています。自前で作ったのは、会員アプリのみ。目の前のお客様をどうデジタルでつないでいくかに知恵を絞り、オフライン(店舗)をオンラインで併合して成功しています。
大資本がなければOMOはできない、ということは一切ありません。オンラインとオフライン両方とも事業に必須であることを前提に、正しい視点で、素直に実直にサービスを設計していけば大丈夫だという実例があるのですから。オンラン上にデータを統合する環境を整備し、PDCAを回せる環境をいち早く構築していきましょう。

お客様にとって新しく快適な購入体験を提供すること、お客様の利便性や喜びを追求すること。ここでお勧めしたいワークが、日々の生活で目にするサービスに対し、「どういう方法で」「どういうデータがとれて」「どういうサービスに活かせるか」を考えることです。目の前のオフライン・サービスを、OMO視点でアイデア出しする訓練をぜひやってみてください。けっこう楽しいですし、それを自社の事業に応用すれば、何かしらの新しいサービスが生まれるかもしれません。


OMO実現のために望ましいシステムとは?

オンライン上でIDデータを統合する環境を整備するには、クラウドサービスを活用するのが合理的です。以下の構成を想定しながらクラウドサービスベースでシステム構築を検討してみるとよいでしょう。


レガシービジネスからの脱却を

オンラインとオフラインの境界がなくなりつつある今、競合は日本国内のみならず、海外企業になるかもしれません。海外企業が日本市場を狙うように、日本企業も海外マーケットにもっと目を向けるべきでしょう。冒頭のセッションで、今アジアが熱い!というお話がありました。テクノロジーの力を使えば、海外に評価されるクオリティを持つ日本製品で、世界と勝負することができます。過去のやり方に固執するのではなく、時代を理解し、時代にあわせて、古いリテールビジネスから脱却する勇気も必要なのではないでしょうか。
これからの流通業が、ますます発展していくよう、ロジザードも皆さまとともに挑戦を続けます。ぜひ一緒に新しい世界を切り開いていきましょう。

【ロジザードEXPO2023関連記事】

ロジザードは、皆さまの事業の成長をWMSで応援します。どうぞお気軽にロジザードにご相談ください。
https://www.logizard-zero.com/contact/


登壇者プロフィール
金澤茂則(かなざわしげのり)
ロジザード株式会社 代表取締役社長

株式会社福田屋洋服店(現 株式会社アダストリア)にて、店長やバックオフィス業務に従事し、在庫消化のため「アウトレット」を企画。物流倉庫と連携を強める過程で「在庫」の重要性に気づき、アパレル企業向けのコンサルタントとして独立する。在庫情報の重要性を唱える中、在庫管理システムを開発する元取締役会長遠藤と出会い、2001年にロジザード株式会社を設立。物流×在庫×ITを掲げ、クラウドWMSのリーディングカンパニーとして業界をけん引する。オムニチャネルや物流ロボット、RFIDなど物流の最新技術に精通し、企業の売上増大につながる物流改革を実現する手腕は、高い評価を得ている。